「AIっぽい文章の特徴」は本当か|実測で検証する
「AIっぽい文章の特徴」といえば、「いかがでしたか」で締めくくる、体言止めが多い、「〜を浮き彫りにする」を多用する——こうした通説をチェックリスト代わりに使って、自分の文章を疑ったことがある人は多いはずです。
結論から言うと、日本語圏でよく語られている「AIらしさ」の多くは、実際に測定すると当たっていません。ある調査では、人が挙げた148件の「AIらしさ」のうち、実測と一致したのはわずか1件でした。「いかがでしたか」に至っては、AIが登場する前から存在していた表現だったことも分かっています。
株式会社Fyveは中小企業のAI業務活用を支援しており、記事の執筆にもAIを日常的に使っています。この記事では、日本語で確認できる実測研究を根拠に、よく言われる通説がどこまで正しいのかを一つずつ検証します。
「AIっぽさ」を実測で検証した、数少ない日本語の研究
「AIっぽい文章の特徴」は、SNSやブログで感覚的に語られることがほとんどで、実際に測定して裏を取った日本語の文献はほとんど見当たりません。そんな中、広島大学文学部の令和7年度卒業論文(大西夢「AI生成文からみた『自然な日本語』についての研究」)が、この問いを正面から扱っています。
この調査は、ネット上で語られている「AIらしさ」の指摘を集め、実際のAI生成文と人間の執筆文を比較して、どの指摘が実測でも裏付けられるかを検証したものです。学士論文であり査読を経ていない小規模な調査ですが、私が調べた範囲では、「人が感じるAIらしさ」と「実際のAI生成文の特徴」を正面から突き合わせた日本語の文献は他に見当たりませんでした。この調査結果を軸に、他の実測研究も合わせて確認していきます。
148件の指摘のうち、実測と一致したのはたった1件
調査の進め方はシンプルです。まずネット上で語られている「AIらしさ」の指摘を集めます。次に、実際のAI生成文と人間の執筆文をそれぞれ用意し、集めた指摘の一つひとつが本当に両者を区別できるかどうかを、テキストを直接数えて確かめます。「感覚として言われていること」と「実際に数えて出てきたこと」を、同じ土俵で突き合わせる作業です。
この調査は、集めた「AIらしさ」の指摘を(ア)文法的特徴(イ)語彙(ウ)内容(エ)文章表現の4カテゴリに分類し、それぞれ実測データと照合しています。結果は次のとおりです。
「本調査の結果、実際の特徴として表れたのは、(ア)文法的特徴への言及に属する『読点使用の多さ』のみであった」——論文はこう結論づけています。残る(イ)語彙・(ウ)内容・(エ)文章表現の3カテゴリについては、「実際に見られる特徴と一致した指摘がひとつも確認されなかった」とも書かれています。148件集めた指摘のうち、実測で裏付けられたのは「読点が多い」というただ1点だけだったということです。
論文はこの結果の背景として、確証バイアスを挙げています。一度「AIはこう書く」という思い込みを持つと、その思い込みに当てはまる文章だけが目に留まり、当てはまらない文章は記憶に残りません。「いかがでしたかブログはAIっぽい」という指摘を先に聞いてしまうと、次からその型を見るたびに「やっぱりそうだ」と感じてしまう——これが通説が広がる仕組みだと考えられます。論文はこの構図を「人間が認識しやすい規範としての『AIらしさ』と、認識しにくい本来の『AIらしさ』がある」と表現しています。感覚で語られる通説と、実際に測定される特徴は、そもそも別の階層にあるということです。
「いかがでしたか」はAI由来ですらない
この148件の中でも象徴的なのが「いかがでしたかで締めるのはAIっぽい」という指摘です。しかし時系列を確認すると、この型はAIよりも先に存在していました。
時系列が逆転している
ダイヤモンド・オンラインは2022年7月13日、「『いかがでしたかブログ』がダメな本当の理由」という記事を公開しています。この記事は外注ライターによる量産記事の特徴として「いかがでしたか」の定型文を論じたもので、AIやChatGPTへの言及は一切ありません。ChatGPTが一般公開されたのは2022年11月です。つまりこの型が「量産記事の悪い癖」として論じられたのは、ChatGPTが世に出るより4カ月も前だったことになります。さらに遡ると、2020年6月にも同種の指摘をした記事が存在します。
つまり「いかがでしたか」は、AIが生み出した口癖ではなく、もともとSEO対策の量産記事で使われていた定型表現です。それが後からAIの登場によって「AIっぽい」という新しいレッテルに転嫁された、というのが時系列から読み取れる実像です。この型を見て「AIが書いた」と決めつけるのは、原因と結果を取り違えている可能性があります。
もう一つ考えられるのは、生成AIが大量のWebテキストを学習データとして取り込んでいるため、こうした量産記事の定型をAI自身が引き継いでいる可能性です。だとすればこれは「AIが生み出した表現」ではなく「AIも受け継いだ表現」という順序の話であり、両者を混同すべきではありません。いずれにせよ、この型を単独で「AI判定の証拠」として扱うのは、成立している根拠が薄いということです。
「AIは体言止めを多用する」も実測では逆だった
体言止め(文末を名詞で止める書き方)についても、「AIは体言止めを多用する」という通説が語られることがあります。しかし広島大学の実測結果は逆でした。体言止めは、AI生成文よりも人間が書いた文章のほうが著しく多く使われていたのです。
「AIは名詞で文を締めくくって印象を強める」という説明は一見もっともらしく聞こえますが、実際に数えてみると、その印象と実測結果は一致しませんでした。これも148件のうち実測と一致しなかった指摘の一つです。体言止めのような表現テクニックは、むしろ人間の書き手が意図的にリズムを作るために使う技法であり、AIが好んで選ぶ書き方ではなかった、と読み取ることができます。

「〜を浮き彫りにする」は180サンプル中0回だった
もう一つ、実測による自己反証の例を紹介します。井本賢氏が2026年8月に公開した調査(6つのAIモデル×10テーマ×3回=180サンプルに、人間執筆の対照記事を加えて比較した16指標の分析)では、著者自身が「AIっぽい語の1位候補」として予想していた「〜を浮き彫りにする」が、180サンプル中0回という結果になっています。この調査は査読を経た学術論文ではありませんが、実際にサンプルを集めて数えている点で価値があります。
同じ調査で実測された頻出表現は、「適切な」(1記事あたり平均0.59回)、「重要です」(0.34回)、「本記事では」(0.27回)、「を活用する」(0.23回)、「不可欠」(0.16回)でした。体感で「これがAIっぽい」と予想した語と、実際に数えた語がずれる——広島大の卒業論文と同じ構図が、独立した別の調査でも再現されているわけです。
この調査では、単語そのものより「見出しの数」「箇条書きの記号数」といった構造面の指標のほうが、商用モデルの文章と人間の文章を分けやすいことも報告されています(効果量の目安となるCohen's dで、リスト記号数が+1.00、見出し数が+0.90、AI頻出語彙全体でも+0.74)。個別の単語1語よりも、文章全体の「組み立て方」のほうが差として表れやすい、という点は次の章とも重なります。
ほかにも語られる俗説の多くは、出典が確認できない
「AIっぽい文章の特徴」として語られる表現は、ここまで紹介したもの以外にも数多くあります。しかし調べてみると、その大半は実測の裏付けを確認できませんでした。
- 「深掘り」「〜に迫る」がAI特有だという指摘:出典が見つかりませんでした。「〜に迫る」はメディアの見出し語として長年使われている表現です
- 「まさに」「非常に」「さらに」の多用:ブログでは頻出の主張ですが、井本氏(2026年)の実測でも上位には出てきていません
- 「大切です」の多用:実測ではゼロ件でした。近い表現の「重要です」だけは0.34回/記事という実測値があります
- 「まとめ」で内容を全部繰り返す:多くのブログで指摘されますが、実測での裏付けは確認できませんでした
- 「〜ではないでしょうか」「〜と言えるでしょう」:頻出するという主張はよく見かけますが、実測データが見当たりません
- emダッシュ(—)の多用:英語圏では実測された強い指標ですが、これは英語での結果です。日本語の文章でemダッシュの使用頻度を実測した研究は確認できませんでした
いずれも「よく言われている」という点では共通していますが、「実際に数えて確認した」という段階まで進んでいる指摘はほとんどありません。この記事で扱った148件の実測結果と合わせて見ると、日本語圏の「AIっぽさ」談義の大部分が、感覚の伝承でできていることが分かります。
日本語圏での呼び方も、実は一定していない
ここまで「AIっぽい」という言葉を使ってきましたが、同じ現象を指す呼び方はほかにもいくつか存在します。「AI感」はデザインや資料の文脈で使われることが多く、「AI臭」「AIくささ」はやや強い蔑称として使われる傾向があります。学術的な文脈では「AIらしさ」という中立的な言葉が使われ、広島大学の卒業論文もこの語を採用しています。
一方で注意したいのが「AIスロップ」という言葉です。こちらは「労力や意味の欠如と圧倒的な数量を特徴とする、生成AIで作られた低品質なコンテンツ」を指す言葉で、文体の質感を指す「AI感」とは意味がずれています。AIスロップは「大量に無配慮に作られたこと」を問題にする言葉であり、この記事で扱っている「文体としてのAIっぽさ」とは別の軸にある概念です。混同しないよう注意が必要です。呼び方が一つに定まっていないこと自体、「AIっぽさ」という現象がまだ言語化の途中にあることの表れだと私は捉えています。
では、実測で確認されている「AIらしさ」とは何か
ここまで見てきたのは「語彙リストの多くが実測で裏付けられない」という話でした。では実際に何が測定されているのでしょうか。財津亘・金明哲の研究(PLOS ONE, 2023年8月9日公開)は、ランダムフォレストによる判別モデルで、AI生成文と人間執筆文を分ける特徴を測定しています。
- 機能語の割合(221変数):単独で最高の判別精度98.1%
- 品詞バイグラム(955変数):97.2%
- 読点の位置(48変数):97.2%
- 助詞バイグラム(533変数):88.9%
- 全特徴を統合:100%
重要な変数として「名詞+格助詞」の品詞バイグラムが挙げられています。ただし論文は「AIは『は』の後に読点を打ちやすい」といった具体的な方向性までは明記していません。「読点の打ち方に判別できるだけの差がある」というところまでしか、この論文からは言えません。同じ研究チームが2024年に発表した別の調査(偽のパブリックコメント文を対象にしたもの)でも、統合した特徴によるランダムフォレストの判別精度は91.6%、AI生成側だけを見たときの適合率は99.5%という結果が出ており、機能語や品詞パターンで高精度に判別できるという結論は、複数の調査で独立に再現されています。
広島大学の卒業論文は、これに加えて構造面の実測結果も報告しています。読点の使用・一文の長さ・段落あたりの文数のばらつきがAI生成文では小さいこと、接続詞の種類が偏っていること(意見文では「一方」「しかし」「また」のみ、思い出文では「そして」「また」のみで、人間は「あるいは」「ただ」なども使う)、文末表現が偏っていること(「である」「だ」「ている」「ある」「ない」でAI生成文の75%以上を占める一方、「たい」「思う」「か」は出現回数0)が実測されています。「ている」は人間執筆文では155回中9回しか出てこないのに対し、AI生成文では最多クラスの文末表現になっていたそうです。断定を避ける婉曲表現として人間は「ている」を控えめに使う一方、AIは同じ形をむしろ多用していた、という対比です。
もう一つ興味深いのは、「かたい文体よりやわらかい文体のほうがAIらしさが出やすい」という指摘です。ニュース記事やビジネスメールのような硬い定型文体では、AIは人間の書き方に近づけて書けます。一方、ブログや手紙のような柔らかい文体になるほど、先に挙げた均一さ(ばらつきの小ささ)が目立ちやすくなる、という傾向が報告されています。
なぜ構造だけがここまで均一になるのか
論文自身は、この均一さの理由を「生成AIが文章を生成する際には、次に来る確率が高い語が選ばれているだけにすぎず、文章全体としての機能は考慮されていない」「LLMはジャンルの違う文章を統合的に学習するため、結果として収集データの平均値に収束する傾向があるのではないか」と説明しています。なぜこの「平均への収束」がここまで広く起きるのかという仕組みをさらに深く知りたい方は、別記事「AIっぽい文章の正体は英語の直訳」で扱っています。この記事では「通説がどこまで実測で裏付けられるか」の検証に絞ります。
英語には delve があるが、日本語にはまだ「実測された1語」がない
英語圏では、2010〜2024年のPubMed生物医学アブストラクト1,500万件以上を分析した研究があります(Kobak et al., Science Advances, 2025年7月2日公開)。この研究では、delve(動詞)の頻度が2022年以前と比べて28.0倍に急増したこと、2024年のアブストラクトの少なくとも13.5%がLLMによる処理を経ていると推定されることが、大規模な語彙頻度分析から示されています。underscores(13.8倍)やshowcasing(10.7倍)といった語も同様に急増が確認されており、「どの語が」「何倍」使われるようになったかを、1,500万件という規模のコーパスで裏付けられる状態にあります。
日本語には、これに匹敵する規模の語彙頻度分析はまだ存在しません。日本語で先行しているのは「AI生成文かどうかを判別する研究」(財津亘らによる一連のスタイロメトリー研究)であり、「AIがどの語を何倍多く使うようになったかを大規模コーパスで測る研究」ではないのです。判別の精度は98.1%まで測れているのに、語彙頻度についてはまだ足場がない——この非対称な状況を正直に書くこと自体に、この記事の意味があると私は考えています。日本語版の「delve」を名指しできる記事は、今のところ書けません。逆に言えば、「この語さえ避ければAIっぽさが消える」という単純な解決策自体が、日本語の文章には存在しないということでもあります。
通説とどう付き合えばいいか
ここまでの検証を踏まえると、実務的な判断は2つに分かれます。
もし「AIっぽい語のリストを覚えて避ける」ことに労力を割いているなら、その効果は限定的です。「いかがでしたか」「体言止め」「〜を浮き彫りにする」のように、通説として広まっている語や型の多くは、実測での裏付けがないか、むしろ逆の結果が出ています。語のリストを暗記するより、実測で確認されている構造的な特徴——読点・文末表現・接続詞の偏り、そして文全体のばらつきの小ささ——に注目するほうが、根拠のある判断につながります。
ただしここで一つ注意が必要です。実測で確認された特徴であっても、それを機械的に消すこと自体を目的にするのは危険です。表面のサインを削っても、文章の中身が具体性を欠いたままなら、書かれている内容の薄さは変わりません。実測された構造の偏りは「中身が薄いかもしれない」という注意信号として使うものであって、それ自体を治療の対象にするものではないと私は考えています。判定ツールについても同様です。OpenAIは自社のAI文章判定ツールを2023年7月に「正解率が低い」という理由で撤回しており、単一の判定結果を過信しない姿勢は、日本語の文章を扱う場合でも変わりません。文部科学省も2023年7月の事務連絡で「AIが生成した文章かを判定するツールを学修成果の評価等に活用する場合でも、その結果を過信しないことが重要である」と明記しています。公的な文書がこの点にわざわざ触れているのは、判定結果を鵜呑みにする危うさが、それだけ現実的な問題だったからだと考えられます。
語のリストを追いかけること自体にも、賞味期限の問題があります。英語圏の研究では、一時期象徴的だった「delve」の使用頻度が2025年に入って急減したことが報告されています。モデルが更新されるたびに、目立つ語も入れ替わるということです。ある時点の語リストを覚えても、次のモデル世代では別の語に置き換わる可能性が高く、追いかけ続けるコストに見合う効果は期待しにくいというのが実情です。
実務でできることは意外とシンプルです。
- 固有名詞・具体的な数字・実際に起きたエピソードを文章に入れる
- 通説の語彙チェックリストに時間を使うより、内容そのものが具体的な事実で埋まっているかを確認する
- 読点・文末表現・接続詞のバリエーションが単調になっていないか、声に出して読んで確認する
- 単発の判定ツールの結果を、そのまま結論として扱わない
語のリストを避けることに時間を使うより、この4点のほうがずっと効果的だと私は考えています。

まとめ——「AIっぽい文章の特徴」を検証して分かったこと
- 広島大学の卒業論文では、人が挙げた148件の「AIらしさ」の指摘のうち、実測と一致したのは「読点使用の多さ」1件だけだった
- 「いかがでしたか」はAI由来ではない。ChatGPT公開(2022年11月)より前の2022年7月、外注ライターの量産記事の特徴として論じられていた
- 「AIは体言止めを多用する」は実測では逆——人間が書いた文章のほうが体言止めが著しく多かった
- 「〜を浮き彫りにする」は180サンプル中0回(井本賢, 2026年)。著者本人が有力候補と予想していた語が実測で裏切られた事例
- 実測で確認されている差は、機能語の割合(判別精度98.1%)・読点の位置(97.2%)・文末表現や接続詞の偏りなど、語彙リストではなく構造的な均一さ
- 硬い文体(ニュース・ビジネスメール)では見抜きにくく、柔らかい文体(ブログ・手紙)ほど均一さが目立ちやすい
- 英語圏にはdelveのような大規模コーパスで実測された語があるが、日本語には同種の語彙頻度研究がまだ存在しない
- 実測された特徴も、消すこと自体を目的にせず、「中身の具体性が足りているか」を確認する注意信号として使うのが妥当
「AIっぽさ」がなぜ生まれるのか、その仕組みを詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
では、そもそも人間はAIが書いた文章をどれくらい見抜けるのでしょうか。実験結果を整理した記事はこちらです。
AIを使う会社と、使わない会社。
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