2026/07/23AI業務効率化
AI活用非エンジニア向け

AIが同じミスを繰り返す理由|会話でなくルールで直す

AIが同じミスを繰り返す理由|会話でなくルールで直す

「さっき直したはずなのに、また同じミスをする」——AIに仕事を任せていると、誰もが一度はこの徒労感を味わいます。

結論から言うと、同じミスが繰り返されるのは、あなたが「会話の中でしか直していない」からです。直し方を会話ではなくルールに移すと、同じ指摘は二度と要らなくなります。

株式会社Fyveは、常時起動のマシンで複数のAIジョブを無人で回しています。この記事では、AIに同じミスを繰り返させないための「追記式」の直し方を、私の実際の運用に沿ってお伝えします。

なぜAIは同じミスを繰り返すのか

まず押さえたいのは、AIには性質の違う2種類の記憶があるという点です。この違いを分けて考えないと、「直したのに直らない」の原因が見えません。

会話の記憶はセッションが変わると消える

1つ目は会話の記憶です。いま話している最中に「そこは全角スペースを使わないで」と指摘すれば、その場では直ります。ただしこの記憶は、そのセッション(ひとまとまりの会話)が終わると消えます。

翌日に新しく話しかけたAIは、昨日あなたが何を注意したかを覚えていません。だから同じミスをまた出す。人間の新人なら「昨日言われたこと」を覚えていますが、AIの会話記憶はそこで途切れるのが前提です。

同じセッションの中でも同様です。会話が長くなると前半のやりとりは扱いから外れやすく、序盤に注意したことが終盤で抜ける、ということが起こります。会話の記憶は「近くのことほど強く、遠くなるほど薄れる」性質だと理解しておくと、なぜ直したはずのことが再発するのかが腑に落ちます。

手順書のルールはセッションをまたいで残る

2つ目は手順書のルールです。Claude Code なら CLAUDE.md やそこから切り出したルールファイルがこれにあたります。プロジェクトを開くたびに毎回読み込まれるため、セッションが変わっても効き続けます。

同じミスを止めたいなら、直す場所は「いま話している会話」ではなく「毎回読まれるルール」でなければならない。ここが最初の分かれ道です。

会話の記憶はセッションで消え、手順書のルールは残る2種類の記憶の比較

会話で直すか、ルールに書くかの線引き

ここで一つ注意点があります。「ミスは全部ルールにすればいい」わけではありません。何でもルールに書き足すと手順書が肥大化し、本当に守ってほしいルールが埋もれてしまいます。私は次の基準で切り分けています。

  • ルールに追記する:同じ条件なら次も必ず再発するミス(命名のブレ、日付表記、書式の崩れ、確認手順の飛ばしなど、機械的に一般化できるもの)
  • 会話で直して終わり:その場限りの一回性の指示(今回だけこの見出しを短く、この段落は消して、といった個別の判断)

判断のコツは「この指摘、明日また言う可能性があるか?」と自問することです。明日も言いそうなら、それはルール化する価値のある再発型のミスです。逆に今日限りの話なら、会話で直せば十分です。

「その場で直す」と「ルールに追記する」の違い

多くの人がやりがちなのは、ミスを見つけるたびに会話で指摘して満足してしまうことです。これは実質、毎日同じ注意を口頭で繰り返しているのと同じで、いつまでも手離れしません。

会話で指摘するだけだと再発する

会話での指摘は、その場の出力は直せても、次の機会には引き継がれません。指摘の回数だけこちらの手間が積み上がり、AIに任せているのに自分がずっと張り付く状態になります。「任せたのに疲れる」原因の多くはこれです。

追記式にすると同じミスは出なくなる

私がやっているのは追記式——ミスを1回見つけたら、その場で直すと同時に「次から同じことをしないためのルール」を一文にしてルールファイルへ書き足す方法です。

一度ルールに刻めば、翌日以降のセッションでもそのルールが毎回読み込まれます。つまり「二度目の指摘」が要らなくなる。会話での訂正はその場しのぎ、ルールへの追記は再発防止だと考えると、両者の役割がはっきりします。

具体例で見てみましょう。私の運用では、ファイルの管理情報(作業の状態や次にやること)の更新をAIが忘れることが何度かありました。最初はそのたびに「更新も一緒にやって」と会話で頼んでいました。当然、翌日にはまた忘れます。

そこで「このファイルを編集したら、必ず先頭の管理情報も同じ作業のなかで見直す」という一文をルールに追記しました。それ以降、同じ抜けはほぼ出なくなっています。会話で20回頼むより、ルールに1回書くほうが確実で、しかも自分の手が空きます。

ミスをルールに変える具体的な手順

ここからは、実際にどう追記しているかを手順で示します。難しいことはなく、3ステップで回せます。

1. ミスを「一文の禁止・指示」に翻訳する

まず、起きたミスを責めるのではなく、次から守ってほしい行動を一文に言い換えます。ポイントは「なぜダメか」と「どうすべきか」をセットで書くことです。理由が抜けたルールは、AIが状況に応じて応用できません。

  • ❌ 悪い例:「ミスするな」(抽象的で行動に落ちない)
  • ⭕ 良い例:「日付は相対表現(昨日・今週)で書かない。後で読むと意味がずれるため、必ず YYYY-MM-DD の絶対表記にする」

この「ダメ出しの永続化」こそが追記式の核です。1回のミスを、二度と繰り返さない資産に変えていきます。翻訳するときは、AIに向けた命令文の形にすると効きが良くなります。「〜という失敗があった」という感想ではなく、「〜のときは必ず〜する」という行動指示にするわけです。

2. ルールの置き場所で効き方を変える

追記先は1か所ではありません。私は効かせ方で置き場所を使い分けています。

  • 常に守らせたい普遍ルール:プロジェクト直下の手順書に置き、毎回自動で読み込ませる
  • 特定の作業でだけ効けばいいルール:作業ごとの部品ファイルに切り出し、その作業のときだけ読ませる

全部を毎回読み込む手順書に詰め込むと、ファイルが膨らんで肝心のルールが埋もれます。「いつ効いてほしいか」で場所を選ぶと、少ない記述で確実に効きます。

3. 追記が増えたら定期的に整理する

追記式を続けると、当然ルールは増えます。手順書が長くなりすぎると、AIは全部を等しく守れなくなり、かえって精度が落ちます。目安として、1つの手順書が長くなってきたら、テーマごとに別ファイルへ切り出すサインです。

似たルールは1つに統合し、もう起きなくなったミスの禁止事項は削る。ルールは「書いて終わり」ではなく、育てて刈り込む対象だと捉えてください。ここはAIにナレッジを蓄積させる設計とも地続きです。

整理のタイミングは、追記のたびに完璧を目指す必要はありません。まずは雑にでも書き足しておき、週に一度など区切りで見直す運用が現実的です。大事なのは、ミスを見つけた瞬間に「とりあえずどこかに書く」習慣を切らさないこと。整えるのは後からでも間に合います。

ミスを見つける→一文の指示に翻訳→ルールへ追記する追記式の3ステップフロー

ルールファイルとナレッジベースをどう作り分けるかは、こちらの記事で体系的に整理しています。

AI業務標準化の仕組み|ルールファイルとナレッジベースの作り方
AI業務効率化AI業務標準化の仕組み|ルールファイルとナレッジベースの作り方

追記式は無人運用ほど効いてくる

この直し方は、AIに任せる比率が上がるほど効果が大きくなります。自分が横で見ていられるうちは、ミスをその場で口頭修正しても何とかなります。しかし、席を外している間や夜間にAIを走らせるようになると、「その場で言う」こと自体ができません。

無人で回すなら、守ってほしいことは全て事前にルールとして書いてあるしかない。裏を返せば、ミスが出るたびにルールへ追記しておけば、AIは自分が見ていない時間帯でも同じ基準で動き続けます。追記式は、AIを「その都度指示する相手」から「ルールに沿って自走する相手」へ変えていく作業でもあります。

だからこそ、ミスは面倒な出来事ではなく、ルールを1行強くするチャンスだと捉えるのが得です。失敗が起きるほどルールが緻密になり、任せられる範囲が広がっていきます。

追記式がうまく回らないときのチェックポイント

「ルールに書いたのにまだ直らない」というときは、たいてい次のどこかでつまずいています。

  • そのルールが読み込まれる場所に無い:会話メモや作業フォルダの隅に書いても、毎回は読まれません。自動で読み込まれる手順書に置けているか確認します
  • ルールが抽象的すぎる:「丁寧に」「気をつけて」は判断基準になりません。守れたか一目で分かる具体的な記述にします
  • 理由が書かれていない:なぜそうするかが無いと、少し違う状況で応用が効かず破られます
  • ルール同士が矛盾している:追記を重ねるうちに古いルールと衝突していないか、増えたら見直します
  • 一度に守らせる量が多すぎる:1つの手順書に何十個も詰め込むと、優先順位が付かず全体が緩みます。効く場所へ分けて置きます

セッションをまたいで知見を失わない仕組みづくりそのものについては、次の記事で詳しく扱っています。

Claude Codeを自己進化させる仕組み|知見蓄積の実践法
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まとめ:直す場所を会話からルールへ移す

AIが同じミスを繰り返すのは、AIが学習しないからではなく、直し方が会話という消える場所に留まっているからです。ミスを一文のルールに翻訳し、毎回読み込まれる手順書へ追記する——この「追記式」に切り替えるだけで、二度目の指摘は要らなくなります。

私たちが無人でAIジョブを回し続けられているのも、失敗のたびにルールを1行ずつ足してきた積み重ねの結果です。最初から完璧なルールを用意する必要はありません。むしろ、運用しながら出てきたミスこそが、そのままルールの原料になります。

今日AIが出したミスを1つ選び、「次からこうする」という一文にしてルールへ書き足す。それだけで、明日のあなたはその指摘をしなくて済みます。小さな追記の積み重ねが、任せられる相手を育てていきます。手順書そのものの書き方は、こちらも参考になります。

CLAUDE.mdの書き方実践ガイド|200行以下で最大効果を引き出す
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