Copilot vs Gemini|法人利用の違いを比較
「Microsoft 365 CopilotとGemini、どちらが業務で使えるのか」——グループウェアの見直しと同時にAI導入を検討している会社から、よく上がる問いです。
結論から言うと、この2つは単体で選ぶものではなく、Microsoft 365とGoogle Workspaceのどちらを土台にするかという判断とセットで決まります。先にAIだけを選ぶことはできません。
株式会社Fyveは中小企業のAI活用を支援しています。この記事では2026年8月5日時点の公式情報をもとに、料金・社内データの扱い・情報の取り扱い・管理のしやすさ・移行コストという複数の軸で両者を並べ、どういう会社ならどちらを選ぶべきかを整理します。
前提:料金の「構造」が根本的に違う
Google Workspaceをすでに契約している会社なら、Geminiの業務利用に追加費用はかかりません。ここが両者の最も大きな違いです。
Googleの管理者向けヘルプには「2025 年 1 月に、Google Workspace Business エディションと Enterprise エディションをご利用の組織における生産性向上とイノベーション推進を目的として、新しい AI 機能を追加しました」と記載されています。以前は別売りのアドオンでしたが、現在はプラン料金の中に入っています。
同じページには、かつて販売されていた「Gemini Business - Legacy」「Gemini Enterprise - Legacy」「AI Meetings and Messaging」といったアドオンがすでに購入できなくなっていることも書かれています。ネット上に残る「Geminiのアドオンは1人あたり月◯円」という記事は、この変更より前の情報です。
対してMicrosoft 365 Copilot Businessは、Microsoft 365の契約に対する有料アドオンです。Microsoft 365を契約していることに加えて、1ユーザーあたりの追加料金が発生します。公式の価格ページにも「Microsoft 365 Business プランが必要」と明記されています。
つまり「AIの利用料をいくら払うか」という問いの立て方が、そもそも両者で成立しません。Google側は土台の料金に込み、Microsoft側は土台+アドオンです。

料金を並べて比べる(2026年8月5日時点の公式価格)
Google Workspaceの料金
日本の公式価格ページに掲載されている年間プラン(月払い)の金額は次の通りです。いずれも1ユーザーあたりの月額です。
- Business Starter:¥800(1ユーザーあたり30GBのストレージプール)
- Business Standard:¥1,600(1ユーザーあたり2TB)
- Business Plus:¥2,500(1ユーザーあたり5TB)
- Enterprise:営業担当への問い合わせが必要(1ユーザーあたり5TB・追加可)
公式ページには「年間プラン(1年契約なら16%お得)」と記載されています。1年契約を前提としない柔軟プランを選ぶ場合の金額は異なるため、そちらは公式ページで確認してください。閲覧時点では新規向けの割引が併記されていることもあるため、稟議に載せる数字は割引後ではなく通常価格で計算してください。
また、Business Starter・Standard・Plusは最大300ユーザーまでという制限が明記されています。Enterpriseの各プランにはユーザー数の上限・下限はありません。300人を超える見込みがある会社は、この点を先に確認しておいてください。
Microsoft 365 Copilot Businessの料金
法人向けの現行名称はMicrosoft 365 Copilot Businessです。税別・1ユーザーあたりの月額で、掲載されている選択肢は次の3つです。
- Copilot Business(アドオン単体):年払い 月額換算 ¥2,698(プロモーション価格・通常価格 ¥3,148)/月払い ¥3,778
- Business Standard + Copilot Business:年払い ¥3,523 / 月払い ¥4,228
- Business Premium + Copilot Business:年払い ¥4,797 / 月払い ¥5,756
公式ページには「価格には消費税は含まれていません」と記載されています。Google Workspaceの掲載金額と並べるときは、どちらも税別として揃えて計算してください。
アドオン単体の¥2,698については、プロモーション価格である旨とあわせて「2026 年 7 月 1 日から 2026 年 9 月 30 日まで」利用可能で「初年度にのみ適用」と記載されています。つまり2年目以降は通常価格に戻る前提です。3年分の予算を積むなら、初年度だけ¥2,698、2年目以降は¥3,148で計算するのが実態に近い数字になります。月払いは年払いより約40%高い点にも注意してください。
なお、アドオンを足せる土台のプランはMicrosoft Learnの記載で決まっています。Microsoft 365 Copilot Businessの前提となるのはMicrosoft 365 Business Basic/Business Standard/Business Premium/Microsoft 365 Apps for businessです。自社の契約がこのいずれかに当たるかを、見積もりを取る前に確認してください。
比べるなら「AI込みの総額」で並べる
比較すべきは単価ではなく、グループウェアとAIを合わせた1人あたりの総額です。
Google Workspace Business Standardであれば、Geminiの機能を含めて1ユーザー月¥1,600です。Microsoft側でMicrosoft 365 Business StandardとCopilot Businessをまとめて契約すると、年払いで1ユーザー月¥3,523になります。
差額は1人あたり月¥1,923。10人なら年間で約23万円、30人なら約69万円の差になります。金額だけを見れば、Google側が明確に安いという結果です。
Microsoft 365 Copilot Businessの料金構成をさらに細かく確認したい場合は、こちらで整理しています。
「300ユーザーの壁」は両社に共通する
中小企業向けのプランに上限があるのは、Googleだけの事情ではありません。Microsoftの価格ページにも、Business Standard/Business Premiumとの統合プランについて「最大 300 ユーザー」の記載があります。
したがって、300名前後まで伸びる見込みのある会社は、どちらを選ぶにしても「上限に当たったときにどのプランへ移るか」を先に確認しておくべきです。上限に当たってから慌てて上位プランを検討すると、単価が変わるだけでなく、管理設定の見直しまで同時に発生します。
プランによって使えるAI機能の範囲が変わる
Google側:本格利用の出発点はStandard
Google WorkspaceでAIを本格的に使うなら、Business Starterでは足りません。公式ページの記載では、プランごとに搭載されるAI機能の範囲が異なります。
Business Starterに記載されているのは「Gmail の Gemini AI アシスタント」と、モデルへのアクセスが限定されたGeminiアプリの利用です。メールと単体のチャット利用が中心になります。
Business Standard以上では、Gmail・Googleドキュメント・Googleスプレッドシート・Googleスライド・Googleドライブ・Google Chat・Google MeetといったWorkspaceの各サービスにGeminiが広がると記載されています。加えて、AI搭載の動画作成・編集ツールである「Google Vids」も対象になります。
したがって、ドキュメント作成や会議の要約までAIに任せたいなら、実質的な出発点はBusiness Standard(¥1,600)です。¥800のStarterで見積もると、後から不足に気づくことになります。
Microsoft側:土台のプランで変わるのはAI以外の部分
Microsoft側は事情が逆で、Copilot Business自体は土台のプランを問わず同じアドオンです。変わるのは、その下にあるMicrosoft 365側の機能になります。
Business StandardとBusiness Premiumの差は、AIの能力ではなくID管理・デバイス管理・セキュリティ機能の範囲です。公式ページでもPremium側に「高度な ID およびアクセス管理」と記載されています。
そのため、Microsoft側の見積もりで迷ったときは「AIをどこまで使うか」ではなく「端末とアカウントの管理をどこまで会社側で握るか」で判断してください。この2つを混ぜて考えると、必要のない上位プランを選ぶことになります。

社内データの扱い方はどう違うか
Microsoft 365 Copilot Business
SharePoint・OneDrive・Teamsに蓄積された自社のファイルやチャット履歴を横断して参照できることが、この製品の核です。無料で使えるチャット機能との本質的な差も、突き詰めるとここに集約されます(詳しくはCopilot無料版と有料版の違い|3層で整理)。
Microsoft Learnの記載では、ライセンスを持つユーザーは「職場」と「Web」を切り替えて使えるとされています。「職場」を選ぶとMicrosoft Graph経由で自社データに基づく回答になり、「Web」を選ぶとインターネット上の情報も含めた回答になります。
なお、同じ「Copilot」でもエンジニア向けのGitHub Copilotはまったくの別製品です。混同したまま稟議を出すと差し戻しになるため、M365 CopilotとGitHub Copilotの違いもあわせて確認してください。
過去の議事録・提案書・見積書がSharePointに何年分も積み上がっている会社では、この参照能力がそのまま価値になります。
Gemini(Google Workspace)
Geminiも同様に、Gmail・Googleドキュメント・Googleドライブといった自社のWorkspaceデータを参照できます。公式ヘルプの記載では、プロンプト入力欄で「@」を入力してサービスやフォルダを指定し、対象を絞って質問する方法が案内されています。
Googleドライブでは「ソースを追加」から、あるいは「@」に続けてフォルダ名を入力して、特定のフォルダについて質問できると記載されています。
この軸では大きな差がつかない
「自社のデータを横断して読ませる」という一点では、両者に決定的な差はありません。どちらも自陣のストレージとメールを読みに行く設計になっています。
差が出るのは能力ではなく置き場所です。社内文書がSharePointにあるならCopilotが、GoogleドライブにあるならGeminiが、それぞれ何の準備もなく読める状態にあります。逆側の製品を選ぶと、まずデータを移すところから始まります。
情報の取り扱い:学習に使われるのか、権限は守られるのか
「入力した社内情報がAIの学習に使われるのではないか」という懸念は、両社とも公式に否定しています。この軸を理由にどちらかを外すことはできません。
Google側の記載
Google Workspaceのプライバシーに関する案内には「お客様のコンテンツが他のお客様のために使用されることはありません。お客様のコンテンツは、人間によってレビューされることも、許可なくお客様のドメイン外で生成 AI モデルのトレーニングに使用されることもありません」と記載されています。
権限についても「そのユーザーがアクセスできないドキュメントやメールのコンテンツは取得しません」と明記されています。加えて「Gemini は、他の Google Workspace サービスと同じエンタープライズ グレードのセキュリティを提供し、組織の既存の制御とデータ処理慣行を自動的に適用します」とされています。
Microsoft側の記載
Microsoft Learnのエンタープライズデータ保護の解説にも、同趣旨の記載があります。「データは基礎モデルのトレーニングには使用されません」とされ、Microsoft Graphを通じてアクセスするプロンプト・応答・データが基盤モデルの学習に使われないことが明示されています。
権限についても「Copilot は、ID モデルとアクセス許可を尊重し、秘密度ラベルを継承し、保持ポリシーを適用し、対話の監査をサポートし、管理設定に従います」と記載されています。ただし同じ箇所に「特定のコントロールとポリシーは、基になるサブスクリプション プランによって異なります」という但し書きがあるため、必要な統制が自社のプランで使えるかは個別に確認してください。
差がつくのは製品ではなく、社内の権限設定
両者とも「本人が見られない資料は読ませない」設計です。裏を返すと、権限設定が緩い会社ではどちらを入れても事故が起きます。
これまでは「フォルダの場所を知らないから見られない」で実質的に守られていた資料が、AIの検索を通じて出てくるようになります。人事情報や給与関連の資料が、共有設定の甘いフォルダに置かれたままになっていないか——契約の前に確認すべきなのはここです。
対応アプリと管理のしやすさ
どのアプリの中でAIが動くか
「AIがどのアプリの中に出てくるか」は、自社が日常的に使っているアプリと重なるかどうかで判断してください。
Microsoft側は、Microsoft Learnの記載でTeams・Word・Excel・PowerPoint・Outlookといった各アプリの中で使えるとされています。Google側は、公式ページの記載でGmail・ドキュメント・スプレッドシート・スライド・ドライブ・Chat・Meetが対象です。
ここで見るべきは対応数ではありません。自社の作業時間が最も長いアプリが対象に入っているかどうかの一点です。表計算の作業が1日の大半を占める会社ならExcelとスプレッドシートを、会議が多い会社ならTeamsとMeetを基準に判断してください。
管理画面と権限:情シス不在の会社が見るべき点
中小企業でより効いてくるのは、機能差ではなく「管理する対象が増えるかどうか」です。
Google側は、Geminiが既存のWorkspaceに含まれるため、管理画面も契約も増えません。Microsoft側も、Copilot Businessのライセンス割り当てはMicrosoft 365管理センターから行うため、新しい管理画面が増えるわけではありません。この点では、どちらも「今ある管理の枠に収まる」という共通点があります。
差が出るのは、社外のAIサービスを別途契約する場合です。管理画面が1つ増え、アカウントの棚卸しも二重になります。情報システムの専任担当がいない会社では、この負担が金額以上に効きます。
ストレージとサポート
AIとは直接関係しませんが、プラン選定では同時に決まる項目です。Google Workspaceは公式ページの記載で、Starterが1ユーザーあたり30GBのプール、Standardが2TB、Plusが5TBとされています。Starterの30GBは、過去メールと添付ファイルが数年分あるだけで圧迫される水準です。
サポートについても、上位プランほど手厚い区分が用意されています。具体的な区分と対応範囲は改定されるため、必要なら公式ページで最新を確認してください。
学習コスト:社員が慣れているのはどちらか
操作の習得より、既存の業務手順を変えないことのほうが定着に効きます。
AIの使い方そのものは、どちらも「文章で頼む」という点で変わりません。研修の負荷に大きな差はないと考えてよい部分です。
差が出るのは、AIの周辺です。グループウェアを乗り換えると、メールの操作・ファイルの置き場所・会議の入り方まで同時に変わります。AIの学習コストはほぼ同じでも、乗り換えに伴う学習コストは桁が違います。
特に、パソコン操作に不慣れな社員が多い職場では、この差が決定的になります。介護や建設の現場でAI活用を支援してきた経験から言えば、「新しいことを1つ覚える」と「使い慣れた道具ごと入れ替える」の間には、現場の受け入れやすさに大きな開きがあります。

【条件分岐】Google Workspace + Gemini を選ぶべき会社
以下に複数当てはまるなら、こちらが素直な選択です。
- すでにGoogle Workspaceを契約している——追加費用なしでAI機能が使える。契約もアカウント管理も増えない
- 社内文書がGoogleドライブに集まっている——参照させたい情報が最初から置き場に揃っている
- Gmailが業務の中心——メールの下書きと要約が日常業務に直結する
- 1人あたりのコストを最優先で抑えたい——AI込みで¥1,600という水準はMicrosoft側にはない
- 情シス担当がいない——契約するプロダクトが1つで済むぶん、運用の負担が軽い
- 創業から日が浅く、Office形式の資産が薄い——過去のExcel帳票に縛られていない
4つ目は中小企業では特に重い条件です。30人規模なら、AI込みの総額で年間約69万円の差が出ます。この差額で外部の支援を1年分まかなえるという見方もできます。
【条件分岐】Microsoft 365 + Copilot Business を選ぶべき会社
金額で不利でも、こちらを選ぶ理由が明確に存在します。
- ExcelとWordが業務の中核になっている——複雑な関数を含む帳票やマクロ資産がある会社は、他に移せない
- 社内文書がSharePointやOneDriveに蓄積されている——移行せずにそのまま読ませられる
- 社内コミュニケーションがTeams中心——会議の要約や履歴の検索がそのまま業務になる
- 取引先や業界の標準がOffice形式——建設業や製造業では、指定様式のExcelでのやりとりが今も一般的
- すでにMicrosoft 365 Business Standard以上を契約済み——アドオンを足すだけで済み、移行コストがゼロ
- 端末管理やアクセス制御を会社側で握る必要がある——Business Premium帯の管理機能が要件に入っている
特に4つ目は、私が建設業のAI業務効率化を支援してきた中で何度も直面した制約です。取引先から届く様式がExcelで固定されている場合、社内だけの都合でグループウェアを変えることはできません。この条件がある会社は、料金差を理由にGoogle側へ動くべきではありません。
会社の規模で判断はどう変わるか
社員10名以下
この規模では、金額差より「管理する契約が増えないこと」の価値が上回ります。10人で月¥1,923の差は年間約23万円ですが、その代わりに乗り換え作業と操作の混乱を全社で負うことになります。
したがって、今使っている側の延長でAIを入れるのが正解です。専任の管理担当がいないぶん、契約の一本化が実務上の効率に直結します。
社員30〜100名
差額が年間69万〜230万円の規模になり、金額が議題として成立し始めます。ただし、この規模は移行作業の負担が最も重くなる帯でもあります。全員分のアカウント移行と操作研修を、通常業務を止めずに進める必要があるためです。
現実的な進め方は、グループウェアは動かさず、部門単位でAIの利用を先に始めることです。効果が読めた部門から広げれば、金額の議論も実績ベースで進みます。
300名が見えている会社
前述のとおり、両社ともビジネス向けプランは最大300ユーザーです。この規模では、AIの比較より先に上位プランへの移行計画を立てるべき段階に入っています。AI単体の月額差は、プラン移行に伴う総額の変動に飲み込まれます。
移行を前提に比べてはいけない
ここが最大の落とし穴です。「AIが安いからGoogle Workspaceに乗り換える」という判断は、多くの場合コストを見誤ります。
グループウェアの移行には、次のような費用と負担が発生します。
- 過去メール・ファイルの移行作業
- 全社員のアカウント再設定と操作研修
- 移行期間中の二重契約
- 既存のExcelマクロ・帳票テンプレートの作り直し
- 社外との共有リンクの張り替え(取引先に配布済みのURLが切れる)
- 複合機・勤怠システム・会計ソフトなど、メールやアカウントで連携している周辺システムの再設定
- 移行直後に必ず起きる「前のやり方に戻りたい」という現場の抵抗
後半の2つは見積もりから抜けやすい項目です。グループウェアは単体で動いているわけではなく、周辺のシステムと繋がっています。そこまで洗い出さないと、移行の見積もりは必ず低く出ます。
月¥1,900の差を取りに行って、初年度に数十万円の移行コストと数か月の混乱を負う——これでは本末転倒です。
したがって現実的な判断はこうなります。すでにどちらかを使っているなら、その延長線上でAIを入れる。ゼロから両方を検討できるのは、新設法人か、グループウェアの刷新をもともと予定していた会社だけです。
併用という現実解
グループウェアは1つに揃える必要がありますが、AIツールは1つに絞らなくても構いません。ここを分けて考えると、選択肢が広がります。
たとえば、Microsoft 365を土台にしている会社が、Copilot Businessは全社に入れず、社内データ参照が要る部署だけに絞る。そのうえで、文章作成や長文の読み込みが多い部署には別系統のAIツールを渡す——という形です。
この考え方が成り立つのは、AIツールの月額が業務システムに比べて小さく、部署単位で入れ替えても影響が閉じるからです。グループウェアのように全社が同時に乗り換える必要がありません。
ただし、併用には条件があります。どちらをどの作業に使うかの線引きを、1行で言えるまで単純にしてください。「社内の過去資料を見ないと答えが出ない仕事はCopilot、それ以外は別のツール」といった粒度です。線引きが複雑だと、現場は両方使わなくなります。

どちらを選んでも、配って終わりでは使われない
ここからは、AI導入支援の側から見た実務的な話です。製品選びで勝負が決まると思われがちですが、実際に差がつくのはその後の配り方です。
Google Workspace側は「プランに含まれている」ぶん、導入のハードルが低い一方で、使われないまま放置されやすいという別の問題を抱えます。追加費用が発生していないので、誰も使っていないことに気づく機会がありません。
Microsoft側は1人あたり月¥2,698〜の追加費用が明示的に発生するため、社内の目が入りやすい構造です。これは負担であると同時に、「使わせなければならない」という圧力が働くという意味では利点でもあります。
どちらを選ぶにしても、次の順序で進めてください。
- 効きそうな業務を先に3つだけ決める——議事録の要約、定型メールの下書き、資料の構成案など、頻度が高く失敗しても損害が小さいもの
- その業務の担当者数名から始める——全社一斉配布は、金額の大きさだけが議題になって止まる
- うまくいった頼み方を社内で共有する——マニュアルより、同僚の具体例のほうが速く広がる
- いつ判断するかを先に決める——「3か月後に、この業務の所要時間で判断する」と決めないと、試用が1年続く
- 誰が定着させるのかを決める——ここが空欄のままの導入は、製品の良し悪しに関係なく失敗する
AIを業務に組み込む考え方そのものについては、AIエージェントとは?ChatGPT・Copilotとの違いと中小企業活用でも整理しています。
よくある質問
Q. Google Workspaceを使いながら、Microsoft 365 Copilotだけ契約できますか
できません。Microsoft 365 Copilot Businessは、公式ページの記載どおりMicrosoft 365 Businessプランを前提としたアドオンです。Copilotだけを単体で買うことはできません。
Q. 逆に、Microsoft 365を使いながらGeminiを使うことはできますか
Google Workspaceに含まれるGeminiの機能は、Workspaceの契約が前提です。ただし、Google側は個人・法人向けにAIの単体プランも提供しています。組み合わせと料金は変更されるため、必要なら公式で最新を確認してください。
Q. 両方を試してから決めることはできますか
AIの機能だけを試すことは可能ですが、比較の結論はほとんどの場合「今使っている側」に落ちます。試用に時間をかけるより、自社の文書がどこに置かれているかを確認するほうが速く答えが出ます。
Q. 無料のAIチャットで代替できませんか
公開情報だけで済む作業——文章の下書き、要約、調べ物の整理——であれば代替できます。できないのは「社内に溜まった資料を読んだ上で答えさせる」用途です。この用途が業務の中にあるかどうかで判断してください。
Q. 社員全員に配る必要はありますか
ありません。「社内文書を読ませたい仕事がある」と答える人だけで足ります。全社員が該当することはまずないため、まず人数を数えてから見積もりを取ってください。ライセンスは後から追加できます。
Q. 入力した社内情報が学習に使われませんか
両社とも公式に否定しています。Googleは「人間によってレビューされることも、許可なくお客様のドメイン外で生成 AI モデルのトレーニングに使用されることもありません」、Microsoftは「データは基礎モデルのトレーニングには使用されません」と記載しています。ただし個人向けの無料サービスは条件が異なるため、業務利用は法人契約の枠内で行ってください。
Q. 300人を超えるとどうなりますか
両社ともビジネス向けプランは最大300ユーザーです。超える見込みがあるなら、AIの比較より先に上位プラン(Enterprise帯)の条件を確認してください。そちらは個別見積もりになるため、比較の前提そのものが変わります。
まとめ
Microsoft 365 CopilotとGemini(Google Workspace)を法人利用の観点で比べたときの要点です。
- 料金の構造が違う。GeminiはWorkspaceのBusiness/Enterpriseエディションに含まれ、Copilot Businessは有料アドオン
- AI込みの総額はWorkspace Business Standardが月¥1,600、Microsoft 365 Business Standard + Copilot Businessが月¥3,523(年払い・いずれも税別)
- アドオン単体の¥2,698はプロモーション価格で初年度のみ。2年目以降は通常価格¥3,148で試算する
- Google Workspaceで本格的に使うならBusiness Standard以上。Starterはメール中心の限定的な機能
- 両社ともビジネス向けプランは最大300ユーザー。それ以上はEnterprise帯の検討が必要
- 社内データを読ませる能力そのものに決定的な差はない。差が出るのは文書の置き場所
- 学習利用・権限の尊重は両社とも公式に明記されている。差がつくのは自社の権限設定の状態
- 料金差を理由に移行してはいけない。移行コストと周辺システムの再設定が差額を大きく上回る
- グループウェアは1つに揃える必要があるが、AIツールは部署単位で分けてよい
ChatGPTとの比較で迷っている場合は、こちらも参照してください。
なお、料金・仕様は改定されます。本記事の数値は2026年8月5日時点で各社の公式ページに掲載されていたものです。契約前には必ず最新の公式情報で確認してください。
御社の業務に合わせたCopilot導入・定着支援
「ライセンスを配ったのに使われない」を終わらせる。
業務の棚卸しから、効く業務の切り分け、社内への定着まで一貫して支援します。