GrokはCopilotで使えるのか|入口が2つある
「GrokがWordやExcelで使えるようになったらしい」「うちのCopilotでも使えるのか」——AIのモデル選択が増えるたび、情報システム担当の方からこの形の質問が届きます。
結論から言うと、「GrokがWord・Excel・PowerPointで使える」という話は、2026年9月時点で入口が2つあり、管理のされ方がまったく違います。Microsoftが公式にCopilotへ組み込んだ経路と、SpaceXAI(xAI)自身がOfficeアドインとして配っている経路です。前者は既定でオフの管理者設定とプレビュー参加が条件、後者はそもそもMicrosoftの委託先管理の外にあります。
株式会社Fyveは中小企業のAI導入を月額で伴走する立場から、この種の「同じ見出しに見えて条件が違う」発表を毎回一次情報まで降りて確かめています。この記事では公式の記述を逐語で確認しながら、管理者として何を判断すればいいのかを整理します。
結論:2つの「GrokがOfficeで使える」を先に切り分ける
混乱の原因は、見出しがほぼ同じなのに中身が別物だという点にあります。先に表で分けておきます。
| 経路① Copilot内のモデル選択 | 経路② SpaceXAI(xAI)のOfficeアドイン |
|---|---|---|
発表 | 2026年9月12日(Microsoft Copilot Blog) | 2026年6月(PowerPoint 16日/Word 18日/Excel 22日・各社報道) |
誰が提供するか | Microsoft(Copilotの中の選べるモデルとして) | SpaceXAI(xAI)が自社アドインとして |
入る場所 | Word・Excel・PowerPointのCopilot体験 | 同じ3アプリのアドイン(作業ウィンドウ) |
利用条件 | Frontierプログラムの対象顧客+管理者が専用設定をオン | Microsoft 365ユーザーに無償と報じられている |
既定の状態 | 無効(既定でオフ) | アドインを入れるかどうかの話 |
地域 | プレビュー中はEU・EFTA・英国では提供されない | 公式の地域条件は確認できず |
データの扱い | SpaceXAIがMicrosoftのサブプロセッサー(委託先)として追加 | Microsoftの製品条項・DPAの枠外 |
管理者の統制 | 管理センターの設定で組織単位に可否を決められる | アドインの許可・ブロックという別の統制軸 |

社内で「Grok使えるの?」という会話が始まったとき、まずこの2列のどちらの話をしているのかを確かめてください。ここを取り違えたまま議論すると、無償で使える話と委託先を1社増やす話が混ざります。
経路①:Copilotのモデル選択にGrokが加わった(2026年9月12日)
Microsoftは2026年9月12日、Copilot公式ブログの「Expanding model choice in Copilot with Grok」という記事で、SpaceXAIのGrokモデルをCopilotのモデル選択に追加したと発表しました。本文は1分で読み切れる短さで、必要なことだけが書かれています。
公式が明示している4点
記事から実務に効く記述を取り出すと、次の4点です。
- 提供範囲:Grokモデルへのアクセスは、Microsoft Frontierプログラムを通じてWord・Excel・PowerPointで順次提供される。「まずは絞った公開から始め、一般的な業務シナリオでの使われ方のフィードバックを集める」とされています
- 既定はオフ:SpaceXAIモデルへのアクセスは「既定で無効になっている専用の管理設定」で管理される。使いたい組織はまずその設定を有効化する
- 委託先としての追加:SpaceXAIがMicrosoftのオンラインサービス サブプロセッサー一覧に追加された
- 地域の除外:プレビュー期間中、EU(欧州連合)・EFTA(欧州自由貿易連合)・英国のFrontier顧客にはGrokは提供されない
さらに「モデルを顧客に提供する前に、Microsoftはテスト・安全性検証・責任あるAIのレビューを通して評価する」という一文が添えられています。プレビューであっても審査を通していることを明示する書き方です。
「モデルが増えた」ではなく「委託先が増えた」が本題
この発表でいちばん重い一行は、機能の話ではありません。SpaceXAIがサブプロセッサー一覧に追加されたという部分です。
サブプロセッサーとは、Microsoftが顧客データの処理を再委託する相手のことです。Microsoft 365 Copilotの価値の中心は「利用者がアクセス権を持つ範囲の情報を参照する」という設計にあり、参照範囲は権限で決まります。その参照範囲にあるデータが、新しい委託先の処理を通ることになります。
つまり管理者の判断は「便利な機能をオンにするか」ではなく、自社のMicrosoft 365のデータ処理チェーンに会社を1社加えるかという判断です。稟議に上げるときの言い方をここで間違えると、後から「そんな話だと思わなかった」になります。
モデルごとの入口の違いがそのまま条件の違いになる構造は、Anthropic系・OpenAI系のモデルでも同じです。入口別に何が変わるかは以下の記事でも扱っています。
Frontierプログラムとは何か——管理者が実際に踏む手順
経路①を使うには、まずFrontierプログラムに参加している必要があります。Microsoft Learnの「Get started with the Microsoft Copilot Frontier Program」(最終更新2026年8月18日時点で確認)に、条件と手順が整理されています。
Frontierの位置づけ
Frontierは、Microsoft 365の新しいAI機能を一般提供(GA)より前に評価できるオプトインのプログラムです。Microsoftは提供のタイミングを3段階に分けていて、Frontierはその最速レーンにあたります。
- Frontier(オプトイン):一般提供前の機能を評価・準備したい早期採用者向け
- 標準リリース:一般提供と同時に届く既定の体験
- 段階的リリース(Deferred):複雑な環境で検証時間が必要な組織向け
重要なのはFrontierの機能はプレビューであり、変更される可能性があると明記されている点です。テナント単位で管理され、どのユーザーがどのFrontier機能にアクセスできるかはIT管理者が明示的に制御します。
参加に必要なもの
Learnの前提条件として挙がっているのは次の3点です。
- Microsoft Copilotライセンス:Frontierへの参加にはCopilotライセンスが必要です。ライセンスのないユーザーにはFrontier機能が表示されません
- 管理者ロール:AI管理者(AI Admin)・セキュリティ管理者(Security Admin)・Officeアプリ管理者(Office Apps Admin)のいずれかを持つアカウント
- 管理者自身のライセンス:管理者アカウント自体にもCopilotライセンスを割り当てておく。ないと管理センターに一部の設定やエージェントが出てこないことがあります
1点目は見落とされがちです。「無償のCopilot Chatだけを使っている会社は、この経路に乗れない」ということになります。ライセンスの階層と割当の考え方は以下でまとめています。
有効化の場所と、反映までの時間
Frontierを有効にする手順は、Learnでは次のように書かれています。
- Microsoft 365管理センターにサインインする
- Copilot→設定へ進む
- すべて表示タブを選ぶ
- 設定の検索窓に「Frontier」と入力する
- Copilot Frontierを選ぶ
- アクセスの割り当て方を選ぶ:アクセスなし(既定)/すべてのユーザー/特定のユーザー
有効化してから利用者に機能が見えるまで最大3時間かかるとされています。「設定したのに出てこない」で切り分けを始める前に、この待ち時間を思い出してください。エージェント側のストアに並ぶまでも同様に最大3時間です。
なお、Frontierの管理設定はエージェント側の設定を上書きしません。エージェントのビューで管理者が個別に止めているものは、利用者がFrontierに登録されていても使えない、と明記されています。「どちらかがオンなら使える」ではなく「両方がオンでなければ使えない」という関係です。

特定のユーザーだけに絞るのが実務の既定解
Learnは、Microsoft Entra IDのセキュリティグループで対象者を絞り、小さなグループで検証してから広げる進め方を推奨しています。これはプレビュー機能の扱いとして素直な設計です。
私たちが支援に入る場合も、最初から全社に開ける形は取りません。評価する人を数名に限り、その人たちの業務で「この仕事をこのモデルに任せられるか」を確かめてから範囲を広げます。プレビューは「変わる前提のもの」なので、全社の業務手順に組み込んでしまうと、変更が来たときに戻せなくなります。
モデルの有効化は「機能のオン」ではなく「委託先の追加」
ここからは、経路①をもう一段深く見ます。2026年9月13日時点で、Grok専用の管理者向けドキュメントはまだ公開されていません。ただし同じ枠組みで先に入っているAnthropicモデルのドキュメントが残っており、そこから設定の型が読み取れます。
Anthropic版から読み取れる設定の型
Microsoft Learnの「Copilot in Microsoft 365 apps with Anthropic models」(最終更新2026年9月3日時点で確認)には、次の記述があります。
- 管理の場所は管理センター →「Copilot」→「設定」→「すべて表示」→「Microsoftのサブプロセッサーとして動作するAIプロバイダー」
- この操作にはAI管理者(AI Administrator)ロールが必要
- 対象はWord・Excel・PowerPointのCopilot体験に限られ、他のCopilot機能・サービスでのモデル利用には影響しない
- アプリ単位の設定は、グローバルなサブプロセッサー設定とは別物。アプリ単位の変更はグローバル設定を書き換えない
- Anthropicモデルが使われる場合、そのデータ処理はMicrosoft EUデータ境界(EUDB)の外で行われる。AnthropicはMicrosoftのサブプロセッサーとして、Microsoft製品条項とデータ保護条項(DPA)の適用を受ける
Grokも同じ「Microsoftのサブプロセッサーとして動作するAIプロバイダー」の枠に入ったので、設定の場所と必要ロールはこの型に沿う可能性が高い、という読みになります。ただしこれは現時点では推測です。断定せず、自社のテナントで実際の表示を確認してください。
Copilotの中に、外部プロバイダーが3社並んだ
もう一つ、今回の追加で変わったことがあります。Copilotが外部から借りているモデルの提供元が、2社から3社になったという点です。
Microsoft Learnの「Data, Privacy, and Security for Microsoft Copilot」には、Copilot体験の中でサブプロセッサーとしてモデルを提供する事業者として、AnthropicとOpenAIが挙げられています。管理者は「これらのモデルを自社の体験に使うかどうかを決められる」とされ、追加の条項が適用される場合があるとも書かれています。ここにSpaceXAIが加わった形です。
実務で効くのは、事業者が増えたこと自体より「この一覧は固定ではない」と分かったことのほうです。委託先の一覧を一度スクリーンショットに撮って社内規程に貼り付けて終わりにすると、次の追加で規程と実態がずれます。増える前提で、誰がいつ確認するかを決めておく——これがこの発表から引き出せる、いちばん再利用のきく教訓です。
なお、2026年9月13日時点でこのプライバシー文書にSpaceXAI・Grokの記載は見つかりませんでした。発表から1日しか経っていないためと考えられますが、「公式ドキュメントに載っているか」を基準に社内判断をしている会社は、この時差に注意してください。発表ブログには書かれていて、正本の文書にはまだ無い、という状態が数日から数週間続きえます。
プロバイダーが増えるほど、比較の軸は「モデルの賢さ」から離れる
選べるモデルが3社分になると、現場からは「どれがいちばん賢いのか」という質問が出ます。ただ管理者が答えるべき問いは、たいてい別のところにあります。
- どのアプリで効くのか:今回の追加はWord・Excel・PowerPointに限られています。Outlook・Teamsでの挙動は別の話です
- どの設定に紐づくのか:アプリ単位の設定と、グローバルなサブプロセッサー設定は別物だと公式に明記されています。片方だけ変えて「反映されない」と悩むケースが起きえます
- 戻せるのか:プレビュー機能は変更されます。業務に組み込む前に、オフに戻したときに何が起きるかを確認しておく
モデルの比較はベンチマークの記事に任せて構いません。管理者の仕事は、選択肢が増えたときに自社の統制が追いついているかを確かめることです。
AnthropicとGrokで、地理的な向きが正反対になっている
2つのドキュメントを並べて読むと、同じ「Word・Excel・PowerPointのモデル選択」という枠の中で、提供の向きが逆を向いていることが分かります。ここは見落としやすいので表にします。
| Anthropicモデル | Grok(SpaceXAI)モデル |
|---|---|---|
設定が存在する狙い | EU・EFTA・英国の顧客にモデル選択の柔軟性を足すため | Frontier参加者にプレビューとして早く試させるため |
EU・EFTA・英国 | 対象。2026年3月25日以降に作成されたテナントでは既定でオン | プレビュー中は提供されない |
既定の状態 | 上記地域の新規テナントはオン(それ以前のテナントはメッセージセンターで確認) | 既定でオフ |
前提プログラム | Frontier参加は前提ではない | Frontier参加が前提 |
データ処理 | EUデータ境界の外で処理される | 専用の管理設定で統制。詳細ドキュメントは未公開 |
同じ画面の隣り合った設定なのに、片方は欧州向けの柔軟性のための仕組みで、片方は欧州を外したプレビューです。「Copilotのモデル選択」という一言でまとめて理解すると、必ずどこかで判断を間違えます。
Anthropicモデル側で入口によってデータの扱いが逆転する話は、別の記事で詳しく追っています。
日本のテナントにとって何が変わるか
日本の組織にとって、EUデータ境界の議論は直接は関係しません。では影響がないのかというと、そうではありません。変わるのは次の2点です。
- 委託先が1社増える可能性がある:EUDBという枠組みの話ではなく、サブプロセッサー一覧という枠組みの話なので、日本のテナントでも同じく適用されます。委託先一覧を社内規程やセキュリティチェックシートで管理している会社は、更新対象になります
- プレビューの範囲で先に触れる:地域除外の対象ではないため、日本のFrontier顧客は対象になりえます。「日本は後回し」ではなく、むしろ先に判断を求められる側です
取引先から提出を求められるセキュリティチェックシートに「AIサービスの委託先一覧」の欄がある会社は、この種の追加が起きたときに更新する運用を先に決めておくと、後で慌てません。
経路②:SpaceXAI(xAI)自身の無償Officeアドイン(2026年6月)
もう一方の経路が、SpaceXAI(xAI)が自社で配布しているOfficeアドインです。こちらはMicrosoftの発表より3か月ほど早く、2026年6月に出ています。
複数の報道が一致して伝えている内容は次のとおりです。PowerPointが6月16日、Wordが6月18日、Excelが6月22日の順に提供が始まり、いずれもMicrosoft 365の利用者は無償で使えるとされています。Wordでは下書きの構造化、PowerPointではアウトラインからのスライド生成、Excelでは自然言語での分析といった用途が挙げられ、Web検索やメール・SharePoint・Google Driveへの接続にも触れられています。
この情報はいずれも二次情報(報道)です。日付や機能の記述は複数のメディアで一致していますが、提供条件・利用上限・対応地域といった契約に関わる部分は、導入を決める前にSpaceXAI(xAI)の公式情報とAppSource上の掲載内容で確認してください。
統制の軸がまったく別になる
経路②で決定的に違うのは、Microsoftのサブプロセッサー管理の外側にあることです。Officeアドインは通常AppSource経由で配布され、Microsoft 365管理センターのアドイン統制(許可・ブロック・配布)の対象になります。つまり管理者が触るボタンの場所も、確認すべき契約も、経路①とは別です。
ここを分けずに「Grokを許可するか」を議論すると、話が噛み合いません。実務では次のように分けて聞くのが早いです。
- 経路①の質問:「Copilotの中で使うモデルとしてSpaceXAIを委託先に加えるか」→ 答えるのは情報セキュリティ・法務の観点
- 経路②の質問:「利用者が自分でアドインを入れられる状態にしておくか」→ 答えるのはアドイン統制・シャドーAIの観点
「無償で同じことができる」に見えるときが危ない
経路②はコストがかからないため、現場から自然に持ち込まれます。ここで起きやすいのが、有償のCopilotの代わりに無償のアドインが業務で定着し、会社が把握していない経路で業務データが外に出ている状態です。
個人契約や無償ツールが業務に入り込むときの具体的なリスクと止め方は、以下でまとめています。
なお、Grokという名前で呼ばれるものはこの2経路だけではありません。常時稼働のエージェント側でどこまで権限を渡すかという論点は、また別の判断になります。
Grok Botとは|常時稼働AIエージェントに渡す権限の決め方
社名が「xAI」ではなく「SpaceXAI」と書かれている
細かい点ですが、実務で引っかかるので書いておきます。
Microsoftの公式ブログでは、提供元が一貫して「SpaceXAI」と表記されています。「Grok models from SpaceXAI」「SpaceXAIをサブプロセッサーとして追加」「SpaceXAIモデルによって処理されるデータ」といった形です。脚注でも「GrokはSpaceXAIのモデルファミリーであり、対象となるFrontier顧客にプレビューとして提供される」と定義されています。
一方、報道の多くは「xAI」と書いています。この差が実務で効くのはサブプロセッサー一覧を検索するときです。「xAI」で探して見つからず「載っていない」と結論づけてしまう事故が起こりえます。委託先一覧や社内規程を照合するときは、両方の表記で探してください。
確認できたこと、まだ確認できないこと(2026年9月13日時点)
この記事を書く時点で公式に確認できた範囲と、できなかった範囲を分けて出します。ここを曖昧にすると、読んだ方が判断を誤ります。
項目 | 状態 | 根拠 |
|---|---|---|
Grokモデルの追加とその条件 | 公式で確認できた | Copilot公式ブログ(2026年9月12日付) |
Frontierの参加条件・有効化手順 | 公式で確認できた | Microsoft Learn(最終更新2026年8月18日) |
「サブプロセッサーとして動作するAIプロバイダー」設定の場所とロール | Anthropic版で確認(Grokも同型と推測) | Microsoft Learn(最終更新2026年9月3日) |
Grok専用の管理者向けドキュメント | 確認できなかった | Learn上に該当ページが見つからない |
Copilotのプライバシー正本ドキュメントへの反映 | 未反映 | 「Data, Privacy, and Security for Microsoft Copilot」にはAnthropicとOpenAIの記載のみ |
Officeアドイン(経路②)の提供条件・上限 | 二次情報のみ | 複数メディアの報道が一致 |
特に4番目と5番目は重要です。発表が出た直後は、ブログの記述だけが先行し、管理者向けの手順書とプライバシー正本が追いついていない状態が生まれます。この時期に「公式ドキュメントに書いてあるとおりに設定しました」という報告はできません。自社テナントの管理センターで実際の表示を見て、画面の状態を記録として残すほうが確実です。
有効化を判断するとき、私たちが見る5点
ここまでの整理を踏まえて、実際に管理者から「オンにしますか」と相談されたときに私たちが確認している観点を出します。
1. その仕事が、モデルを替えると本当に良くなるのか
モデルの選択肢が増えると「試したい」が先に立ちます。ただ実務で効くのは、モデルの差より参照できるデータの範囲と、渡し方の設計であることが多いです。Excelの表が整っていなければ、どのモデルでも結果は揺れます。先に整える工程を飛ばしてモデルを替えても、体感は変わりません。
2. 委託先一覧の更新責任者が決まっているか
前述のとおり、これは委託先を増やす判断です。社内規程・取引先提出資料のどこに委託先一覧があり、誰が更新するのかが決まっていない状態で有効化すると、後から棚卸ししたときに経緯が誰にも分からなくなります。
3. プレビューであることを利用者に伝えたか
Frontierの機能は変更されうる、と公式が明記しています。業務手順書に組み込む前に、評価期間であることを利用者に伝えておく。ここを省くと、仕様が変わったときに現場が止まります。
4. 既定値に依存していないか
この点は、私たち自身の失敗から得た観点です。
私たちは自社の業務の一部を、人が介在しない定型の自動ジョブとして動かしています。その中で、「継承されるはずだった認証情報」に依存していた処理が期限切れで静かに止まり、25回連続で判定に失敗し続けていたことに、後から気づいたことがありました。エラーで落ちれば気づけたのに、仕組みが黙ってフォールバックしていたので気づけなかったのです。
「既定でオフ」「既定でオン」という記述は、今の自社テナントの実際の値とは別の話です。Anthropicモデルの設定が地域とテナント作成日で既定値が変わるように、既定値は条件で変わり、後から変更もされます。ドキュメントの「既定」を読んで終わりにせず、管理センターで現在の値を見る。これだけで防げる事故があります。
5. 誰が有効化するのかが決まっているか
外部の支援者は、この操作を代わりに実行できません。私たちの経験では、外部の支援者が自分のアカウントのままお客様のCopilot環境を触れる形にはならず、先方名義の作業用アカウントを借りる形に収束します。つまり有効化のボタンを押すのは、必ずお客様側の管理者です。
だからこそ、押す前に何が変わるのかを言葉にして共有しておく必要があります。「AI管理者ロールを持つのは誰か」「その人が内容を理解しているか」を先に確かめてください。
よくある質問
日本でGrokをCopilotの中で使えますか
地域として除外されているのはEU・EFTA・英国のFrontier顧客です。日本は除外対象として挙げられていません。ただしFrontierプログラムへの参加とCopilotライセンス、そして管理者による専用設定の有効化が前提になります。
追加費用はかかりますか
公式ブログには料金の記載がありません。Frontier自体は「Microsoft Copilotライセンスが必要」とされているので、Copilotライセンスを持っていることが費用面の前提です。モデル追加に伴う別建ての課金があるかは、公式に確認できませんでした。契約に関わる部分なので、最新の公式情報とテナントの管理センターで確認してください。
無償のCopilot Chatだけでも使えますか
Frontierの前提条件にCopilotライセンスが挙がっており、ライセンスのないユーザーにはFrontier機能が表示されないと明記されています。無償のCopilot Chatのみの利用では、この経路には乗れないと読むのが自然です。
気づかないうちにオンになることはありますか
Grokについては「既定で無効」と明記されています。一方でAnthropicモデルの設定には、特定の地域・特定の作成日以降のテナントで既定がオンになるケースがあります。プロバイダーごとに既定が違うので、まとめて理解しないでください。自社の現在の値は管理センターで確認できます。
欧州に拠点がある場合はどうなりますか
プレビュー期間中、EU・EFTA・英国のFrontier顧客にはGrokは提供されないとされています。グローバルに拠点がある組織では、拠点によって使える・使えないが分かれる可能性があります。全社で同じ手順書を配る前に、この点を確認してください。
アドイン版(経路②)を禁止すべきですか
一律に禁止するかどうかは、その会社が扱うデータと既存のアドイン統制の方針次第です。ただ「経路①の議論と混ぜない」ことは、どの会社でも共通して必要です。委託先追加の判断と、アドイン統制の判断は別の会議で決めてください。
まとめ
2026年9月時点の状況を、判断に使える形でまとめます。
- 「GrokがOfficeで使える」には入口が2つある。Microsoftが公式にCopilotへ組み込んだ経路(2026年9月12日)と、SpaceXAI(xAI)自身の無償Officeアドイン(2026年6月)
- 経路①はFrontier参加+Copilotライセンス+管理者による専用設定の有効化が条件。既定はオフで、プレビュー中はEU・EFTA・英国では提供されない
- 本題は「モデルが増えた」ではなく「委託先が増えた」。SpaceXAIがMicrosoftのサブプロセッサー一覧に追加されたことが、稟議で説明すべき中身
- 同じ設定の枠にいるAnthropicモデルとは、地理的な向きも既定値も正反対。プロバイダーごとに条件を確認する
- Grok専用の管理者向けドキュメントとプライバシー正本への反映は、2026年9月13日時点で確認できなかった。発表直後はドキュメントが追いついていない前提で、自社テナントの実際の表示を確認する
- 社名の表記は公式ではSpaceXAI。委託先一覧を照合するときは「xAI」との両方で探す
モデルの選択肢が増えること自体は、使う側にとって良い変化です。ただし増えるのは選択肢だけでなく、確認しなければならない条件の数でもあります。「使えるようになった」という見出しを見たときに、入口・既定値・委託先・地域の4点を機械的に確認する習慣を、社内に置いておくことをおすすめします。
株式会社Fyveは、こうした発表のたびに一次情報まで降りて「自社では何を決める必要があるのか」に翻訳する作業を、月額の伴走の中で引き受けています。判断の材料が足りないまま止まっている案件があれば、お気軽にご相談ください。
本記事の内容は2026年9月13日時点で公開されている情報にもとづきます。Microsoftの提供条件・地域・料金は変更される可能性があるため、実際の導入判断の前に最新の公式情報とご自身のテナントの管理センターでご確認ください。
御社の業務に合わせたCopilot導入・定着支援
「ライセンスを配ったのに使われない」を終わらせる。
業務の棚卸しから、効く業務の切り分け、社内への定着まで一貫して支援します。