公開事例の分析
研究所の文献調査をCopilotで半分以下の時間に — 参天製薬
奈良の研究所で研究員約80人の全員にMicrosoft 365 Copilotを導入し、文献調査で目的の情報を得るまでの時間を従来の半分以下にした事例。検索する範囲を分けて社内情報の検索精度を上げた方法、全社展開までの順序、費用の目安をまとめました。
参天製薬株式会社

- 業種
- 製薬・ライフサイエンス
- 規模
- 50名〜
- 使用AIツール
- Microsoft Copilot
- 業務領域
- 情報収集・調査・記録・議事録
- 導入形態
- 自走
- 成果
- 文献調査で目的の情報を得るまでの時間が従来の半分以下に。社内情報の検索精度は研究者の体感で50%から90%に上がった。研究所の利用率は98%。
参天製薬は奈良研究開発センターの研究員約80人の全員にMicrosoft 365 Copilotを導入し、論文などの文献調査で目的の情報を得るまでの時間を従来の半分以下にしました。文献調査に使っているのは、Copilotに2025年6月に加わった「リサーチツール」という推論エージェントです。社内の情報を探すときは、検索する範囲を絞れる「SharePointエージェント」を使っています。
研究所に導入したのは2024年10月で、2025年10月には日常的にパソコンで仕事をする全従業員へ対象を拡大しました。先に使っていた約2割の社員では、1人あたり年間約70時間の業務が減っています。費用は公表されていません。

導入前の業務
参天製薬は、大阪に本社を置く眼科の医薬品の会社です。研究開発の中心は、奈良県生駒市の奈良研究開発センターにあります。
研究部門には論文などの文献を調べる、技術情報を集めて分析する、規制や社内の情報を探すといった仕事があります。同社の生成AIプロダクトマネージャーの大東達也氏によると、こうした「文書関連作業」が研究部門の業務の30%を占めていました。
何をどう導入したか
導入したのは奈良研究開発センターの研究員約80人の全員です。研究所では以前から、研究者とIT部門が「DXタスクフォース」を組み、データやAIの活用を進めていました。
道具は、既製のMicrosoft 365 Copilotです。研究員が毎日使うOutlookやTeams、Wordの中で動きます。
最初に変えたのは、議事録とメールの扱いです。どちらもCopilotで要約し、その要約を共有するようにしました。
文献調査には、論文などを調べて結果をまとめるリサーチツールを使っています。社内の情報を探すときはSharePointエージェントを使い、SharePointに保存した資料のどの範囲を探すかを分けています。
特殊な書式で文書を作る仕事のように、Copilotの標準機能では足りない部分もありました。そこはAzureやCopilot Studioを使った試作(PoC)を進めています。

進めた順序
同社は生成AIの導入を4つの段階に分けて進めていて、Copilotの導入はその第2段階です。

- 社内向けの生成AIツール「Santen AI Chat」を全社員に展開(2024年度に完了)
- 2024年4月:Microsoft 365 Copilotを全社員の約2割に先行導入して効果を確かめる
- 2024年10月:奈良研究開発センターの研究員約80人の全員に導入し、議事録とメールの要約から始める
- 時期は非公表:SharePointエージェントで検索する範囲を分け、社内情報の検索の精度を上げる
- 2025年6月:Copilotにリサーチツールが加わり、文献調査に使う
- 2025年10月1日:日常的にパソコンで仕事をする全従業員へ拡大する
先行導入から全社展開までは約1年半です。次は、社内の大量の紙の資料をデジタル化してSharePointに集め、AIが探せる資料を増やす計画です。
結果
文献調査では、目的の情報を得るまでの時間が、従来の半分以下になりました。社内情報の検索は、研究者の体感で精度が50%から90%に上がり、日常的に使える水準になったといいます。どちらも同社の説明で、測り方は公表されていません。
利用率は研究所でも先行導入した約2割の社員でも98%です。先行導入した社員では1人あたり年間約70時間の業務が減りました。同社はこの数字を全社展開を決めた理由に挙げていますが、研究所に限った数字ではありません。
費用
参天製薬は、ライセンスの費用も、導入にかかった費用も公表していません。
分かっているのは、利用者へのトレーニングや特別な設定、追加のセキュリティ対策が要らなかったことです。文献調査のために、社内の文書を検索して答えさせる仕組み(RAG)を自前で作ることも検討していましたが、リサーチツールが出たことで作らずに済みました。
ツールの価格は公開されています。大企業向けのMicrosoft 365 Copilotは、Microsoft 365の契約への追加で1ユーザーあたり月4,497円です(年払い・税抜・2026年10月27日時点のMicrosoftの公式ページ)。研究所と同じ約80人に導入すると、追加する分だけで月約36万円になります。
なぜうまくいったか
一つ目は、毎日使っている道具の中にAIが組み込まれていたことです。研修なしで利用率は98%になりました。同社の武末有香氏(Digital & IT本部 Global Digital Innovation部長)も、全社員がMicrosoft 365に使い慣れていることを理由に挙げています。使われなければ作業時間は減らないので、まず使われる道具を選んだことが結果につながっています。
二つ目は、文書の仕事が多い部署の全員に導入したことです。研究所は業務の3割が文書関連作業です。全員が使えるので、議事録やメールの要約を共有するやり方を部署のルールにできました。
三つ目は、検索する範囲を分けたことです。社内の情報をまとめて探すやり方では精度に限界があり、範囲を分けたことで日常的に使える水準になりました。
四つ目は、自前で作る範囲を絞ったことです。自前の試作は、標準機能でできない部分に限っています。大東氏は、研修や設定が要らなかったぶん、IT部門が新しい取り組みに時間を使えたと話しています。
自社で取り入れるなら
ここからは編集部の見立てです。
まず、会社の文書やメールがMicrosoft 365(Outlook・Teams・SharePoint・OneDrive)に保存されているかを確かめます。Copilotが探せるのはMicrosoft 365に保存されている情報だけです。資料が紙やほかのツールに分かれて保存されている会社では、Copilotより先に資料の保存先を1か所にまとめる必要があります。
次に、調べものと文書づくりが多い部署を1つ選び、その部署の全員に導入します。5人の部署でも全員が使えば、議事録とメールの要約を共有するやり方を部署のルールにできます。資料を探す使い方は、部署の資料をSharePointのサイトごとに分けて保存し、その範囲だけを探すエージェントを作るところから始めます。300人以下の会社には「Microsoft 365 Copilot Business」があり、通常の価格は1ユーザーあたり月3,148円です(年払い・税抜。2026年10月27日時点では割引価格が案内されています)。10人の部署なら月約3万1千円で、これとは別にMicrosoft 365の契約が要ります。契約の前にMicrosoftの公式の価格ページで最新の価格を確かめてください。
社内の資料をAIで探せるようにした事例にダイキン工業、全社員向けの社内AIを展開した事例にパナソニック コネクトがあります。
自社で同じことを進めたいときは、AI百景の相談窓口から、業務に合う支援事業者を探せます。
出典: 参天製薬 ニュースリリース(2025年10月1日「生成AIツール『Microsoft 365 Copilot』をグローバル全社に導入」)、参天製薬「デジタルトランスフォーメーション」、ASCII.jp「Microsoft 365 Copilotの“利用率98%” 全社展開した参天製薬『生成AI活用の現在地』」(2025年10月21日)、Microsoft「Microsoft Copilot のプランと価格」一般法人向け・大企業向け(2026年10月27日確認)


