公開事例の分析
ファミリーマート — 6領域を3ヶ月試して、効く業務だけを選んだ
全社横断50人のプロジェクトで6領域を3ヶ月検証し、削減できる業務を特定してから広げた。アンケート集計・社内文書作成・問い合わせ対応で作業時間が約50%削減される見込み。導入を目的化しない進め方の記録。
株式会社ファミリーマート

- 業種
- 小売
- 規模
- 50名〜
- 使用AIツール
- 自社開発AI(受託・共同開発)
- 業務領域
- 資料作成・顧客対応
- 導入形態
- 構築委託
- 成果
- アンケート集計・社内文書および社員教育資料の作成・スーパーバイザーからの問い合わせ対応で、作業時間が約50%削減される見込みと特定。
本部のオフィスで、社員がアンケートの集計を終えたところです。数千件の自由記述を読み、分類し、要点にまとめる。かつては一日仕事だった作業が、いまは下書きが先に出てきます。
スーパーバイザーから本部への問い合わせも、同じように変わりました。「この場合の対応は」という質問に、まず社内のルールをもとにした回答案が返ってくる。担当者はそれを確認して返します。
ファミリーマートが全社で生成AIを使い始めて、こうした景色が本部の日常になりました。
導入前の風景
約1万6千店を運営する会社の本部には、店舗と現場を支えるための事務作業が集まります。アンケートの集計、社内文書や教育資料の作成、店舗を回るスーパーバイザーからの問い合わせ対応。
どれも会社を回すために必要な仕事ですが、同時に「答えは社内のどこかにあるのに、それを探して整えるのに時間がかかる」種類の仕事でもありました。人が増えるほど問い合わせも増え、資料も増えていきます。
生成AIが使えそうだ、という感覚は多くの会社が持っていました。問題は、どの業務に効くのかが分からないことです。
変わった景色
同社が2024年4月に発表した取り組みは、その「どこに効くのか」を先に確かめる進め方でした。
全社横断の「生成AIプロジェクト」を立ち上げ、50人のメンバーで推進する体制を作ります。そのうえで、2023年12月から3ヶ月間の検証を実施しました。検証したのは6つの領域です。セキュリティ・レギュレーション作成、Q&A作成・自動回答、文書作成・要約、定型シート作成、法令・リスクの洗い出し、翻訳。
結果として、各種アンケートの集計作業、社内文書および社員教育資料の作成、スーパーバイザーから本部担当社員への問い合わせ対応で、作業時間が約50%削減される見込みと特定されました。同社はこれを受けて、その年度に集中的に効率向上へ取り組む方針を示しています。
使う道具は、社内に元からあった人型AIアシスタント「レイチェル/アキラ」に生成AIを搭載する形をとりました。新しいツールを覚えてもらうのではなく、すでに社員が知っている入口の中身を入れ替えています。
なぜうまくいったか
一つ目は、効く業務を探す工程を独立させたこと。多くの会社は「生成AIを導入する」と決めてから対象業務を探します。この会社は逆で、6領域を3ヶ月かけて検証し、削減できる業務を特定してから広げました。導入が目的化していません。
二つ目は、検証の対象が「答えが社内にある仕事」に寄っていること。アンケート集計、社内文書、問い合わせ対応。いずれも判断ではなく、社内にある情報を探して整える作業です。生成AIが最も外しにくい領域から入っています。
三つ目は、既存の入口を使ったこと。社員が既に知っているAIアシスタントの中身を入れ替える形にしたので、「新しいシステムを覚える」という負担が発生しません。導入の速度は、たいていここで決まります。
四つ目は、50人という体制を先に作ったこと。全社横断のプロジェクトとして人を置いたから、6領域を並行して検証できました。担当者1人の兼務では、3ヶ月で6領域は回りません。
戻ってきた時間
特定された業務では、作業時間が約50%削減される見込みとされています。半分になるのは「その業務そのもの」であって、会社全体の残業が半分になるという話ではありません。この区別を発表の時点で明示しているのは、社内の期待値を管理するうえでも参考になります。
アンケート集計や資料作成が半分になると、本部の担当者の時間は店舗支援やスーパーバイザーとのやり取りに回ります。小売業の本部にとって、現場に向ける時間が増えることは、そのまま店舗の売上に効く可能性があります。
同社はその後も店舗側での取り組みを進めており、2026年1月には売場を点数化して品揃えを分析する「AI売場スコアリング」の実証を始めています。本部から店舗へと、対象が段階的に広がっている形です。
編集後記
この事例の持ち帰りどころは、削減率ではなく「3ヶ月の検証を挟んだ」という一点です。
第一景の鳥取のデイサービスも、最初に動いたのは2週間分の仕組みだけでした。イオンリテールも、効果の出る品目から入れて広げています。規模も業種も違うのに、うまくいっている現場はどこも、いきなり全部を作っていません。
「どこに効くのか分からない」は、導入しない理由ではなく、最初に確かめるべき問いなのだと思います。
出典: 株式会社ファミリーマート ニュースリリース(2024年4月18日「社内に生成AIを導入 関連業務時間を50%削減へ」)、同(2026年1月13日「AI売場スコアリング」実証開始)


