2026/03/26AI業務効率化
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介護のペーパーレス化ガイド|電子保存のルールと進め方

介護のペーパーレス化ガイド|電子保存のルールと進め方

介護のペーパーレス化を検討すると、まず「介護記録は紙で残さないと実地指導で指摘されるのでは」という不安にぶつかります。——ここで止まったまま、何年も紙のバインダーが増え続けている事業所は少なくありません。

結論から言うと、介護保険サービスの記録・書類は、令和3年度介護報酬改定にともなう運営基準の改正以降、電磁的記録による作成・保存が原則として認められています。押印を求めないことも可能です。進まない理由は法令ではなく、進め方の設計にあります。

株式会社Fyveは、介護施設向けにiPad+AI記録システムを開発・導入し、月100時間の業務削減まで並走してきました。この記事では、法令上どこまで電子化してよいのかという前提を押さえたうえで、実際に現場が回った進め方を順にお伝えします(制度情報は2026年8月時点)。

介護のペーパーレス化は法令上どこまで認められているのか

最初に片づけるべきは「やっていいのか」です。ここが曖昧なまま進めると、現場は必ず「念のため紙も残しましょう」に着地し、二重管理が固定化します。

令和3年度の運営基準改正で「電磁的記録」が原則認められた

厚生労働省は令和3年度介護報酬改定にあわせて「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」等を改正しました。利用者等の利便性向上と事業者の業務負担軽減の観点から、利用者等への説明・同意を書面で行うものについて電磁的な対応を原則認め、あわせて諸記録の保存・交付等についても電磁的な対応を原則認める内容です。

つまり、介護記録・申し送り・ケアプラン・報告書といった日常の書類は、紙で持たなければならないという前提が制度上すでに外れています。「紙でないとダメだと思っていた」は、2021年より前の常識のまま止まっている状態です。

押印・署名も原則不要になった

同じ改正で、署名・押印を求めないことが可能であること、およびその代替手段が明示されました。同意の記録は、電子署名のほか、システムのログイン記録・操作ログ・チェック操作の記録といった形で残せます。

実務で効くのはここです。押印が必要だと思い込んでいると、どれだけ入力をデジタル化しても「最後に印刷して判子をもらう」工程が残り、紙が消えません。押印欄の削除は、ペーパーレス化の中でもっとも費用がかからず効果が大きい一手です。

利用者へ電子で渡すときは「本人の承諾」が前提

ひとつ注意点があります。重要事項説明書や契約書など、利用者・家族に交付する書類を電磁的方法で提供する場合は、あらかじめ相手方の承諾を得る必要があります。全員が一律にメールやアプリで受け取れる前提で設計すると、そこで詰まります。

現実的には「電子で受け取る方には電子で、紙を希望する方には印刷して渡す」という二本立てで始め、電子を希望する割合を年単位で増やしていく形になります。事業所内の記録は全面電子化、利用者への交付は選択制、という切り分けが最初は無難です。

電子保存で守るべき3つの要件(真正性・見読性・保存性)

電磁的記録による保存には、いわゆる電子保存の三原則が求められます。介護記録ソフトを選ぶ際は、この3点を満たせるかを確認してください。

  • 真正性 — 正当な権限で作成された記録であり、虚偽入力・書換え・消去を防止でき、責任の所在が第三者から見て明確であること
  • 見読性 — 必要に応じて直ちに明瞭かつ整然とした形式で画面表示・書面出力ができること
  • 保存性 — 保存期間を通じて、真正性を保ち見読可能な状態で保存されていること

言い換えると、「誰が・いつ・何を書いたか、後から書き換えていないか」が追えて、求められたらすぐ印刷して出せる状態であることです。Excelやスプレッドシートに手打ちで転記しているだけの運用は、この真正性の要件が弱くなります。私が支援した施設でも、権限分けと編集履歴を持つ仕組みへ移す作業は、効率化と同じくらい優先度の高い工程でした。

保存期間は「完結の日から2年」。ただし自治体条例で5年の地域がある

運営基準では、記録はその完結の日から2年間保存することとされています。ただしこれは国が定める最低ラインで、指定権者である自治体が条例でより長い期間(5年)を定めている地域があります。また、介護給付費の請求に関する書類は5年保存とされるのが一般的です。

ここは地域差が大きいため、必ず自事業所の指定権者(都道府県・市区町村)の条例と手引きを確認してください。ペーパーレス化の計画を立てるときは、「何年ぶんのデータをどこに置くか」がストレージ設計とバックアップ設計に直結します。2年と5年では、クラウドの契約プランの選び方が変わります。

データで見る、介護現場のデジタル化の現在地

「うちだけ遅れているのでは」という不安をよく聞くので、公的な調査で現在地を確認しておきます。公益財団法人介護労働安定センターの令和6年度「介護労働実態調査」(2025年7月28日公表)によると、日常的に利用しているICT機器等について、次の結果が出ています。

  • パソコンの介護ソフトで「利用者情報(ケア記録・ケアプラン等)の入力・保存・転記の機能」を日常的に利用している事業所は全体で75.4%
  • 訪問系では、タブレット端末・スマートフォンで「利用者情報の入力の機能」を利用している事業所が56.6%
  • 導入効果は「効果がある」「やや効果がある」の合計で、昼間の業務負担の軽減が49.4%、夜間の業務負担の軽減が44.6%

すでに4分の3の事業所が、何らかの形で記録をデジタルで扱っています。一方で、同調査では従業員が不足していると答えた事業所が65.2%、職種別では訪問介護員が58.1%ともっとも高くなっています。人が採れない前提で、いま居る職員の時間をどこから取り戻すか——ペーパーレス化はその最短経路のひとつです。

なぜ介護施設のペーパーレス化は進まないのか

介護施設の業務を見渡すと、記録・申し送り・計画書・報告書と、いたるところに紙が存在します。それでもデジタル化が進まない理由として、現場でよく聞くのが次の3点です。

  • 「今のやり方で回っているから変える必要を感じない」
  • 「職員のITリテラシーへの不安がある」
  • 「何から手をつければいいかわからない」

特に2つ目は根深い問題ですが、これは「教育で解決する」より「機能で解決する」方が早いというのが私の実感です。私が開発したシステムでは、デジタル機器が苦手な数名の職員のために、iPad入力とは別に手書きメモをスキャンするだけでデジタルデータになるOCRの経路を用意しました。全員に同じ操作を覚えてもらう必要はありません。入り口を複数用意して、出口(データベース)で1本にまとめれば十分です。

実際、書類作成が苦手な職員ほど自動化の恩恵は大きくなります。ある施設長からも「手書きが苦手なスタッフが多いので、入力補助や自動記録には本当に助かっている」という声をいただいています。

介護施設でペーパーレス化すべき5つの書類

まず「何を」デジタル化するかを整理しましょう。効果が大きい書類は次の5種類です。

ペーパーレス化すべき5つの書類

1. 介護記録(日誌・バイタル)

毎日発生する記録業務は、ペーパーレス化の効果が最も大きい領域です。iPadやスマートフォンへの入力、あるいは音声入力AIの活用により、記録時間を大幅に短縮できます。詳しくは介護現場での音声入力AI活用事例もご参照ください。

2. 申し送りノート

紙の申し送りノートは、情報の見落としや書き損じが起こりやすい書類です。デジタル化することで過去の記録を素早く検索でき、チーム全体での情報共有がスムーズになります。夜勤帯の口頭伝達に依存している事業所ほど、効果がはっきり出ます。

3. ケアプラン・個別支援計画

更新のたびに印刷・配布・回収が必要になるケアプランは、紙管理のコストが高い書類の代表格です。クラウドで一元管理することで、最新版を全員がリアルタイムに参照できるようになります。「どれが最新版かわからない」という事故が構造的に消えるのが大きい点です。

4. ヒヤリハット報告書

発生直後の記録が重要なヒヤリハット報告は、スマートフォンからその場で入力できる環境が理想です。記録のハードルを下げることで報告件数が増え、リスク管理の精度が上がります。紙の様式を「事務所に戻ってから書く」運用では、そもそも報告が上がってきません。

5. 勤怠管理・シフト表

シフト作成・変更・共有のコミュニケーションコストは、施設規模が大きいほど高くなります。クラウド勤怠管理ツールへの移行は、比較的導入ハードルが低くコスト削減効果も得やすい領域です。介護保険の運営基準とは直接関係しない領域なので、法令確認の手間なく着手できるという利点もあります。

逆に「急いで電子化しなくてよい書類」もある

全部を同時に狙わないために、後回しにしてよいものをはっきりさせておきます。次に当てはまる書類は、優先度を下げて問題ありません。

  • 発生頻度が年数回の書類 — 電子化しても削減できる時間が小さく、操作を覚え直すコストの方が高くつきます
  • 利用者・家族の署名を紙で希望されている書類 — 電磁的方法での交付には相手方の承諾が必要です。希望する方から順に切り替えれば十分です
  • 外部機関に紙提出を求められている様式 — 提出先の運用が変わるまでは、印刷が最後に1回入ることを前提に組みます
  • すでに請求ソフトで完結している帳票 — 二重に別システムへ載せ替えると、かえって整合性の管理が増えます

ペーパーレス化の目的は「紙をゼロにすること」ではなく「職員が書類に使う時間を減らすこと」です。この順序を取り違えると、削減効果の小さいところに労力が吸われます。

ペーパーレス化を進める5つのステップ

実際の導入支援を通じて見えてきた、失敗しないための進め方をご紹介します。

ペーパーレス化を進める5つのステップ

STEP1|現状の紙業務を棚卸しする

まず「今、どんな紙書類がどれだけ発生しているか」を可視化します。業務の種類・発生頻度・関わるスタッフ数・1件あたりの所要時間を一覧にするだけで、どこに時間が吸われているかが明確になります。

この棚卸しは、後の効果測定の基準値にもなります。導入前の所要時間を記録していないと、「速くなった気がする」以上のことが言えず、次の投資判断ができません。私が支援した施設では、施設長と一緒に導入前後の業務時間を突き合わせて月100時間削減という数字を出しました。この数字が出せたのは、着手時に前の状態を測っていたからです。

STEP2|優先度をつける(効果が大きい×始めやすいものから)

「毎日発生する」「記録に時間がかかる」「入力ミスが多い」といった書類を優先します。逆に、発生頻度が低い書類や法令上の要件が複雑なものは後回しにする方が賢明です。

実務では、日次のメモをデジタル化するところを最初の1手にするのが再現性が高いと感じています。日々のメモは月次報告書・ケアマネージャー宛の文書・ご家族宛の文書すべての材料になっているため、ここが電子データになるだけで下流の書類作成が一気に軽くなるからです。逆に、月次報告書のフォーマットだけを電子化しても、材料が手書きのままなら転記作業は残ります。

STEP3|ツールを選定する(SaaS vs カスタム開発)

市販のSaaSツール(介護記録ソフトなど)は導入コストが低く、すぐに使い始められるメリットがあります。一方、施設独自の業務フローに合わせたい場合や、複数のシステムを連携させたい場合は、カスタム開発が有効な選択肢です。

判断の分かれ目は「業務をソフトに合わせられるか」です。私が関わった施設では、既存の介護記録ソフトが痒いところに手が届かず、「ソフトに合わせて事業所を変えないといけない」ことが最大のストレスになっていました。パッケージで8割満たせるなら迷わずSaaS、現場のこだわりが業務品質そのものになっている領域はカスタム、という切り分けが現実的です。介護施設向けのAIシステム開発・導入支援では、現場の業務フローに合わせたシステム設計から対応しています。

介護記録ソフト比較|大手パッケージ vs カスタム開発の本音
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STEP4|現場スタッフを巻き込んで導入する

ここが最も重要なステップです。管理者側で決めたツールを現場に「使ってください」と伝えるだけでは、定着率が著しく下がります。試験導入の段階からスタッフに意見を出してもらい、「自分たちが作ったルール」という感覚を持ってもらうことが定着の鍵です。

要望が出たら小さくてもすぐ反映することも効きます。実際、「ケアマネージャーごとに五十音順で一括印刷したい」という要望を1〜2日で実装したところ、そこから現場のスタッフが積極的に「こうしてほしい」と意見を出すようになりました。最初の1件をどれだけ早く返せるかで、その後の巻き込み度合いが変わります。

STEP5|効果を測定し、次のステップへ

導入後は「記録にかかる時間が何分短縮されたか」「残業時間はどう変わったか」などを数値で追います。効果を見える化することで、次の施策への投資判断がしやすくなり、スタッフのモチベーション維持にもつながります。

あわせて、記録が1か所に集まった時点でアクセス権限の設計を見直してください。紙で分散していたときは物理的な保管場所が権限の代わりになっていましたが、データベースに集約された瞬間にその境界が消えます。私が支援した施設でも、データ集中と同じタイミングで事務員・一般職員・管理者で閲覧編集範囲を分ける作業を行いました。

現場で実際に起きた変化(実体験)

私が開発・導入支援を行ったiPad+AI記録システムでは、利用者150人・スタッフ50人規模のデイサービスにおいて、月100時間の業務削減を実現しました。具体的にどのような変化が起きたかをお伝えします。

最初の稼働までは2週間だった

着手して最初に動かしたのは、iPadからの入力とOCRによる手書きメモのデジタル化、そしてデータベースへの保存だけです。ここまでが2週間で稼働しました。月次報告書の自動生成やケアマネージャーごとの一括印刷は、その後に現場の要望を聞きながら順に足しています。

ペーパーレス化は「全部そろってから使い始める」ものではありません。土台となるデータの入り口を先に作り、そこに溜まったデータを材料に出力側を自動化していく順番が、現場の混乱がもっとも少ない進め方でした。

「書類が苦手な職員」のストレスが大きく軽減された

介護の仕事は「人が好きで選んだ」方が多く、文書作成を苦手とする職員も少なくありません。入力補助や定型文の自動補完により、記録作成のハードルが下がり、「書くストレスで帰れない」という状況が改善されました。

最終的に、職員の書類作成実務は「情報を入力すること」と「完成した書類に目を通して問題ないか判断すること」だけになりました。60代でITに詳しくない施設長も、すぐに使えるようになっています。

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情報共有の円滑化でチームワークが改善された

申し送りがデジタル化されたことで、夜勤明けの口頭伝達が減り、記録の読み間違い・伝達もれが大幅に減少しました。情報を誰もが同じタイミングで参照できる環境が、チームとしての連携を強化します。

ペーパーレス化でよくある失敗パターン

導入支援の中で繰り返し見てきた失敗パターンを4つ挙げます。

失敗1|いきなり全部デジタル化しようとする

一度に全書類をデジタル化しようとすると、現場の混乱が大きくなり途中で頓挫するケースが多いです。必ず「小さく始めて、確実に定着させてから広げる」順番で進めてください。

失敗2|管理者だけで決めて現場に押し付ける

現場のスタッフが「自分たちには相談がなかった」と感じた瞬間から、ツールへの抵抗が生まれます。意思決定のプロセスに現場を巻き込むことが、定着率を左右します。

失敗3|紙とデジタルの二重管理が発生する

「念のため紙でも残しておこう」という判断が積み重なると、入力コストが2倍になります。移行期間を設けた上で、紙をやめる日程を明確に決めることが重要です。

この判断の多くは「電子だけで実地指導に対応できるか不安」という心理から生まれます。だからこそ、この記事の冒頭で法令上の位置づけを整理しました。電磁的記録で保存してよいこと、求められたときに見読できる状態であればよいことを、管理者と現場の双方が納得している状態を先に作ってください。

失敗4|電子化したのに「出せない」状態になっている

意外に多いのが、データはあるのに求められた形式ですぐ印刷できないケースです。個人別・期間別に抽出して整った形で出力する機能がないと、実地指導のたびに手作業でまとめ直すことになり、紙より手間が増えます。

ツール選定時は、入力のしやすさと同じ重みで「一括で・並べ替えて・PDFで出せるか」を確認してください。見読性の要件を満たすという意味でも、ここは妥協できない部分です。

令和7年4月から「重要事項のウェブ掲載」が義務になった

ペーパーレス化と同じ方向を向いた制度変更として、令和6年度介護報酬改定で書面掲示規制が見直された点も押さえておきましょう。

これまで事業所内での書面掲示(またはファイルの閲覧)が求められてきた運営規程の概要等の重要事項について、あわせてウェブサイトへ掲載・公表することが義務化され、令和7年4月1日から適用されています。掲載先は法人のホームページ等、または介護サービス情報公表システム上とされています。

紙の掲示物を作って貼るという作業が、そのままウェブ上の更新作業に置き換わる領域です。すでに義務化されているため未対応の事業所は対応が必要ですが、ペーパーレス化の文脈で見れば「掲示物の管理をデジタルへ寄せる」動きの一部として、同じタイミングで整理してしまうのが効率的です。

事務所側の紙も対象になる — 電子帳簿保存法への対応

介護記録に目が行きがちですが、事務所で扱う請求書・領収書も紙が溜まる領域です。ここには別の法律が関わります。

電子帳簿保存法の改正により、2024年1月1日から、電子取引で授受したデータは電子データのまま保存することが原則義務となりました。メールに添付されたPDFの請求書やWeb上でダウンロードした領収書を、印刷して紙のファイルに綴じるだけの運用では要件を満たしません。

つまり事務所側については、ペーパーレス化は「やった方がよい改善」ではなく、すでに対応が求められている事項を含みます。介護記録の電子化を検討するタイミングは、経理まわりの保存方法を点検する良い機会でもあります。

費用と補助金の考え方

ペーパーレス化・ICT化の費用には、複数の補助制度が活用できる可能性があります。制度名は年度ごとに変わるため、2026年8月時点の名称で整理します。

介護テクノロジー導入支援事業(都道府県が実施)

従来別々に運用されていた「介護ロボット導入支援事業」と「ICT導入支援事業」は、令和7年度に「介護テクノロジー導入支援事業」へ一本化されました。都道府県が実施主体となり、介護記録ソフト、タブレット・スマートフォン等の端末、Wi-Fi環境整備、クラウド利用料などが対象になり得ます。

ただし、補助上限額・補助率・対象経費・公募時期は都道府県ごとに異なります。自治体によっては「介護テクノロジー定着支援事業」など別の名称を用いている場合もあります。必ず自事業所の所在する都道府県の公募要領で、最新の要件と締切を確認してください。

中小企業デジタル化・AI導入支援事業(旧・IT導入補助金)

いわゆるIT導入補助金は、2026年度は「中小企業デジタル化・AI導入支援事業」という名称で実施されています(実施機関:独立行政法人中小企業基盤整備機構)。申請枠は通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠に分かれています。

通常枠の補助率は1/2以内(一定の要件で2/3以内)、補助上限額は1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下とされています。年度内に複数回の締切が設けられるため、公式サイトで最新のスケジュールを確認してください。

補助金ありきで計画を組まない

補助金は強力ですが、締切に合わせて要件を固めると「使う機能」ではなく「対象になる機能」を選ぶことになりがちです。

順序としては、STEP1の棚卸しで削減対象を決め、必要な仕組みが固まってから、その時点で使える制度を探す方が結果的に無駄がありません。補助が取れなくても着手する価値がある範囲を先に決めておくことをおすすめします。

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介護のペーパーレス化に関するよくある質問

介護記録は紙で保存しなくても問題ないのですか

令和3年度の運営基準改正により、諸記録の保存等について電磁的な対応が原則認められています。真正性・見読性・保存性の要件を満たし、定められた期間保存できていれば、紙で保管する必要はありません。ただし保存期間は自治体の条例で異なる場合があるため、指定権者への確認は必ず行ってください。

利用者の署名や押印はどう扱えばよいですか

署名・押印を求めないことが可能であること、およびその代替手段が示されています。電子署名のほか、システム上の操作記録で同意を残す方法があります。ただし利用者へ電磁的方法で書類を提供する場合は、事前に相手方の承諾が必要です。

訪問介護でもペーパーレス化はできますか

可能です。むしろ移動を伴う訪問系こそ効果が出やすい領域で、令和6年度の介護労働実態調査では訪問系の56.6%がタブレット・スマートフォンで利用者情報を入力していました。訪問先で入力を完了できれば、事業所に戻ってからの転記作業がそのまま消えます。

ITが苦手な職員がいる場合はどうすればよいですか

全員に同じ操作を求めない設計にしてください。私が支援した施設では、iPad入力が難しい職員のために手書きメモをスキャンしてOCRでデータ化する経路を併設しました。入り口を複数用意し、出口のデータベースで1本化すれば、リテラシーの差は運用ではなく機能で吸収できます。

導入までにどれくらいの期間がかかりますか

範囲によって大きく変わりますが、記録の入力とデータ保存という土台部分だけであれば、短期間で動かすことは可能です。私が関わった案件では、iPad入力とOCRによるデジタル化までを2週間で稼働させ、そこから2年かけて出力の自動化まで段階的に広げました。最初から完成形を目指さないことが、期間を短くする最大のコツです。

まとめ

介護のペーパーレス化でまず確認すべきなのは、ツールではなく前提です。令和3年度の運営基準改正で電磁的記録による作成・保存は原則認められており、押印を求めないことも可能になっています。止まっている理由が「法令上ダメだと思っていた」であれば、そこはすでに解消されています。

そのうえで、進め方は「棚卸し→優先順位づけ→ツール選定→現場巻き込み→効果測定」の順に踏むこと。日次の記録という土台から着手し、溜まったデータを材料に出力側を自動化していく順番が、現場の混乱をもっとも小さくします。

紙をゼロにすることが目的ではありません。職員が書類に費やしている時間を、ケアに戻すことが目的です。その視点で優先順位を決めれば、小さく始めても確実に成果が積み上がります。

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