3モデルに同じ仕事を投げた実測|Opus 5・Fable 5・Sol
「ベンチマークのスコアは見たけれど、実際の仕事で使うとどうなのか」——モデルを選ぶとき、最後に残るのはこの疑問です。
結論から言うと、公式スコアの順位と、実務での費用の順位は一致しませんでした。同じ仕事を3つのモデルに投げて測ったところ、いちばん単価の高いモデルが、合計金額でいちばん安く終わりました。
株式会社Fyveは、日々の業務を実際にAIエージェントで動かしています。この記事では公式の数値を引用するのではなく、私が同じ条件で3モデルを走らせて記録した実測値をそのままお伝えします。
なぜベンチマークだけでは決められないのか
Anthropicは Claude Opus 5 の発表と同時に、GPT-5.6 Sol や Claude Fable 5 を含む横並びの比較表を公開しています。直接比較の材料が無いわけではありません。
それでも私は決めきれませんでした。理由は2つあります。
ひとつは、ベンチマークが採点できるのは正解が決まっている課題だけだという点です。資料のデザインや提案書の説得力に点数は付きません。3Dの作り込みをどこで止めるかも、モデルが自分で判断することです。
もうひとつは、あの表に時間と費用が載っていないことです。同じ課題を解けたとして、それが2分なのか17分なのか、1回あたりいくらかかるのかは正答率からは読み取れません。実際に支払うのはこちらなのに、判断材料に入っていないわけです。
実験の条件
公平に比べるため、条件をそろえました。
- 同じ依頼文を、一字一句同じまま3つのモデルに渡す
- 思考の深さ(effort)はすべて high に固定。既定値はモデルによって違うため、明示しないと不公平になります
- 空のフォルダから開始し、追加の指示は一切しない一発勝負
- 実行ログから時間・トークン・費用を記録
課題は実務に寄せた5つです。カフェのランディングページ、汚れた勤怠データからの月次レポート作成、営業提案スライド10枚、ドラッグで回せる3D商品ページ、そして稼働明細からの請求書一括生成。

データはわざと現場に近い状態にしました。日付の表記がばらばらで、金額に「円」が付いていて、キャンセル行や重複行や空行が混ざったCSV。顧客マスタに存在しないIDが1件だけ紛れている稼働明細。実際に出てくるデータは、だいたいこうなっているからです。
計測で最初につまずいた点
費用の計算では、危うく大きく誤るところでした。
各社とも使用量を「入力トークン」という同じ言葉で返してきますが、その中身が事業者によって違います。片方はキャッシュ分を含めず別枠で返し、もう片方はキャッシュ込みの総数を返します。後者で素直に足し算をすると、キャッシュ分を二重に数えてしまいます。
この違いに気づかず集計した最初の結果は、実態の約4倍でした。費用を比べるときは、必ず外から答え合わせできる数字を用意してください。今回は実行ツール自身が申告する金額と自作の計算を突き合わせ、全課題で一致することを確認しています。
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費用を計測した4課題の合計です。
- Claude Fable 5(出力単価 $50/M):7.0分 / $3.73 / 出力トークン 32,595
- GPT-5.6 Sol(出力単価 $30/M):19.5分 / $3.86 / 出力トークン 55,864
- Claude Opus 5(出力単価 $25/M):31.2分 / $7.70 / 出力トークン 124,183
出力単価だけを見れば Fable 5 が Opus 5 の2倍です。ところが合計金額は逆転しました。使った出力トークンが約4分の1だったため、単価2倍でも総額が半分以下に収まっています。
所要時間の差はさらに大きく、Fable 5 は Opus 5 の4.5倍の速さで同じ4課題を終えました。
課題ごとの内訳
合計だけでは見えないので、課題ごとにも並べておきます。
月次レポートの作成(汚れたCSVの集計)
- Fable 5:92秒 / $1.04
- Opus 5:111秒 / $0.57
- Sol:214秒 / $0.93
営業提案スライド10枚
- Fable 5:133秒 / $0.91
- Opus 5:213秒 / $0.85
- Sol:440秒 / $1.30
3D商品ページ
- Fable 5:112秒 / $0.90
- Opus 5:995秒 / $3.54
- Sol:272秒 / $0.81
請求書の一括生成
- Fable 5:82秒 / $0.87
- Opus 5:555秒 / $2.73
- Sol:245秒 / $0.82
ここで注目したいのが3D商品ページです。Opus 5 が約17分かけたのに対し、Fable 5 は2分弱で終えています。費用にして約4倍の開きです。

軽い課題(月次レポート・スライド)では3モデルとも1ドル前後に収まっており、差はほとんどありません。差が開くのは重い課題だけで、そこでの振る舞いがモデルごとにまったく違うわけです。
裏を返すと、軽い作業しかさせないのであれば、どのモデルを選んでも費用は大きく変わりません。モデル選びが金額に効いてくるのは、重い仕事を任せ始めてからです。
安く済んだのは、手を抜いたからではありません
速くて安い結果が出たときは、品質を落とした可能性を先に潰す必要があります。検証できる軸をすべて当てました。
- ランディングページ:指定した要件11項目をすべて充足。セクション数も指示どおり
- 月次レポート:正解の件数・合計・平均と完全一致。仕込んだ7種類のデータの汚れも全処理
- スライド:枚数・キー操作・外部読み込みゼロの要件をすべて充足
- 3D商品ページ:描画は正常、コンソールエラーはゼロ
- 請求書:金額が完全一致。顧客マスタに無い1件を除外し、その理由を行番号つきで報告
手を抜いたのではなく、同じ結果に到達するまでの手数が少なかったというのが実態でした。
同じ依頼から、3つの違うものが返ってくる
今回いちばん面白かったのは、要件をすべて満たしているのに、返ってくるものの性格が明確に分かれた点です。
- Claude Opus 5 は「盛る」。指示していない章を自主的に足し、細部まで作り込みます。重い課題ほど手を止めません
- Claude Fable 5 は「削る」。要件を過不足なく満たし、最短距離で終えます
- GPT-5.6 Sol は「整える」。言われた範囲を意匠で仕上げ、補足の資料を添えてきます
同じランディングページの課題で、生成されたファイルの大きさは3倍近い開きが出ました。請求書ツールの行数も、いちばん多いものといちばん少ないもので3倍以上違います。

3つとも要件を満たしているのに、成果物の量が3倍違う。これは品質の差ではなく、どこで止めるかの判断の差です。
そう捉えると、選び方が変わります。作り込みが価値になる仕事なら、多くかけた費用は仕上がりに返ってきます。要件を満たせば十分な仕事なら、そこに払う必要はありません。「どちらが優秀か」ではなく「この仕事で、どこまでやってほしいか」で決めるのが実務的です。
3つとも契約すべきか
実測を踏まえると、いきなり全部そろえる必要はないと考えています。
理由は先ほどの内訳です。軽い作業しかさせないなら、どのモデルでも費用は1ドル前後で大きく変わりません。複数を使い分ける価値が出るのは、重い仕事を任せ始めてからです。
順序としては、まず1つを主力に決めて日常業務を回し、費用と待ち時間の両方で不満が出た時点で2つ目を足す。この進め方が無駄が少ないと思います。使い分けの候補としては、こういう割り振りが実測と噛み合います。
- 速さと総額を優先するなら Fable 5:重い仕事でも短時間で終え、使用量が少ないので総額が伸びにくい
- 作り込みを求めるなら Opus 5:時間と費用はかかりますが、細部まで手が入ります
- 補足の説明を添えてほしいなら Sol:処理レポートや手順書を自主的に付けてきます
ただしこれは1回の実測にもとづく傾向で、自分の業務で同じ順位になるとは限りません。次に書く限界と合わせて読んでください。
この数字の限界
数字を出す以上、条件の粗も書いておきます。
まず各課題とも1回ずつしか走らせていません。ばらつきは測っていないため、「この課題を、この条件で、この日に走らせたらこうなった」以上のことは言えません。何度か回せば順位が入れ替わる課題もあると思います。
次に実行環境の違いです。Claude系の2モデルは同じツールで動かしていますが、GPT-5.6 Sol だけは別のツールを使っています。つまりモデル単体の効率差ではなく、ツールとモデルの組み合わせを比べた数字です。実務ではこの組み合わせ単位で選ぶので使える数字ではありますが、混同はしないでください。
もうひとつ、トークン数の比較には世代の壁があります。Anthropicは新しい世代のモデルで文章の区切り方を変えており、同じ文章から約30%多くトークンが出ると公式に明記しています。今回比較した2モデルは同じ世代なので比較は成立しますが、古い世代との単純比較には使えません。
料金面の詳細はこちらで
単価の構造や、バッチ処理・キャッシュを含めた実際の請求額の読み方は、こちらで整理しています。
Opus 5 と GPT-5.6 Sol の2者比較については、こちらもあわせてどうぞ。
まとめ
- 同じ5課題を3モデルに同一条件で投げた結果、出力単価がいちばん高い Claude Fable 5 が、合計金額でいちばん安く($3.73)、いちばん速かった(7.0分)
- 理由は使用量。出力トークンが Opus 5 の約4分の1だったため、単価2倍でも総額が半分以下になった
- 品質は検証できる全項目で満点。要件充足・正解一致・描画正常をすべて確認済み
- 3モデルは盛る・削る・整えると性格が分かれ、成果物の量が3倍違った。品質差ではなく「どこで止めるか」の差
- 費用を測るときは、事業者ごとにトークンの数え方が違う点に注意。素直に足すと数倍ずれる
ベンチマークの数字は出発点として有効ですが、自分の仕事に当てはまるとは限りません。主要な業務をひとつ選んで、実際に走らせて記録を取る。そこまでやって初めて、どのモデルにいくら払っているのかが見えてきます。
なお本記事の数値は2026年7月25日から26日にかけて、各課題1回ずつ実施した実測にもとづくものです。単価は改定されることがあり、実測値にもばらつきが出る点はご承知おきください。
3モデル実測|単価2倍が、いちばん安い

Opus 5・Fable 5・GPT-5.6 Sol に同じ仕事を5つ投げて全部測った記録(全32ページ)
出力単価は $25/$50/$30。ところが同じ4課題を走らせた合計費用は、単価が2倍の Fable 5 がいちばん安く、いちばん速いという結果でした。時間・トークン・費用の実測値と、3モデルの成果物そのものを全部載せています。
- 同じ5課題を3モデルに投げた実測——時間・トークン・費用の全記録
- 単価2倍のモデルが合計で最安になる理由(使う量が4分の1)
- 仕上がりの質で選ぶ仕事と、費用で選ぶ仕事の線引き
- 自分の環境で測るコピペ手順と、数字を4倍ズラす2つの罠
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