/doctor prompt-auditとは|指示書の老朽化診断
「AIへの指示書をきちんと書いたのに、前より言うことを聞かなくなった」「設定ファイルが増えすぎて、どれが今の正解なのか自分でも分からない」——AIに仕事を任せる仕組みを作り込んでいる人ほど、この感覚にぶつかります。
結論から言うと、AIへの指示書は書いた瞬間から古くなります。2026年9月25日公開の Claude Code 2.1.283 で追加された /doctor prompt-audit は、その「古さ」を人間の記憶ではなく機械に探させるためのコマンドです。
株式会社Fyveは、中小企業のAI活用を月額で伴走する立場から、この機能を「新しい便利コマンド」ではなく指示書の棚卸しを運用に組み込む合図として捉えています。なお私の手元は 2.1.209 でこの機能が入っていないため、本記事に「走らせたらこう出た」という話は一切含めていません。書いているのは、公式の記述から確実に言えることと、同じ現象を手作業で踏んだ私自身の実測です。
/doctor prompt-auditとは|指示書の「古さ」を報告するコマンド
/doctor prompt-audit は、Claude Code のセッション内で打つ点検コマンドです。公式CHANGELOGの 2.1.283(2026年9月25日)の項に、次のとおり記載されています。
Added
/doctor prompt-audit(also/checkup prompt-audit) to audit your CLAUDE.md files, skills, agents and commands for prompting patterns written for older models
この1文から確実に読み取れるのは、次の3点です。
- 走査の対象は4種類:CLAUDE.md・スキル・エージェント・コマンド
- 探しているのは「古いモデル向けに書かれた書き方」
/checkup prompt-auditは同義(/checkupは/doctorの別名)
3点目は公式ドキュメントのスラッシュコマンドのページでも裏が取れます。同ページには /doctor が v2.1.205 以降は組み込みコマンドではなくバンドルスキルとして提供されていること、checkup がその別名であることが明記されています。つまり「/doctor と /checkup のどちらで打っても同じ」であり、どちらかが新しい方というわけではありません。
何を検出すると書かれているか
検出内容については、CHANGELOG の 2.1.282 の項に、より踏み込んだ記述があります。
Improved
prompt-auditon Claude Code configuration: stale paths, stale commands and contradicting instruction files now lead the report, and thinking keywords that Claude Code documents are kept
ここから、報告の先頭に来るものが分かります。
検出されるもの | 具体的には | 報告での扱い |
|---|---|---|
古いパス(stale paths) | 存在しないファイル・フォルダを指した参照 | 報告の先頭 |
古いコマンド(stale commands) | 廃止・改名されたコマンドの記載 | 報告の先頭 |
矛盾する指示ファイル | 複数の指示書が互いに違うことを言っている状態 | 報告の先頭 |
古いモデル向けの書き方 | 昔のモデルに効かせるために書いた回り道の指定 | 本体の検出対象 |
あわせて「Claude Code が文書化している thinking キーワードは残す」とも書かれています。これは地味ですが重要な一文です。機械の側も「古い書き方」と「今も公式に有効な書き方」を区別しようとしているということであり、出てきた指摘を全部削ればよいわけではない、という含みでもあります。
この記述から「言えないこと」も先に書いておく
新機能の記事でいちばん事故が起きやすいのは、公式が言っていないことを補ってしまう箇所です。私が調べた範囲で確認できなかったことを、先に並べておきます。
- 自動で直してくれるかどうかは、公式には書かれていない。 CHANGELOG の動詞は「audit(監査する)」であり、「fix」や「apply」ではありません。実際、二次的な解説記事どうしでも記述が割れています。ある解説は「指摘はファイルと行を名指しするので、修正は自分で直接編集する」と書き、別の解説(2026年9月27日公開)は「警告するだけでなく修正を勧める」と書いています。どちらが正しいかを私は確認できていません。少なくとも、打てば設定ファイルが勝手に書き換わる、という前提で構えるべきではありません
- 走査スコープの細部も、公式には書かれていない。 どこまでのファイルを読み、何を読み飛ばすのかについて、公式ドキュメントに明示的な記載を見つけられませんでした。「秘密情報は読まない」といった安心材料を、私の側から補って書くことはしません
ここを曖昧にしたまま「AIがCLAUDE.mdを自動整理してくれる時代が来た」と書くのは簡単ですが、それは読者が実際に打ったときの期待を裏切ります。公式が書いたのは「指摘する」までです。
なぜ指示書は「腐る」のか|3つの経路
そもそも、なぜこういうコマンドが必要になったのでしょうか。指示書が古くなる経路は、私の実感では大きく3つあります。

経路1:パスがずれる
これがいちばん多く、いちばん気づきにくいものです。
昨日(2026年9月27日)、私は不要になったフォルダを1つ削除しました。それだけの作業のはずが、そのフォルダを指していた8か所の参照を付け替える作業が芋づる式に発生しました。
この非対称性が問題の本質です。消した側は自分が消したことを知っていますが、それを指していた側は何も言わずに古い場所を指し続けます。 エラーも出ません。AIはその指示書を読み、存在しない場所を前提に動こうとします。
経路2:指示同士が矛盾する
指示書は、事業が動くほど増えます。新しいルールを決めたら1枚足す、例外が出たらもう1枚足す——足すときは常に1枚ずつです。
ところが矛盾は「枚数」ではなく「枚数の組み合わせ」で増えます。 10枚なら45通り、30枚なら435通りの組み合わせがあり、そのどこかに食い違いが潜みます。人間の目で総当たりするのは、ある枚数を超えた時点で現実的ではなくなります。
しかも厄介なことに、どちらが正しいのかは機械には決められません。決められるのは「食い違っている」という指摘までで、どちらを残すかは書いた本人の判断です。
経路3:古いモデル向けの書き方が残る
これが今回のコマンドの主題です。AIの世代が変わると、以前は効いていた指定が不要になったり、かえって邪魔になったりします。冗長な思考の足場を毎回書かせる指定や、特定のキーワードで挙動を誘導する回り道が典型です。
この経路が厄介なのは、壊れていないことです。パスのように「実体が無い」と機械的に判定できるわけでもなく、矛盾のように突き合わせで見つかるわけでもありません。動いてはいるが、今のモデルには最適ではない——だから放置されます。

私の環境で測った|CLAUDE.md 134枚のうち、何枚が死んだ参照を抱えていたか
ここまでは公式の記述と一般論です。では、実際のところ指示書はどれくらい腐るのか。手元のバージョンが 2.1.283 未満でも、経路1(古いパス)だけは自分で数えられます。
私が普段AIに読ませている指示書一式を対象に、2026年9月28日時点で測った結果が次のとおりです。

数え方
やったことは単純です。
- 指示書(CLAUDE.md)をすべて集める
- 本文中でバッククォートに囲まれたファイルパスらしき表記を抜き出す(
.md.py.sh.jsonなど拡張子付きのもの) - それぞれについて、実体のファイルが存在するかを確認する
- 存在しなかったものを、甘い基準と厳しい基準の2通りで数える
2通りで数えたのは、1つの数字だけ出すと必ず盛るか過小に見せるかのどちらかになるからです。
出た数字
項目 | 値 |
|---|---|
走査した指示書(CLAUDE.md) | 134枚 |
書かれていたファイルパスの表記 | 783件 |
書かれたとおりには解決しなかった(厳しい基準=上限) | 222件(28%) |
同名のファイルがどこにも存在しなかった(甘い基準=下限) | 72件(9%) |
死んだ参照を1件以上抱えていた指示書 | 50枚 / 134枚 |
この数字の限界を、正直に書いておく
28%という数字を単独で掲げるのはフェアではありません。この数え方は、別の基準位置から書かれた相対パス表記も「解決しない」に含めてしまいます。逆に9%のほうは、同名のファイルがどこか別の場所にありさえすれば「生きている」と甘く判定しています。
つまり真の値は9%から28%のあいだにあり、私はそれ以上の精度を主張できません。
それでも、どちらの基準で数えても動かない事実が1つあります。134枚のうち50枚が、死んだ参照を1件以上抱えていたということです。3枚に1枚以上の割合です。そしてこれらはすべて、私自身が書いて、私自身がメンテナンスしているつもりだったファイルでした。
なぜ自分で測ることに意味があったか
公式が 2.1.282 の項で「古いパス・古いコマンド・矛盾する指示ファイルを報告の先頭に出すようにした」と書いたとき、私は「なぜその3つが先頭なのか」を考えました。おそらくそれが最も件数が多いからです。
そして自分の環境で数えてみたら、実際にそうでした。公式の設計判断の理由を、自分の手元のデータで追認できたことになります。機能の紹介を読むより、自分の環境を1回測るほうが納得が早いというのは、AI活用の支援をしていて何度も経験することです。
2.1.283に上げるまでの「つなぎ」|経路1だけは今日から測れる
バージョンをすぐに上げられない事情がある方もいると思います。私自身がそうです。その場合でも、上でやったこと——指示書の中のパス表記を全部抜いて、実体があるか確認する——は今日から実行できます。必要なのは指示書の一覧と、ファイルの存在確認だけです。
ただし、これで拾えるのは経路1だけです。
経路 | 自分で機械的に測れるか | 理由 |
|---|---|---|
1. 古いパス | 測れる | 実体の有無という客観的な事実で判定できる |
2. 矛盾する指示 | 測れない | 2枚の文意を読み比べないと「食い違い」と判定できない |
3. 古いモデル向けの書き方 | 測れない | 「今のモデルにとって不要か」の判断が要る |
ここが /doctor prompt-audit の値打ちです。 経路1は文字列処理で足りますが、経路2と経路3は文意の理解が要る。人間がやるには量が多すぎ、単純なスクリプトでは届かない——ちょうどその隙間を埋めるものとして出てきた機能だと私は理解しています。
/doctor prompt-auditの使い方|6つの手順
公式の記述と、私が指示書の棚卸しを手作業でやってきた経験から、次の順序を推奨します。
① バージョンを 2.1.283 以降にする
claude --version # 現在のバージョンを確認
claude update # 更新するここで 2.1.283 という数字を正確に押さえてください。それ未満ではコマンド自体が存在せず、「そんなコマンドはない」と返ってきます。私の手元が 2.1.209 だったように、毎日使っていてもバージョンは意外とずれています。
② 信頼しているプロジェクトの中で打つ
このコマンドは、そのプロジェクトに読み込まれる設定を対象にします。点検したい指示書が実際に読み込まれる場所で打つのが前提です。
/doctor prompt-audit
# /checkup prompt-audit でも同じ③ 出てきた指摘を3種に仕分ける
いきなり上から直し始めないでください。まず「古いパス」「矛盾」「古い書き方」の3つの箱に仕分けます。対処法がそれぞれ違うからです。二次的な解説によれば、指摘にはファイル名と行が付くとされています。仕分け自体は機械的に進められるはずです。
④ 矛盾は「どちらが正か」を決めて、片方を消す
ここが唯一、人間にしかできない作業です。そしていちばん多くの人が間違えるところでもあります。
矛盾を見つけると、つい「補足の注記を足して両立させる」方向に行きがちです。それをやると指示書はさらに増え、次の矛盾の種になります。正しい動作は逆で、どちらが今の正解かを決めて、片方を消すことです。棚卸しは増やす作業ではなく、減らす作業です。
⑤ 古いパスは実体を確認してから直す
指摘されたパスは、機械的に置換せず実体を1つずつ確認してください。私の実測で「9%〜28%」と幅が出たのがまさにこれで、指摘の中には「実は生きているが書き方が違うだけ」のものが混ざります。確認せずに一括で消すと、生きている参照まで落とすことになります。
⑥ 月1の棚卸しに組み込む
1回やって終わりにすると、また腐ります。指示書が腐るのは事業が動いているからこそであって、動きが止まらない限り再発します。
私は指示書の棚卸しを「思い出したらやる」から「決めた頻度でやる」に移すことを勧めています。月1回で十分です。むしろ頻度より、誰が見ても同じ手順で回ることのほうが重要です。
中小企業でこれが効く場面|指示書は、人が増えなくても増える
「うちはエンジニアの会社じゃないから関係ない」と思われるかもしれませんが、この問題はむしろ自分が止まると事業が止まる規模の会社で深刻になります。
理由は単純で、AIに仕事を任せようとすると、最初に作るものが指示書だからです。社内のルール、言葉づかい、やってはいけないこと、判断の基準——これらを文章にしてAIに渡すところから始まります。
そして指示書は、人が増えなくても増えます。業務が1つ増えれば1枚増え、例外が1つ出れば1枚増える。従業員数は変わらないのに、AIに渡している指示だけが積み上がっていきます。
私が現場でよく聞くのが「最近AIの精度が落ちた気がする」という相談です。モデルの問題だと思われていることが多いのですが、指示書のどこかが矛盾している、あるいは存在しない場所を指しているケースは珍しくありません。読ませているものが壊れていれば、出てくるものも壊れます。
CLAUDE.md をこれから整備する段階の方は、書き方そのものを先に押さえておくと後の棚卸しが軽くなります。
点検コマンドの棲み分け|/doctor・prompt-audit・/skill-doctor
Claude Code には点検系のコマンドが複数あり、名前が似ているため混同されがちです。見ている対象がそれぞれ違います。
コマンド | 点検する対象 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 環境 | インストール状態・設定・接続などが正常か |
| 指示書の中身 | 古いパス・矛盾・古いモデル向けの書き方 |
| スキルの使用実績 | 読み込まれたが使われなかったスキルとその費用 |
整理すると、/doctor が環境、prompt-audit が中身、/skill-doctor が費用対効果を見ます。同じ「点検」でも、返ってくる答えの種類がまったく違います。
ターミナルの claude doctor とセッション内の /doctor の違いについては、別記事で詳しく書いています。
スキルが増えすぎたときの間引き方は、こちらが対応します。
注意点と限界
- 自動修正を期待しない。 公式の記述は「監査する」までです。解説記事の間でも扱いが割れているため、実際に打って確かめるまでは「指摘が出るだけ」と想定しておくのが安全です
- 指摘を全部直すのが正解とは限らない。 公式自身が「Claude Code が文書化している thinking キーワードは残す」と書いています。機械の側も例外を持っており、人間の側にも判断の余地が残ります
- 矛盾の解消は「減らす」で行う。 注記を足して両立させると、指示書が増えて次の矛盾を生みます
- バージョン依存。 2.1.283 未満では使えません。更新できない事情があるなら、本記事の方法で経路1だけを先に潰しておくのが現実的です
- 本記事は実行結果を含まない。 繰り返しになりますが、私の環境は 2.1.209 でこの機能が入っていません。実際の出力の形式や件数については、公式の記述以上のことを書いていません
よくある質問
Q. /doctor prompt-audit はどのバージョンから使えますか?
公式CHANGELOGでは 2.1.283(2026年9月25日)の項に追加として記載されています。なお検出の優先順位に関する記述は、隣接する 2.1.282 の項にあります。バージョンの基準としては 2.1.283 を見ておくのが安全です。
Q. /checkup prompt-audit は別のコマンドですか?
同じものです。公式ドキュメントに checkup が /doctor の別名であることが明記されており、CHANGELOG でも両方が併記されています。打ちやすいほうを使って構いません。
Q. 走らせると CLAUDE.md が勝手に書き換わりますか?
公式には自動修正するとは書かれていません。 動詞は「audit(監査する)」です。ただし二次的な解説記事の間で記述が割れているため、断定はできません。心配であれば、変更履歴を残せる状態(バージョン管理下など)で試すことをお勧めします。
Q. 何を検出するのですか?
公式の記述から確認できるのは、①古いモデル向けに書かれた書き方 ②古いパス ③古いコマンド ④矛盾する指示ファイル の4種類です。このうち②③④は報告の先頭に来るとされています。それ以外の検出項目については、私は確認できていません。
Q. どのくらいの頻度で走らせるべきですか?
月1回を目安に、定例の棚卸しとして組み込むことを勧めます。ただしフォルダ構成を大きく変えた直後・指示書を何枚か消した直後は、頻度に関係なくその場で走らせる価値があります。私の実例のように、1枚消すだけで8か所の参照がずれることがあるためです。
Q. バージョンを上げられない場合、何ができますか?
本記事で紹介した方法で、古いパスだけは自分で数えられます。指示書の中のパス表記を抜き出し、実体の有無を確認するだけです。矛盾と古い書き方は拾えませんが、件数としていちばん多いのは古いパスである可能性が高く、効果は小さくありません。
Q. 指示書は何枚くらいが適正ですか?
枚数の正解はありません。ただ私の実測では、134枚まで増えた時点で50枚が死んだ参照を抱えていました。枚数そのものより、増えた分を点検する仕組みがあるかどうかが分かれ目だと考えています。
まとめ|指示書は書いて終わりではなく、腐る
/doctor prompt-audit は、Claude Code 2.1.283(2026年9月25日)で追加された、CLAUDE.md・スキル・エージェント・コマンドを対象に「古いモデル向けの書き方」を指摘するコマンドです。報告の先頭には、古いパス・古いコマンド・矛盾する指示ファイルが来ます。
この機能が示しているのは、コマンドが1つ増えたという事実以上に、AIへの指示書が「一度書けば終わるもの」ではなくなったという前提の変化です。事業が動けば指示書は増え、増えれば矛盾し、フォルダを1つ消せば参照がずれる——私の環境では、134枚のうち50枚が死んだ参照を抱えていました。
大事なのは、棚卸しを増やす作業ではなく減らす作業として回すこと、そして思い出したときではなく決めた頻度で回すことです。バージョンが追いついていなくても、古いパスを数えるところまでは今日から始められます。私たちは、こうした「AIに渡しているものを健全に保つ運用」までを含めてAI活用の支援を行っています。
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