pre-mortem skillとは|失敗の原因を先に洗い出す使い方
「新しいサービスを始める前に、うまくいかない理由を先に洗い出したい」「社内で心配はあるのに、誰も口にしない」——事業の案を前にして、こう感じたことのある方は多いはずです。
結論から言うと、pre-mortem skillは、案が「もう失敗した」と仮定して原因を出し、本物のリスク・杞憂・言い出せない不安に仕分けて、始める前に潰すものに担当と期限をつけるスキルです。私が架空の会社の新サービス案で試したところ、スキル名を言わなくても自動で選ばれ、147秒で本物のリスク8件、杞憂5件、言い出せない不安5件を出しました。
株式会社Fyveは、AI導入を支援する会社として、Claude Codeのスキルを入れて試した結果を記事にしています。この記事では、pre-mortem skillとは何か、入れ方、実際に新サービス案で試した結果、スキルを入れない場合との違い、安全面、向かない場面までを、試した範囲だけ書きます。
pre-mortem skillとは|「失敗した」と仮定して原因を先に洗い出すスキル
pre-mortem(プリモーテム)は、始める前に「このプロジェクトは失敗した」と仮定して、その原因をさかのぼって考える手法です。失敗した後に原因を調べる「ポストモーテム(事後検証)」の逆で、まだ手を打てるうちに弱点を見つけるのが狙いです。
pre-mortem skillは、この手法をClaude Codeのスキルにしたものです。Paweł Huryn氏がGitHubで公開している「PM Skills Marketplace」(phuryn/pm-skills)の、実行系のプラグイン(pm-execution)に入っています。ライセンスはMIT、スター数は2026年10月21日時点で27,246、フォークは2,819です。リポジトリ全体では69のスキルと42の手順(コマンド)があり、pre-mortemはそのうちの1本です。
説明書には、失敗の原因を次の3つの箱に分けると書かれています。

- Tigers(本物のリスク):証拠や筋道があり、放っておくと事業が転ぶもの。対策が必要です
- Paper Tigers(杞憂):怖く見えるが、起きにくいか、小さく済むもの。理由を書いて、関係者の認識をそろえます
- Elephants(言い出せない不安):本当に問題かは分からないが、誰も話題にしていないこと。始める前に調べます
本物のリスクは、さらに「始める前に解決(Launch-Blocking)」「始めてから30日以内に解決(Fast-Follow)」「様子を見る(Track)」に分けます。始める前に解決するものには、対策・担当・期限をつけます。
中身は、指示文が書かれたSKILL.md(約90行)1つです。計算ツールやスクリプトは付いていません。そのため、このスキルが得意なのは、数字の計算ではなく、論点を漏れなく出して仕分け、実行計画にすることです。
pre-mortem skillの使い道|仕事でどんなときに使うか
説明書では、製品の要求書(PRD)や発売計画が対象です。ただ、実際には次のような場面でも使えそうです(試したのは1つ目の「新サービスの案」だけで、あとは推測です)。
- 新サービスや新商品を、始める前に点検する(今回試した使い方)
- 新しい料金プランや、値上げの案を、出す前に点検する
- 新しい業務のやり方(システムの切り替えなど)を、全社に広げる前に点検する
- 社内で心配はあるのに誰も言い出せない案件について、論点を表に出す
会議の前に「この案が失敗するとしたら何か」を10分で出しておけば、会議の議論が「やるかやらないか」から「何を確かめてから進めるか」に変わります。

pre-mortem skillの入れ方|READMEの手順
READMEに書かれている入れ方は、Claude Codeならマーケットプレースからプラグインとして入れる方法です。
claude plugin marketplace add phuryn/pm-skills
claude plugin install pm-execution@pm-skillspre-mortemは、9つのプラグインのうち pm-execution に入っています。このプラグインには、pre-mortemのほかに、PRDの作成、OKR、スプリント計画、関係者の整理など16本のスキルと、11本のコマンドが入ります。コマンドは /pm-execution:pre-mortem のように呼べます。
スキル1本だけで使いたい場合は、リポジトリを取得して、pm-execution/skills/pre-mortem フォルダを、プロジェクトの .claude/skills/(または ~/.claude/skills/)にコピーします。私が試したときは、この方法で pre-mortem の1フォルダだけを入れました。マーケットプレース経由で全体を入れる方法は、普段の環境に影響するため使っていません。
スキルそのものの探し方と入れ方の全体像は、次の記事にまとめています。
Claude Codeにこう頼む|失敗する原因の洗い出し
スキルの名前を覚える必要はありません。私が出した依頼は、次の1つです。
work/idea/new-service.md に家具の定期メンテナンス便の新サービス案があります。もしこのサービスが失敗したとしたら、どんな原因が考えられますか。始める前に潰しておくべきことを洗い出してください。会社の概要は work/company.md です。ほかに、次のような頼み方が向いています。
- 「この値上げの案がもし失敗したら、原因は何だと思う?始める前に確かめることを教えて」
- 「この新プランの案を、杞憂と本物のリスクに分けて」
- 「この案で、みんなが心配しているのに口に出していないことは何?」
企画書や計画書のファイルを渡すほど、洗い出しが具体的になります。説明書にも、素材が多いほど精度が上がると書かれています。
試した結果|架空の会社の新サービス案で失敗の原因を洗い出した
試したのは、架空の会社(手作り家具を売る従業員12名の会社)です。新サービス案は「過去に買った家具を、職人が定期的に訪問して点検・ワックス塗りをする月額サービス」で、月額は2,980円・4,980円・1,500円の3プランです。企画書には、1回の訪問の原価、職人が月に回せる件数(約16件)、心配な点(職人不足、移動、解約、責任範囲、需要が未確認)が書いてあります。
発動:スキル名を言わなくても pre-mortem が選ばれた
1回目の依頼にはスキル名を入れていません。それでも Claude Code は pre-mortem を呼び出しました。かかった時間は147秒、使用量は入力が合計約8.5万トークン、出力が約1.7万トークン、費用は0.291ドル、ターン数は6でした。使ったモデルはSonnet 5.5です。なお、Web検索は使われませんでした。

企画書にはリリース日がありませんでした。スキルは、「最初の有料会員の家に職人が訪問する時点」をリリースとみなす、と断ってから進めました。
答え:本物のリスク8件、杞憂5件、言い出せない不安5件
最初に、企画書の数字から3つの気づきを出しました。
- スタンダード(月4,980円・年4回)は、訪問1回あたりに直すと約14,900円。98,000円のテーブルの手入れに年6万円弱かかる計算になる
- 職人の枠(月16件)いっぱいまで埋めても、スタンダードで約48組、年間の粗利は約160万円で、年商の約1.3%
- 企画書の粗利率(55%・63%)は訪問の直接費だけの計算で、決済手数料・日程調整・再訪・保険・集客の手間が入っていない
本物のリスク8件のうち、始める前に解決するものが6件です。価格が未検証で対象の母数も不明/採算の見積もりが不完全/職人の時間不足(繁忙期の10〜12月、土日への集中)/破損・事故の責任範囲と保険が未定/課金の設計が解約を呼ぶ/目的・成功基準・撤退基準がない、の6つです。
とくに価格については、「問い合わせをくれた人がいる」ことは「やり方が知りたい」であって「お金を払って頼みたい」とは別だ、という指摘が入りました。企画書の需要の根拠が、実は薄いことを突いています。

杞憂と、言い出せない不安は、次のように分かれました。

杞憂には「他社製品を診るかの線引き」が入りました。最初は自社で売った家具だけと決めれば済む、という理由です。企画書は心配点として挙げていましたが、スキルは「本物のリスク」ではなく「決めれば済む未決事項」と判断しています。一方、言い出せない不安には「月額という形が正しいのか」が入りました。企画書は月額を前提に書かれていて、1回ごとの有料点検や年払いとは比べられていない、という指摘です。
対策表:担当・期限つきで、会議にそのまま出せる形になった
始める前に解決する6件には、対策・担当(役職名)・期限をつけた表が、保存ファイルに入っていました。

たとえば、需要が未検証という1件目には、「11月5日に回収する既存のお客様向けアンケートに、1回あたりの価格での利用意向と、月額・年払い・1回ごとのどれがよいかを足す」「受注データから対象の母数(購入1〜5年・テーブル所有・圏内)を数える」という対策が、10月23日と10月30日の期限つきで出ました。さらに、11月13日に中間のGo/No-Go(進めるか止めるかの判断)を置き、通ったら閑散期の2027年1月中旬に、最大20組のパイロットを始める、という流れまで書かれています。
ただし、期限や、パイロットの合格ライン(申込15組以上、継続率80%以上など)は、スキルが「叩き台」として置いたものです。企画書に根拠があるわけではありません。自分の会社の事情に合わせて直す前提で使ってください。
正解との比べ方:企画書の心配点をどこまで拾ったか
企画書には、私が心配点として次の5つを入れておきました。スキルがどう扱ったかを並べます。
- 職人不足・制作との兼務:本物のリスクとして拾った(繁忙期の10〜12月、11月のダイニングチェア発売、土日への集中まで)
- 需要がまだ確かめられていない:最重要として拾い、11月5日のアンケートへの追加を、期限つきで指示した
- 解約が多いと利益が出ない:拾った。ライト(年2回の訪問)は、契約から初回の訪問まで最長約6か月、払うだけになる可能性がある、と構造から指摘した
- 家具が破損した場合の責任範囲:拾った。保険、免責、補修の範囲、訪問前の写真と同意書まで対策に入れた
- 訪問エリアが広がると移動時間で採算が崩れる:様子見(Track)として拾った
5つとも拾いました。ただ、気になった点が1つあります。企画書は、1回の訪問を「移動込みで約2.5時間」と見積もり、訪問は「店舗から車で1時間圏内」に限るとしています。片道1時間なら、移動だけで2時間かかり、現場の作業は30分ほどしか残りません。スキルは「2.5時間の根拠が実測でない」とは指摘しましたが、この矛盾そのものには気づきませんでした。
スキルなしとの違い|同じ依頼を、スキルを入れない状態で試した
同じ依頼文を、スキルを入れていない別のフォルダで1回だけ実行しました(同じモデル・同じ材料)。実行の記録に、スキルを呼び出した形跡がないことも確かめています。1回ずつの結果なので、毎回この差になるとは限りません。

スキルありは、時間が約2.8倍、費用が約2.6倍、入力トークンが約2倍、出力トークンが約2.8倍でした。
スキルなしの答えも、思ったより使えるものでした。失敗の原因を、可能性と致命度の高い順に6件出し、それぞれに「潰し方」を書き、最後に進め方の表とアンケートの設計案までつけました。そのうえ、スキルありにはなかった指摘がありました。
- 「1時間圏内で2.5時間」の矛盾を指摘した。片道1時間なら作業は30分で、家具6点なら乾燥待ちも含めて3.5〜4時間かかるはずだとして、4時間で再計算し、粗利率が約55%から約38%に下がると示した
- ワックスの塗り直しは年1〜2回が目安と言われ、年4回の訪問は多すぎる可能性がある、と解約理由の「あまり汚れない」に結びつけた
- 収益より、お客様との関係づくりが狙いなら、判断基準も変わる、と目的を問い直した
一方、スキルなしの答えにはないものが、スキルありにはありました。杞憂と言い出せない不安を分けて出すこと、始める前に解決するものを選んで担当と期限つきの表にすること、Go/No-Goの日付とパイロットの合格ライン、そして保存されたファイルです。スキルなしは「保存もできます」と提案するだけでした。
私の見立てでは、次のように使い分けるのが現実的です。
- 「失敗しそうな原因を洗い出したい」だけなら、スキルなしでも足りる。数字の矛盾の突っ込みは、むしろスキルなしのほうが鋭かった
- 社内で「誰が、いつまでに、何を確かめるか」まで決めて、会議に出せるファイルで残したいなら、スキルあり
つまり、このスキルは新しい分析の力を足すというより、洗い出しを「仕分け」と「実行計画」の形に整える型です。型を自分で毎回指示できるなら、スキルなしでも近いものは出せます。
founder-skillとの違い|同じ企画書で別のスキルも試した
同じ企画書(家具の定期メンテナンス便)で、私は founder-skill の損益計算(founder-cfo)も試しています。2つは似ているようで、答えている問いが違います。
- founder-cfo:「この値段で黒字になるか」を、Pythonの計算ツールで出します。1年目の月ごとの収支表、損益分岐の契約者数、必要な資金。固定費などは仮置きして計算します。73秒・0.227ドルでした
- pre-mortem:「何が原因で失敗しそうか」を、文章で仕分けます。数字は計算せず、企画書の数字から概算するだけです。担当・期限・Go/No-Goまで出します。147秒・0.291ドルでした
数字を動かして「値段を上げたら黒字か」を比べたいなら founder-cfo、「何を確かめてから始めるか」を決めたいなら pre-mortem です。どちらも、需要がまだ確かめられていないことを、最大の弱点として挙げました。
中身の安全確認|何を外に送り、何を実行するか
入れる前に、README、pm-executionのREADMEとplugin.json、pre-mortemのSKILL.md、対応するコマンドの説明ファイルを読みました。
- 外部への送信:スクリプトはなく、通信のコードもありません。ただし、SKILL.mdに「必要なら、競合や市場を調べるためにWeb検索を使う」とあります。使われると、調べたい語がWeb検索に送られます。今回の実行では、Web検索は0回でした
- 実行するもの:コマンド実行の指示はありません。
allowed-toolsの指定とフック(自動で動く仕掛け)もありません。pm-executionの中のファイルは、説明書きと設定ファイルだけです - 認証情報:APIキーは不要で、鍵を読む処理もありません
- 書き込み先:最後に
PreMortem-製品名-日付.mdというファイルを保存する指示があり、実際に作業フォルダに保存されました
リポジトリ全体の69スキルのうち、私が読んだのは pre-mortem と、同じプラグインの構成だけです。ほかのスキルの安全性は確かめていません。なお、事業案の文章は、Claude Codeを使うときと同じく、モデルに送られます。本物の社外秘の数字を入れるかどうかは、普段のAI利用の方針に合わせて判断してください。
向かない場面・試せなかったこと
- 数字の計算はしません。出てくる数字は、企画書と会社概要からの概算です。採算を数字で確かめたいなら、別のやり方が要ります
- 期限・担当・合格ラインは叩き台です。自社の事情で置き直す前提です
- 見積もりの矛盾は見逃すことがあります。今回は「2.5時間」と「1時間圏内」の矛盾を拾えませんでした。出てきた答えを、自分の目でも点検してください
- 需要の有無は決められません。需要が未確認だと指摘するところまでで、買う人がいるかは、アンケートや事前申込みで確かめる必要があります
- PRD(製品要求書)を前提にした作りです。ふつうの企画書でも動きましたが、説明書の想定は製品の発売計画です
今回、試していないものは次のとおりです。
- コマンド版(
/pm-execution:pre-mortem):スキルだけ入れたため、動かしていません - PRDそのものを渡した場合、Web検索を使う場合
- マーケットプレース経由での導入と、pm-skillsの残り68本のスキル
まとめ|pre-mortem skillを使う前のチェックリスト
- □ 使い道は「始める前に、案が失敗する原因を洗い出し、本物のリスク・杞憂・言い出せない不安に仕分ける」ことだと理解した
- □ 入れ方は
claude plugin marketplace add phuryn/pm-skillsとclaude plugin install pm-execution@pm-skills、または pre-mortem のフォルダを.claude/skills/にコピーする方法のどちらか - □ 依頼は「この新サービス案がもし失敗したら、どんな原因が考えられる?始める前に潰しておくべきことを洗い出して」のように日本語でよい
- □ 企画書や計画書のファイルを渡すほど、洗い出しが具体的になる
- □ 担当・期限・合格ラインはスキルが置いた叩き台。自社の事情で置き直す
- □ 数字の計算はしない。数字の矛盾は見逃すことがあるので、自分でも点検する
- □ 洗い出すだけならスキルなしでも足りる。仕分けて、担当と期限つきで、ファイルに残したいときにスキルが効く
- □ 外部への送信や危険なコマンド実行は見つからなかった。ただしWeb検索を使う指示があり、使われると語が外に出る
- □ スター数など一覧の数字は2026年10月21日時点のもの
ほかのスキルをまとめて見たい方は、次の記事も参考にしてください。
「事業の判断」のスキルは、ほかに2本を同じ架空の会社の材料で試しています。
仕事でAIを使う人が「絶対に」知っておくべき Claude Codeスキル TOP10

31本を実際に入れて、スキルなしと比べた結果つき(全28ページ)
スキルを入れても、Claude が急に賢くなるわけではありませんでした。31本を架空の会社の仕事で試し、同じ依頼をスキルなしでも検証して比べたうえで、導入する価値があった10本を仕事別にまとめています。
- 文章・スライド・図・数字・調べもの・契約書など、仕事別の10本
- 1本ごとに、スキルなしと比べた時間・費用・出来
- 実物の画面と、Claude Code にそのまま貼れる頼み方
- 外した5本の理由と、入れる前に確かめる4つのこと
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