founder-skillとは|新事業の値段と採算を検証するスキル
「新しいサービスを思いついたけれど、この値段で本当に黒字になるのか」「始める前に、赤字にならないかだけ先に確かめたい」——事業の案を前にして、誰もが一度はこの不安を抱えます。
結論から言うと、founder-skillは新しい事業・サービスの案を、始める前に数字と観点で検証する11本のスキルの集まりです。値段と採算を調べるなら、その中の founder-cfo(損益計算)が中心になります。私が架空の会社の新サービス案で試したところ、スキル名を言わなくても自動で選ばれ、73秒で「今の値段のままでは1年目は赤字」という答えを返しました。
株式会社Fyveは、AI導入を支援する会社として、Claude Codeのスキルを入れて試した結果を記事にしています。この記事では、founder-skillとは何か、入れ方、実際に新サービス案の採算を検証させた結果、そして安全面と向かない場面まで、試した範囲だけを書きます。
founder-skillとは|事業の案を始める前に検証する11本のスキル
founder-skillは、Jake Schincariol氏がGitHubで公開しているClaude Code用のスキル集です。ライセンスはMIT、サインアップもAPIキーも不要と説明書にあります。リポジトリの作成は2026年10月7日で、公開されたばかりのものです。スター数は2026年10月21日時点で1,217、版はv1.0です。
中身は次の11本で、前のスキルが書いた結果を次のスキルが読む「順番に使う」作りです。ただし、1本だけ単独で使うこともできます。

- board:3人の取締役が事業案を採点し、投資する・条件付き・見送りの票を入れる
- competitors:競合と代わりになるものを、公開情報から調べる
- consumer:買い手のエージェントを標準100人作り、誰が買って誰が買わないかを集計する
- pricing:買い手の答えから、受け入れられる価格帯を出す
- offer:特典や保証を組み立てる
- cfo:1件あたりの利益、損益分岐、1年目の月ごとの収支、必要な資金を計算する
- marketing/brand/ops/launch:集客計画、名前、仕入れや運営、公開準備
- plan:全部をまとめて事業計画にし、数字から「黒字/まだ/未完」を判定する
説明書には、取締役会の3人は、公刊された経営書・伝記3冊に書かれた考え方を要約して当てたもので、著者本人ではないと明記されています。買い手100人も「実在の顧客ではなくシミュレーション」で、予測ではなく反対意見や言葉づかいを見つけるための道具、という位置づけです。
founder-skillの入れ方|READMEの手順
READMEに書かれている入れ方は2通りです。Claude Codeならプラグインとして入れるのが簡単です。
/plugin marketplace add Jakeschincariol/founder-skill
/plugin install founder-skill@founder-skillプラグインで入れると、スキルは /founder-skill:founder-board のように名前の前に「founder-skill:」が付きます。付けずに /founder-board で呼びたいときは、リポジトリを取得してスキルのフォルダをコピーします。
git clone https://github.com/Jakeschincariol/founder-skill.git
cp -r founder-skill/skills/founder-* ~/.claude/skills/特定のプロジェクトだけで使うなら、コピー先を ~/.claude/skills/ ではなくプロジェクトの .claude/skills/ にします。計算用のPythonは3.8以上が必要で、追加でインストールするものはありません。私が試したときは、プロジェクトの .claude/skills/ に11本をコピーする方法で入れました。
スキルそのものの探し方と入れ方の全体像は、次の記事にまとめています。

Claude Codeにこう頼む|値段と採算の検証
スキルの名前を覚える必要はありません。私が出した依頼は、次の1つです。
work/idea/new-service.md に家具の定期メンテナンス便の新サービス案があります。この値段で採算が取れるのか、赤字にならないかを検証して、続けるかやめるかの判断材料をください。会社の概要は work/company.md です。ほかに、次のような頼み方が向いています。
- 「この新サービス案、月額を5,980円にしたら黒字になるか計算して」
- 「この事業案について、赤字になる条件を洗い出して」
- 「始める前に必要な資金はいくらか出して」
こう頼んだ後に、企画書にない数字(固定費や初期費用など)を聞かれたら、分かる範囲で答えてください。分からないものは「分からない」と伝えれば、仮の数字を置いて計算し、仮置きだと明記する作りになっています。
試した結果|架空の会社の新サービス案で採算を検証
試したのは、架空の会社(手作り家具を売る従業員12名の会社)です。新サービス案は「過去に買った家具を、職人が定期的に訪問して点検・ワックス塗りをする月額サービス」で、月額は2,980円・4,980円・1,500円の3プランです。企画書には、1回の訪問の原価(約6,000円)、材料費、1人の職人が月に回せる件数(約16件)、心配な点が書いてあります。
発動:スキル名を言わなくても founder-cfo が選ばれた
1回目の依頼にはスキル名を入れていません。それでも Claude Code は founder-cfo を呼び出しました。かかった時間は73秒、使用量は入力が合計約25万トークン(そのほとんどはキャッシュの読み込み)、出力が約8,500トークン、費用は0.227ドル、ターン数は9でした。使ったモデルはSonnet 5.5です。

答え:月4,980円のままだと1年目は約25万円の赤字
月額4,980円のスタンダードプランについて、返ってきた数字は次のとおりです(金額は円、架空の会社の企画案に対する計算です)。
- 1契約者あたりの月の利益(貢献利益):2,601円(52%)
- 損益分岐:31契約者(職人の枠である48契約者の65%)
- 40契約者に届いた月の利益率:12%
- 1年目の営業損益:-252,528円。初期費用45万円を含めると-702,528円、必要な資金は約757,000円
企画書は粗利率を「約55%」としていましたが、スキルは「これは決済手数料を引く前の数字で、引くと52%」と指摘しました。企画書の数字をそのまま使わず、引き直している点は役に立ちました。
続いて、黒字にする方法を、ツールで再計算して示しました。

月額を5,980円にすると損益分岐は31人から23人に下がり、1年目は+19,472円になります。固定費を半分にすると20人で黒字です。一方、訪問をまとめて交通費を半分にしても、1年目は-184,528円のままでした。「どれが効くか」を数字で並べて見られるのが、このスキルのいちばんの価値だと感じました。
もう1つ、数字より大事な指摘がありました。職人の枠がいっぱいの48契約者でも、月の利益は約44,800円(年約54万円)にとどまる、という点です。年商1億円台の会社にとって小さな額であり、しかも訪問に使う月40時間は、その時間で作れたはずの家具の売上(特に繁忙期)を削ります。スキルは、これを収益事業というより既存のお客様との関係づくりを狙う施策と見るほうが妥当、と書きました。

企画書にない数字は、仮置きして計算される
ここは気をつけてほしい点です。固定費(月8万円)、初期費用(45万円)、決済手数料(3.6%)、契約者の増え方(1年目で3人から40人)は、どれも企画書に書いていませんでした。スキルはこれらを「私が仮置きした数字」と書き出し、計算結果のファイルにも各行に「(推定)」と付けました。仮置きだとは分かるのですが、答えの数字は、この仮置きに大きく左右されます。
今回は質問に答えられない形(claude -p)で実行したので、スキルは聞かずに仮置きしました。対話で使えば、固定費などを聞かれるはずです(SKILL.mdに「ユーザーにしか分からないものは聞く」とあります)。とはいえ、仮置きの数字を実際の見積もりに置き換えて、もう一度計算させる使い方が前提です。
正解との比べ方:企画書の心配点をどこまで拾ったか
企画書には、私が心配点として次の5つを入れておきました。スキルがどう扱ったかを並べます。
- 職人不足・制作との兼務:訪問の月40時間の機会費用が計算に入っていないと指摘した
- 需要がまだ確かめられていない:最大の弱点として冒頭に書き、既存のお客様向けアンケートに「4,980円・5,980円・2,980円で入るか」の項目を足すよう提案した
- 訪問エリアが広がると採算が崩れる:交通費を半分にした場合を試算した
- 解約が多いと利益が出ない:計算には入っていない。入力欄に解約率がなく、契約者数の推移に含める形になる
- 家具が破損した場合の責任範囲:賠償責任保険を固定費に仮置きしたが、責任の線引きそのものには触れなかった
5つのうち、数字に直せるものは拾い、数字に直しにくい「解約」と「責任範囲」は弱い、という結果です。
表示は英語・ドル前提で、月額制は読み替えが必要
損益を計算するPythonのツールは、日次の販売数とドル建てを前提にしています。そのため、月額制の新サービスを入れたところ、結果の表は「$4,980.00」「a day」と英語・ドルで出ました。スキルは「1日を1か月と読み替えて入力した」と答えの冒頭に断り、「$は円と読む」と注記していました。計算そのものは合っていましたが、結果の表をそのまま人に見せるなら、手直しが要ります。

スキルなしとの違い|同じ依頼を、スキルを入れない状態で試した
同じ依頼文を、スキルを入れていない別のフォルダで1回だけ実行しました(同じモデル・同じ材料)。条件をそろえたつもりですが、1回ずつの結果なので、毎回この差になるとは限りません。
スキルあり | スキルなし | |
|---|---|---|
時間 | 73秒 | 40秒 |
費用 | 0.227ドル | 0.096ドル |
入力トークン(キャッシュ含む合計) | 約25.1万 | 約4.2万 |
出力トークン | 約8,500 | 約4,500 |
ターン数 | 9 | 3 |
残ったファイル | 入力・結果・出典の4ファイル | なし(画面の答えだけ) |
スキルありは、時間が約1.8倍、費用が約2.4倍、入力トークンが約6倍でした。そのぶん、1年目の月ごとの収支表、損益分岐の契約者数(31人)、必要な資金(約757,000円)、値上げや固定費半減の再計算が、ファイルとして残りました。「5,980円にしたら」「固定費を半分にしたら」と数字を動かしてやり直せる点が、スキルありの強みです。
一方、スキルなしの答えも、思ったより使えるものでした。企画書の粗利率が税込の売上で計算されている点を、税抜に直して指摘し(スタンダードは約48%)、「1時間圏内だと移動で往復2時間かかり、2.5時間の訪問では現場の作業が30分ほどしか残らない」という見積もりの甘さにも気づいていました。契約初月に訪問すると原価が売上を上回る、という早期解約の指摘も、スキルありの答えにはなかったものです。
逆に、スキルありの答えは消費税を引かない価格のまま計算したため、利益率は52%と、スキルなし(48%)より甘い数字になりました。どちらの答えも、固定費などを自分で仮置きしている点は同じです。
私の見立てでは、次のように使い分けるのが現実的です。
- とりあえず「やるべきか」の見当をつけたいだけなら、スキルなしでも足りる
- 数字を動かして何度も比べたい、結果をファイルで残して人に見せたいなら、スキルあり
中身の安全確認|何を外に送り、何を実行するか
入れる前に、README、スキルの説明ファイル、Pythonのスクリプトを読みました。
- 外部への送信:計算用のPython4本は標準ライブラリだけで書かれ、各ファイルの冒頭に「ネットワークを使わない」とあります。通信のコードも見つかりませんでした
- 実行するもの:スクリプトを
python3で呼ぶだけで、ほかのコマンド実行は見つかりませんでした。allowed-toolsの指定とフック(自動で動く仕掛け)はありません - 認証情報:APIキーは不要で、鍵を読む処理もありません
- 書き込み先:プロジェクトの
founder/フォルダに結果のファイルを作ります
注意が要るのは、通信のコードではなく「使う量」です。boardは3人、consumerは買い手ごとにサブエージェント(Claudeが別に動かす作業役)を呼びます。説明書には標準で100回の呼び出し、軽く試す --quick で20回と書かれています。私が試したのは損益計算だけで、これらの使用量は測っていません。competitorsは公開情報の調べ物をするスキルで、「公開情報だけ・スクレイピングしない」と書かれていますが、こちらも試していません。
なお、事業案の文章は、Claude Codeを使うときと同じく、モデルに送られます。本物の社外秘の数字を入れるかどうかは、普段のAI利用の方針に合わせて判断してください。
向かない場面・試せなかったこと
- 需要の有無は決められません。説明書も、買い手100人は「シミュレーションで、予測ではない」と書いています。計算できるのは「この数字なら黒字か」までで、買う人がいるかは別に確かめる必要があります
- 解約と責任の線引きは弱いです。今回の結果では、解約は別立てで計算されず、責任範囲は数字に直されませんでした
- 日本の月額サービスをそのまま入れると表示が合いません。英語・ドル・日次の前提のためです
- 公開されたばかりで、版はv1.0です。今後の更新で変わる可能性があります
- 税務・法務・資金調達の判断には使えません。説明書にも、会計士などへの確認が必要と書いてあります
今回、試していないものは次のとおりです。
- board(取締役会):サブエージェントを起動する実行が、私の環境の安全機能で止められたため
- consumer・pricing・offer(買い手100人、価格帯、特典)、competitors・marketing・brand・ops・launch・plan:説明書の記載のみで、実際には動かしていません
まとめ|founder-skillを使う前のチェックリスト
- □ 使い道は「始める前に、この値段で黒字になるかを数字で見る」ことだと理解した
- □ 入れ方は
/plugin marketplace add Jakeschincariol/founder-skillか、cp -r founder-skill/skills/founder-* ~/.claude/skills/のどちらか - □ 依頼は「この新サービス案の値段で採算が取れるか、赤字にならないか検証して」のように日本語でよい
- □ 企画書にない固定費や初期費用は、仮置きで計算される。実際の見積もりに置き換えて再計算する
- □ 結果の表は英語・ドル表記になる場合がある。人に見せる前に直す
- □ 一度きりの見当づけならスキルなしでも足りる。数字を動かして比べ、ファイルで残すときにスキルが効く
- □ 買う人がいるかは、このスキルでは決まらない。アンケートや事前申込みで確かめる
- □ 外部への送信や危険なコマンド実行は見つからなかった。ただし、boardやconsumerは呼び出し回数が多く、使用量が増える
- □ スター数など一覧の数字は2026年10月21日時点のもの。v1.0で公開されたばかりなので、更新を確認する
ほかのスキルをまとめて見たい方は、次の記事も参考にしてください。
「事業の判断」のスキルは、ほかに2本を同じ架空の会社の材料で試しています。
仕事でAIを使う人が「絶対に」知っておくべき Claude Codeスキル TOP10

31本を実際に入れて、スキルなしと比べた結果つき(全28ページ)
スキルを入れても、Claude が急に賢くなるわけではありませんでした。31本を架空の会社の仕事で試し、同じ依頼をスキルなしでも検証して比べたうえで、導入する価値があった10本を仕事別にまとめています。
- 文章・スライド・図・数字・調べもの・契約書など、仕事別の10本
- 1本ごとに、スキルなしと比べた時間・費用・出来
- 実物の画面と、Claude Code にそのまま貼れる頼み方
- 外した5本の理由と、入れる前に確かめる4つのこと
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