ChatGPTのChat(チャット)とWork(ワーク)の違い|Codexとの使い分けと実測比較
1つになったChatGPTアプリを開いたら「Chat」「Work」「Codex」という3つのモードが並んでいて、自社の仕事ではどれを使えばいいのか分からない——2026年7月9日のアプリ一本化のあと、こうした戸惑いをよく耳にします。名前だけ見ても、何がどう違うのかは掴みにくいはずです。
結論から言うと、ChatとWork(チャットとワーク)の違いは、作れるものではなく進め方です。どちらも表やスライドのファイルまで作れます。その場で一気に仕上げるのがChat、仕事を手順に分けて時間をかけて進めるのがWorkで、Workにはメールなどの出来事をきっかけに動く機能と、ログインが必要なサイトを操作する機能があります。コードや正確さの要る精密な作業はCodexの担当です。3つとも1つのアプリの中で切り替えて使え、無料プランを含む全プランで使えます。
株式会社Fyveは、中小企業に月額でAI活用を伴走する事業を通じて、新しいツールが出るたびに「どの機能を・どの場面で使うか」の交通整理を代行してきました。私も今回の統一アプリを一通り触っています。この記事では専門用語ではなく「どんなときに、どのモードを選ぶか」という業務目線で、Chat/Work/Codexの使い分けを整理します。
ChatとWorkの違い|同じ指示を両方に投げて比べた
私たちは2026年8月30日に、まったく同じ指示文をWorkとChatに1回ずつ投げ、かかった時間と返ってきたものを比べました。
仕事 | Work | Chat | 返ってきたもの |
|---|---|---|---|
3社の見積もりの比較表 | 6分12秒 | 1分47秒 | 両方ともExcelファイル(xlsx) |
提案スライド10枚の草案 | 7分57秒 | 1分57秒 | 両方ともPowerPointファイル(pptx) |
アンケート集計の報告書 | 12分36秒 | 1分25秒 | 両方ともWordファイル(docx) |
3組とも、Chatも指示どおりのファイルを返し、求めた条件をすべて満たしました。しかもChatのほうが3.5〜8.9倍速く、仕事が複雑になるほど差が開きました。「Chatは会話、Workは成果物」という分け方は、実際の動きとは合っていません。
差が出たのは細部です。Workは慎重で、計算の前提があいまいな箇所や集計の限界を自分から書き添え、表には条件付き書式まで入れてきました。Chatは実用的で、差額の内訳や報告書の構成・要約はChatのほうが整っていました。どちらが上というより、性格の違いです。
では、Workにしかできないことは何か。確認できたのは次の2つです。
- 出来事をきっかけに動く:GmailやSlackなどで何かが起きたら、自動で仕事を始める(無料プラン・Goプランは対象外)
- ログインが必要なサイトを操作する:2026年8月の更新で加わった機能
なお「決まった時刻に定期実行する」機能はWork専用ではありません。通常のChatからも定期実行のタスクを作れることを確認しています。
つまり、1回の指示で終わる資料づくりならChatで足ります。Workを選ぶのは、出来事をきっかけに動かしたいとき、ログインが必要なサイトを操作させたいとき、そして仕上がりを待たずに別の仕事をしていたいときです。
※比べたのは1回の指示で終わる仕事だけで、Workの本領である「出来事をきっかけにした自動実行」や「サイト操作」は比べていません。また、無料プランのChatで同じようにファイルが作れるかは確認していません。ログインが必要なサイトの操作については、次の記事で詳しく解説しています。
1つのアプリに3つのモード|ChatGPT統一アプリとは
まず前提を押さえます。2026年7月9日、それまで別々だった開発向けツール「Codex」がChatGPTのデスクトップアプリに統合されました(macOS・Windows対応)。この新しいデスクトップアプリの中に、「Chat(会話)」「Work(成果物づくり)」「Codex(精密作業)」という3つのモード(ビュー=表示画面のこと)が同居しています。
重要なのは、この統一アプリが無料プランを含む全プランで提供される点です。有料でないと触れない特別なアプリではなく、誰でも1つのアプリの中で3つのモードを試せます。すでにCodexアプリを使っている場合も、通常のアップデートでそのまま新しいアプリに切り替わり、これまでのプロジェクト・設定・作業内容はそのまま引き継がれます。乗り換えの手間を心配する必要はありません。
使い方に合わせた調整もできます。ふだんコード作業しかしない開発寄りの方は、Codexを「既定のビュー(アプリを開いたとき最初に出る画面)」に設定できます。macOSでは、従来のCodexアプリのアイコンを残しておく選択も可能です。つまり「全員が同じ入口を強制される」わけではなく、自分の主戦場に合わせて入口を選べる設計になっています。
7月9日にどう一本化されたのか、その全体像を先に知りたい方は、次の記事にまとめています。

「Chat」はどんな時に使うか|会話・相談・調べ物
Chatは、これまでのChatGPTそのものです。その場で答えが返ってくる、対話型のモードだと考えてください。質問を投げて、返ってきた答えを見て、また質問を重ねる——という往復のやり取りに向いています。
中小企業の実務では、次のような場面がChatの出番です。
- 調べ物・下調べ:「この制度の概要を分かりやすく」「業界の一般的な相場感は」といった質問への回答
- 文章の相談・壁打ち:メールの言い回し、断り方の角の立たない表現、企画のアイデア出し
- 短い下書き:数行のお知らせ文、SNS投稿の草案、箇条書きの整理
- その場で完結する軽い作業:翻訳、要約、言い換え、簡単な計算の確認
Chatの特徴は「速く・気軽に・何度でも」やり取りできることです。答えがすぐ返ってくるので、思いついた疑問をその場でぶつけて、対話しながら考えを整理する使い方に向いています。表やスライドのファイルもChatで作れます。「仕上がりを待たずに別の仕事をしていたい」「込み入った作業を手順に分けて任せたい」という場合は、次に紹介するWorkが向いています。
「Work」はどんな時に使うか|成果物まで仕上げたい時
Workは、7月9日に登場した新しいエージェント(自律的に作業を進めるAI)です。Chatとの一番の違いは進め方で、仕事を小さな手順に分けて、時間をかけて自律的に進めます。
使い方はこうです。「〇〇という成果物を作って」という目標(アウトカム)を伝えると、Workは複数のアプリやワークフローを横断して必要な情報を集め、作業を小さなステップに分解し、自律的に進めます。公式の説明では大きな仕事なら数時間かけて進め、私たちが試した資料づくり3件は6〜13分で終わりました。そして最終的に、次のような「そのまま使える形」で成果を返してきます。
- 表計算シート(集計表・比較表・一覧など)
- スライド資料(提案・報告のたたき台)
- ドキュメント(文書・マニュアルの下書き)
- 共有できる簡単なWebアプリ
中小企業の場面に当てはめると、「複数の見積もりを比較する表を作る」「提案スライドの草案をひととおり組む」「アンケート結果を集計してレポートにする」といった、これまで人が半日かけていた資料づくりがWorkの守備範囲です。ただし、先の比較のとおり、この3つはChatでも同じようにファイルまで作れました。Workを選ぶ理由は成果物の違いではなく、待たずに任せられることです。WorkはGPT-5.6を土台にしており、Codexの技術も内部に組み込まれています。そして無料プランを含む全プランで無料で使えるため、まずお金をかけずに「成果物づくり」を試せるのが大きな利点です。
ただし、期待値は正しく持っておく必要があります。Workは「指示すれば一瞬で完璧な完成品が出る」魔法ではありません。数分から数時間かけて進めるため即答ではなく、出てきた成果物は人が確認して手を入れる前提です。丸投げして放置するのではなく、「たたき台を一気に作ってもらい、仕上げは自分がやる」という役割分担で使うと、実務にうまく馴染みます。
「Codex」はどんな時に使うか|コードと精密な反復作業
Codexは、もともと開発者向けのツールとして育ってきたモードで、コードの作成・修正や、正確さの要る精密な作業を任せる場面で使います。3つのモードの中では最も「実行寄り」で、決められた手順を正確に、反復的にこなすことに長けています。
統一アプリのCodexビューでは、7月9日の統合で次のような機能が使えるようになりました。いずれも「アプリの中で完結できる」のが利点です。
- インライン差分編集:アプリ内でコードや文書を直接編集でき、変更箇所(差分)を見ながらその場で直せる。選んだ箇所だけ修正を依頼することもできる
- GitHub PRレビューをサイドパネルで:コードの変更提案(プルリクエスト)を、変更内容と並べてアプリを離れずに確認できる
- 1つのプロジェクトで複数リポジトリを横断:サイトと業務ツールなど、複数の置き場をまたいだ作業に対応
非エンジニアの方にとっては馴染みの薄い言葉が並びますが、要点はシンプルです。「コードが絡む仕事」「一字一句の正確さが求められる反復作業」はCodexに寄せる——この一点だけ押さえれば十分です。社内に開発を持つ企業や、Web制作・受託開発をしている事業者であれば、レビューや修正の往復が1つのアプリの中で済むぶん、作業の効率が上がります。
ひとつ補足しておくと、「Codex」という名前には、この統一アプリのモード(クラウド/Web上で動く版)と、パソコンのターミナルで動く「Codex CLI」という別ツールの2つがあります。この記事で扱っているのは前者、アプリの中のCodexビューです。両者は役割が近いものの別物なので、設定や機能を調べるときは混同しないよう気をつけてください。クラウド版Codexの仕組みは次の記事で詳しく解説しています。
場面別・早見表|迷ったらこれで選ぶ
ここまでの内容を、「やりたいこと」から逆引きできる表にまとめます。迷ったら、まずこの表で当たりをつけてください。
やりたいこと | 選ぶモード | 返ってくるもの |
|---|---|---|
調べ物・相談・言い回しの壁打ち | Chat | その場の対話・短い回答 |
数行のお知らせ文・要約・翻訳 | Chat | すぐ使える短い文章 |
比較表・集計シートを作りたい | Chat(急ぐとき)/Work(待たずに任せたいとき) | 表計算シート(どちらもファイルで返る) |
提案スライド・レポートの草案 | Chat(急ぐとき)/Work(待たずに任せたいとき) | スライド・文書(どちらもファイルで返る) |
簡単なWebアプリの試作 | Work | 共有できるWebアプリ |
メールやSlackの出来事をきっかけに自動で動かしたい | Work | 自動で進む作業 |
ログインが必要なサイトを操作させたい | Work | 操作の結果 |
コードの作成・修正 | Codex | 編集済みのコード・差分 |
コードレビュー・精密な反復作業 | Codex | レビュー結果・修正 |
大まかな判断基準は、「その場で仕上げたいならChat、待たずに任せたい・出来事をきっかけに動かしたいならWork、コードや正確さが要るならCodex」という3分割です。最初は厳密に考えず、この目安で選んで、しっくりこなければ別のモードに切り替える——という試し方で十分です。1つのアプリの中なので、切り替えに手間はかかりません。
中小企業にとっての一本化のメリット|導入が簡単になった
私が今回の一本化で「中小企業にとって一番大きい」と感じているのは、機能そのものよりも導入のハードルが下がったことです。
これまでは「会話はChatGPT、コード作業はCodexアプリ、資料づくりは別のツール」というように、目的ごとにアプリやサービスを使い分ける必要がありました。非エンジニアの現場では、この「どのツールを、どう入れて、どう使い分けるか」という入口の複雑さそのものが、AI活用を止めていた大きな要因です。何をインストールすればいいのか分からず、最初の一歩で挫折してしまうのです。
それが7月9日以降、1つのアプリを入れれば、会話も成果物づくりも精密作業もその中で完結するようになりました。導線が単純になったぶん、「まずこのアプリを入れて、やりたいことに合わせてモードを選ぶ」という説明だけで済みます。社内に展開するときも、教える側・教わる側の負担が明らかに軽くなりました。導入が簡単になったこと自体が、中小企業にとっては最大の変化だと私は考えています。
しかも入口が無料プランを含む全プランで開かれているので、「まず無料で1つのアプリを入れて、3つのモードを触ってみる」という一歩を、費用の心配なく踏み出せます。有料化を検討するのは、実際に使ってみて「この業務は毎日使う」と手応えを感じてからで遅くありません。
私の使い分け|考える仕事と実行する仕事を分ける
3つのモードを触ったうえでの、実務者としての率直な使い分けも添えておきます。私の場合、「考えさせる仕事」と「正確に実行させる仕事」を分けるという発想でモードを選んでいます。
設計や文章づくりのように、こちらの抽象的な要望を形にしてもらう仕事は、対話しながら詰められるChatや、成果物まで一気に組んでくれるWorkが向いています。一方で、コードの修正や精密な反復作業のように、決められたことを正確にこなす仕事はCodexが得意です。「これは考えさせる仕事か、正確に実行させる仕事か」を見極めて、それぞれに合ったモードを当てる——この基準さえ持っていれば、3つのモードで迷うことはほとんどありません。
大切なのは、モードの名前を覚えることではなく、仕事の性質を見て道具を選ぶ習慣です。同じ考え方は、AIツール全般の使い分けにそのまま応用できます。新しい機能が増えても、「対話か・成果物か・精密実行か」という問いに立ち返れば、振り回されずに使いこなせます。
まとめ|ChatとWorkの違いは「進め方」
最後に要点を整理します。
- 2026年7月9日、ChatGPTのデスクトップアプリ(macOS・Windows)にChat・Work・Codexの3モードが同居し、無料プランを含む全プランで提供されるようになった。
- Chat=その場で仕上げる(表やスライドのファイルも作れる)、Work=手順に分けて時間をかけて任せる・出来事をきっかけに動く・ログインが必要なサイトを操作する、Codex=コードと精密な反復作業、という3分割で選ぶ。
- 既存のCodexアプリは更新でそのまま新アプリになり、プロジェクト・設定は引き継がれる。Codexを既定ビューに設定することもできる。
- Workは即答ではない(私たちが試した資料づくりで6〜13分、同じ仕事をChatは2分以内で返した)。成果物は人が確認・仕上げをする前提で使う。
- 中小企業にとっての最大のメリットは、1つのアプリで完結し導入が簡単になったこと。まず無料で入れて、やりたいことに合わせてモードを選ぶのが現実的。
3つのモードに身構える必要はありません。「その場で仕上げたいならChat、待たずに任せたいならWork、コードや正確さが要るならCodex」という一つの目安さえ持てば、統一アプリは中小企業にとって扱いやすい道具になります。まずは無料で1つのアプリを入れて、自社の身近な業務から試してみてください。各モードの土台となっている技術やCodexの全体像は、次の記事もあわせてご覧ください。
(出典:OpenAI公式 GPT-5.6/Codex changelog(アプリ)/ChatGPTリリースノート)
ChatGPT Workが「成果物まで仕上げるエージェント」としてどう動くのか、その全体像はこちらで解説しています。
Workにしかできない仕事は、2つだけ

同じ仕事をChatにも投げた結果と、Work固有に残った2つ(全26ページ)
Workに投げていた仕事、Chatでも同じものが返ってきます。見積の比較表、提案スライド、アンケートの集計レポート——3つとも同じ指示文で両方に出して、時間を測りました。Work固有だとよく言われる5つも、公式ドキュメントと実機で1つずつ確かめています。両方に課金して毎日どちらも使っている立場から、測った数字をそのまま出します。
- 3つの仕事を両方に投げた記録——出力・かかった時間・直した箇所
- 定期実行は普通のチャットから登録できる(実機で確認)
- Workを選ぶ理由になった2つと、ならなかった3つ
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