ELI5スキルとは|難しい資料を図1枚に開く使い方
「この契約書、何度読んでも頭に入らない」「用語が分からないまま、なんとなく承認してしまった」——見積書や規約、補助金の要項を前にして、多くの人が一度はこの状態になります。
結論から言うと、こうした資料はAIに要約させるより、図に開き直させるほうが速く理解できます。その頼み方を固定した「ELI5」というClaude Codeのスキルが2026年8月にコミュニティ向けマーケットプレースで配布され、コマンド2行で誰でも導入できるようになりました。
株式会社Fyveでは、社内の無人ジョブを数十本のスキル定義ファイルで運用しています。その立場からELI5の中身を実際に開いて確かめたところ、いちばん驚いたのは機能ではなくその短さでした。この記事では、ELI5の正体・導入手順・実務での使いどころを、公式リポジトリの一次情報にあたって解説します。
ELI5スキルとは何か
ELI5は「Explain Like I'm 5(5歳児に説明するように)」の頭文字です。もともとは英語圏のインターネットで使われてきた言い回しで、「専門知識ゼロの相手に向けて、噛み砕いて説明してほしい」という意味で使われます。
これをClaude Codeのスキル——つまり「決まった頼み方を、コマンド1つで毎回呼び出せるようにしたもの」——としてパッケージしたのが、今回配布されたELI5です。
公式リポジトリで確認できる事実
私がanthropics/claude-plugins-community のリポジトリを直接確認したところ、次のことが分かりました。
項目 | 内容 |
|---|---|
プラグイン名 | eli5 |
バージョン | 1.0.0 |
作者 | Thariq Shihipar(Anthropic) |
ライセンス | MIT |
カテゴリ | learning(学習) |
リポジトリへの追加日時 | 2026年8月21日 18時52分(協定世界時)=日本時間 8月22日 未明 |
配布元のマーケットプレース定義ファイルに書かれた説明文は「Explain any topic like I'm 5: a dead-simple HTML picture explainer with big visuals and few words.」——どんな話題でも、大きな図と少ない言葉だけの、ごく単純なHTMLの解説物に開き直す、という意味です。
なお「Anthropicのメンバーが社内でよく使っていたスキル」という紹介は、作者本人の発信と、それを取り上げた複数の解説記事によるものです。作者名はリポジトリの定義ファイルに明記されていますが、社内利用の実態そのものは公式ドキュメントで確認できる種類の情報ではないため、伝聞として扱ってください。
中身は「1文」だけだった
ここがこの記事でいちばんお伝えしたい部分です。ELI5のスキル本体(SKILL.md)は、ファイル全体で321バイトしかありません。前置きも、出力例も、条件分岐も、禁止事項も一切書かれていません。
実際に効いている指示は、次の1文です。
Explain like I'm someone who knows nothing about this topic,
using a HTML artifact with big pictures and few words.訳せば「その話を何も知らない人に向けて、大きな図と少ない言葉のHTML1枚で説明して」。加えて、いつこのスキルを呼び出すかを書いた数行の見出し情報と、話題を差し込む場所が末尾にあるだけです。

この短さは、スキルという仕組みの本質をよく表しています。スキルはAIに新しい能力を足す装置ではありません。うまくいった頼み方を、毎回そのまま呼び出せるように固定したものです。だから「良い頼み方」さえ見つかっていれば、1文で十分に成立します。
スキルという仕組み自体をもう少し詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
ELI5の導入手順(コマンド2行)
導入は2行で終わります。Claude Codeのターミナルで次を順に実行してください。
claude plugin marketplace add anthropics/claude-plugins-community
claude plugin install eli5@claude-community1行目が「どの棚から探すか」の登録、2行目がその棚からELI5を取り出す操作です。棚の登録は一度やれば済むので、2回目以降に別のプラグインを入れるときは2行目だけで足ります。
使い方
導入が終わったら、会話の中で次のように打つだけです。
/eli5 <説明してほしいこと>公式リポジトリに載っている使用例は /eli5 how does DNS work(DNSの仕組みを説明して)です。日本語でも同じように使えます。手元の資料を読み解かせたいときは、ファイルを渡したうえで「この資料を /eli5 して」と頼む形になります。
何が出てくるのか
出力は文章ではなく、大きな図と短い言葉で構成されたHTMLのページ1枚です。ここが普通の「要約して」との決定的な違いになります。
- 要約:文章を短くする。読む量は減るが、分からない用語は分からないまま残る
- ELI5:構造を図に置き換える。用語ではなく「何と何がどう繋がっているか」が先に見える
難しい資料でつまずく原因は、たいてい情報量ではなく関係が見えないことです。誰が誰に何を払うのか、どの条件がどの条件を打ち消すのか。図はそこを最初に見せてくれます。
なお、プラグインを導入すると設定ファイルが自動で読み込まれる仕組みについては、以下の記事で詳しく扱っています。
読者特典・無料ダウンロードClaude Codeを「素のまま」使うな無料でダウンロード →「公式」と「コミュニティ」は別の棚である
導入前に1つだけ知っておいてほしい区別があります。Claude Codeのプラグインの配布元は1つではなく、公式ディレクトリとコミュニティマーケットプレースの2つがあり、ELI5があるのは後者です。
2026年8月23日にそれぞれのマーケットプレース定義ファイルを取得して数えたところ、収載数は次のとおりでした。
公式ディレクトリ | コミュニティ | |
|---|---|---|
収載数 | 286件 | 2,282件 |
位置づけ | Anthropicが管理する高品質なプラグインの一覧 | 申請され、審査を通過したものが並ぶ一覧 |
審査 | Anthropicによる管理 | 申請 → 自動セキュリティ走査 → 配布承認 |
更新のされ方 | リポジトリで管理 | 社内の審査経路から毎晩同期される読み取り専用のミラー |
ELI5 | — | こちらに収載 |

「審査を通っている」が保証していること・していないこと
コミュニティ側のリポジトリには、収載されているプラグインは申請を経て自動セキュリティ走査を通過し、配布が承認されたものである、と明記されています。これは十分に意味のある品質保証です。野良のスクリプトを拾ってきて動かすのとは、リスクの水準がまったく違います。
ただし、ここは冷静に線を引いておきたいところです。審査が見ているのは「不正な動きをしないか」であって、「あなたの仕事に合うか」ではありません。2,282件という数は、選択肢の豊かさであると同時に、選定の負荷でもあります。
作者本人は、ELI5を公式プラグインに昇格させるかどうかを検討中だと伝えられています。つまり現時点では「Anthropicのメンバーが作って公開した、審査済みのコミュニティプラグイン」という位置づけであり、「Anthropic公式推奨のツール」ではありません。社内で配る場合は、この違いを説明できる状態にしておくのが安全です。
どのスキルを業務に入れるかの判断軸については、こちらでまとめています。
実務でどこに効くのか——「分からないまま進んだ書類」を数える
ELI5はプログラミングの解説専用ツールではありません。むしろ私が価値を感じたのは、エンジニアリング以外の書類に対してでした。
中小企業の経営者や個人事業主が「分からないまま判子を押している書類」は、だいたい次の4つに集約されます。
類型 | つまずく理由 | ELI5で開くと見えるもの |
|---|---|---|
外注先の提案書・見積書 | 項目名が業界語で、何にいくら払うのかが対応しない | 作業と金額の対応関係、含まれていない範囲 |
サービスの利用規約・約款 | 条文が相互に参照し合い、例外が別の条項にある | 権利と義務が誰に発生するかの構造 |
補助金・助成金の公募要領 | 対象要件・対象経費・スケジュールが別々の章に散っている | 申請から入金までの流れと、自社が引っかかる条件 |
保険・リースなどの契約書 | 解約・更新・免責の条件が読み取りにくい | いつ・何が起きたら・どうなるかの分岐 |
ポイントは、これらが毎年同じ場所でつまずいていることです。去年も分からなかったものは、今年も分かりません。だからこそ1回図にしておく価値が高い。
実際の進め方(4ステップ)
- 自分が説明できない書類を1枚選ぶ。「他人に説明してみて」と言われたら詰まるもの、が選定基準です。たいてい心当たりは1枚目ですぐ出てきます
- 丸ごと渡して
/eli5と頼む。要点を抜き出してから渡さないでください。抜き出す作業自体が、すでに理解を前提にしています - 出てきた図を見て、自分がどこを分かっていなかったのかを確かめる。図の中で「ここは知らなかった」と感じた1箇所が、その書類のあなたにとっての急所です
- その急所だけを原文で読み直す。全部を読み直す必要はありません。図は原文の代わりではなく、どこを精読すべきかを教えてくれる地図として使います
ステップ4を省かないことが、この使い方の肝です。図はあくまで理解の入口であり、契約上の効力を持つのは原文だけだからです。
非エンジニアでも使えるのか
導入にターミナルでのコマンド入力が必要なので、まったくの初見だと1行目でつまずく可能性はあります。ただ、実行するのはコピー&ペーストの2行だけで、それ以降はチャット欄に /eli5 と打つだけです。
非エンジニアの方がClaude Codeを触り始める順序については、こちらにまとめています。
ELI5が効く資料と、効かない資料
何にでも使えるわけではありません。実際に手元の資料を何種類か通してみると、向き不向きははっきり分かれます。判断の基準は単純で、その資料の難しさが「構造」から来ているのか、「情報量」から来ているのかです。
効く資料 | 効きにくい資料 | |
|---|---|---|
難しさの正体 | 要素どうしの関係が入り組んでいる | 個々の数値・条件が単に多い |
具体例 | 契約書、業務フロー、料金体系、制度の申請手順、技術の仕組み | 価格表、名簿、実績データ、月次の集計表 |
図にした結果 | 関係が一望でき、読むべき場所が絞れる | 数字が省略され、元の表を見ないと使えない |
向いている頼み方 |
| 集計・比較・抽出を指示する |
言い換えると、読んでも「で、結局どうなるの?」が残る資料には効き、読めば分かるが量が多い資料には効きません。後者に対して図を求めると、大事な数字が丸められた見栄えのいい図が出てきて、かえって危険です。
もう1つ、意外に効くのが自社の既存の仕組みの説明です。長年つぎはぎで運用してきた業務フローや、前任者から引き継いだ管理表。これらは「情報が足りない」のではなく「どこがどこに繋がっているか誰も全体を見ていない」状態なので、構造を開く頼み方が素直に効きます。
出てきた図を、その場限りにしない
ELI5の出力はHTMLのページなので、そのまま保存して使い回せます。ここを意識するかどうかで、投資対効果がかなり変わります。
私が勧めたい扱い方は次の3つです。
- 資料と図をセットで保管する。原本のPDFと、開いた図を同じ場所に置いておきます。翌年に同じ書類が来たとき、ゼロから読み直す必要がなくなります
- 説明の道具として転用する。自分が理解するために作った図は、そのまま社内説明・家族への説明・外注先との認識合わせに使えます。「何も知らない人向け」に作られている以上、他人にも通じる形になっているからです
- 差分を見るために残す。契約更新や制度改定のとき、去年の図と今年の図を並べると、変わった箇所が一目で分かります。条文どうしを突き合わせるより圧倒的に速い方法です
3つ目は特に効きます。制度や規約の変更は、たいてい全文が差し替わるわけではなく、数箇所だけが書き換わります。しかし原文だけを見比べても、その数箇所を見つけるのは骨が折れます。構造の図であれば、増えた箱・消えた矢印として現れます。
321バイトのスキルから私が受け取ったこと
冒頭に書いたとおり、私が最も驚いたのは機能ではなく短さでした。社内の無人ジョブを数十本のスキル定義ファイルで動かしている立場からすると、これは無視できない発見です。
私たちが自社で運用しているスキルの多くは、長くなりがちでした。「こういうときはこうして」「これは禁止」「過去にこう失敗したから、この手順を挟む」——運用しながら追記していくと、指示は膨らんでいきます。そして膨らむほど、AIがどの指示を優先しているのかが分からなくなります。
ELI5が示しているのは、その逆の方向です。効く指示は、条件を足すことではなく、視点を1つ決めることで生まれる。ELI5が決めているのは「誰に向けて話すか(何も知らない人)」と「どんな形で出すか(大きな図と少ない言葉)」の2点だけで、それ以外は何も縛っていません。
これは指示書の分量と効果の関係についての実感とも一致します。長く書くほど効く、という関係にはなっていません。
「賢くなってもらう」のではなく「知らないふりをしてもらう」
もう1つ、判断として書き残しておきたいことがあります。
AIに対する期待は、たいてい「もっと賢い答えを出してほしい」という方向を向きます。しかしELI5がやっているのは正反対で、AIに一度「何も知らない人」の位置まで降りてもらうことです。専門用語を使わずに説明しようとすると、説明する側は構造を理解していないと成立しません。だから出力が図になる。
そして実務で効くのは、たいていこちら側だと私は考えています。判断に必要なのは高度な知識ではなく、「自分が何を分かっていないか」がはっきりすることだからです。
同じ発想を、自社の「頼み方」に応用する
ELI5をそのまま使うより価値があるのは、この構造を真似て自社の頼み方を1つ固定してみることだと考えています。難しい技術は要りません。手順は4つです。
- 過去にうまくいった依頼を1つ思い出す。AIに頼んで「これは良かった」と感じた指示が、必ず1つはあるはずです。新しく考えるのではなく、成功例を発掘するのが出発点です
- そこから「視点」と「形式」だけを抜き出す。ELI5がやっているのはこれです。誰に向けて話すか(視点)と、何の形で出すか(形式)。この2つ以外は削ります
- 1文に書き直す。「〜な人に向けて、〜の形で書いて」という型に押し込みます。条件や禁止事項を足したくなりますが、最初は我慢してください
- 名前を付けて呼び出せるようにする。ここで初めてスキルという形になります。名前は自分が思い出せる言葉にします
たとえば私たちが社内で使っている頼み方の1つは、「この文章を、その分野を知らない経営者が読んで判断できるかどうかだけを見て、判断できない箇所を挙げて」という趣旨のものです。細かい文章ルールを列挙するより、この1文のほうが安定して効きます。読み手を1人に固定しているからです。
足したくなったら、まず視点を疑う
運用していると、必ず「思ったのと違う出力」が出ます。そのとき条件を追記したくなりますが、多くの場合、原因は条件不足ではなく視点がぼやけていることです。
「分かりやすく書いて」が効かないのは、分かりやすさの基準が示されていないからです。ELI5はそれを「何も知らない人にとって」と固定しました。基準を1つ決めるだけで、条件を10個足すより効きます。
指示を積み上げる前に読み手を決める。これがELI5から取り出せる、いちばん再利用しやすい部分です。
使うときの注意点
正確さを保証するツールではない
ELI5は「分かりやすくする」ための頼み方であって、内容の正確さを検証する仕組みは持っていません。単純化する過程で、重要な例外条項や但し書きが図から落ちることは普通に起こります。
金額・期限・責任範囲など、判断を左右する数字と条件は必ず原文で確認してください。特に補助金や助成金の要件は年度ごとに変わるため、最終判断は必ず最新の公募要領にあたる必要があります。
機密資料を渡す前に線を引く
契約書や見積書を扱う以上、取引先の情報が含まれます。どこまでをAIに渡してよいかは、利用しているプランのデータ取り扱い方針と、自社および取引先との守秘義務の両方で決まります。
実務的には、社名・担当者名・金額を伏せたうえで構造だけを渡しても、ELI5の効果はほとんど落ちません。図にしたいのは関係であって、固有名詞ではないからです。迷ったら伏せる、で問題ありません。
出力は毎回同じにはならない
指示が1文しかないということは、細部の判断がAIに委ねられているということでもあります。同じ資料を2回渡せば、図の切り口は変わり得ます。これは欠点というより性質なので、大きく外れた図が出てきたら、着目してほしい観点を一言添えて呼び直すのが早いです。
よくある質問
Claude Code以外でも使えますか
今回のプラグイン形式での導入は、Claude Code向けのマーケットプレース経由の手順です。ただし「何も知らない人に向けて、大きな図と少ない言葉で説明して」という頼み方そのものは、チャット欄に直接書いても機能します。スキル化の価値は、その頼み方を毎回入力し直さずに済むことにあります。
無料で使えますか
プラグイン自体はMITライセンスで公開されており、追加費用はかかりません。かかるのは、利用しているClaudeのプランの範囲内の使用量だけです。
公式プラグインになる予定はありますか
作者が検討中であると伝えられていますが、2026年8月23日時点では公式ディレクトリ側には収載されていません。今後の扱いは各リポジトリの最新状態で確認してください。
説明が英語で返ってきたときは
スキル本体の指示文が英語で書かれているため、話題によっては英語寄りの出力になることがあります。その場合は「日本語で」と一言添えて呼び直せば済みます。図の構造そのものは言語に依存しないので、作り直しにはなりません。
社内に配ってもよいですか
ライセンス上の問題はありません。配る場合は、コミュニティマーケットプレース由来であること、出力は原文の代わりにならないこと、この2点を添えて渡すのが安全です。
導入コマンドが通らないときは
1行目の棚の登録と2行目の取り出しは別の操作なので、まず1行目だけが成功しているかを確認してください。棚を登録せずに2行目を実行しても、取り出し先が見つからずに失敗します。また eli5@claude-community の後半部分は棚の名前を指しているため、省略できません。
まとめ
ELI5は、Anthropicのメンバーが作り、コミュニティ向けマーケットプレースで配布されているClaude Codeのスキルです。導入はコマンド2行、使い方は /eli5 と打つだけ。出力は文章ではなく、大きな図と少ない言葉のHTML1枚です。
そして中身は321バイト、実質1文しかありません。この事実は「AIをうまく使う」という課題が、複雑な設定ではなく頼み方を1つ決めることに帰着することを示しています。
まずは、毎年つまずいている書類を1枚選んでみてください。分からないまま進んだ書類が年に何枚あるかを数えると、このスキルの価値がはっきりします。
スキルの設計や、業務に合わせた運用の組み立てについては、株式会社FyveのClaude Code関連サービスでも扱っています。
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