Date

2026/03/24

Category

AI業務効率化

Title

60代の施設長がiPadで介護記録を始めたら、現場が変わった話

60代の施設長がiPadで介護記録を始めたら、現場が変わった話

「介護記録 デジタル化」と検索している方の中には、「うちのスタッフはITに詳しくないから無理だろう」と思っている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、60代の施設長がiPadを使った介護記録のデジタル化に踏み切り、月100時間の業務削減を実現した実話をお伝えします。ITに詳しくない高齢スタッフが多い現場でも、なぜうまくいったのか。その理由を、導入の過程とともに具体的にご紹介します。

「うちのスタッフ、iPadなんて使えるかな…」という不安

今回ご紹介する施設は、利用者150人・スタッフ50人規模の大きなデイサービスです。施設長は60代前半の男性。ExcelやWordを多少使う程度で、ご自身も「ITに詳しいとは言えない」とおっしゃっていました。

導入前の記録業務は、こんな流れでした。

  1. 現場スタッフが紙のメモに利用者の情報を手書き
  2. メモの内容をスプレッドシートに転記
  3. スプレッドシートから日報を作成
  4. 日報をもとに月次報告書をまとめる
  5. さらに家族への手紙を個別に作成

2度手間、3度手間は当たり前。生の情報は現場で書くメモそのものなのに、それを何度もこねくり回していたのです。

施設長はこうおっしゃっていました。

「毎日のように残業して記録を整理しているスタッフを見て、なんとかしたいとは思っていた。でも、iPadを渡して『はい、これで記録して』と言って、本当にできるのか。正直、不安しかなかったです。」

特に心配されていたのは、50代〜60代のベテランスタッフの反応でした。長年手書きでやってきた方々に、いきなりデジタル化を押し付けてうまくいくのか——。その葛藤は痛いほど伝わってきました。

IT苦手なスタッフでも使えるUI設計の工夫

私たちがこのプロジェクトで最も力を入れたのは、「ITに疎いスタッフでもすぐに使えるUI設計」です。

具体的には、以下のような設計思想で開発しました。

  • タップだけで完結する操作 — キーボード入力を極力なくし、選択肢をタップするだけで記録が完了する設計
  • 大きなボタンと文字 — 老眼のスタッフでも見やすいサイズ感
  • 色分けによる直感的なナビゲーション — どのフォームを開けばいいか、色で一目瞭然
  • 10種類の専用入力フォーム — 汎用記録・認知機能・食事・移動・入浴・プール・レクリエーション・処置記録など、現場で必要な記録を網羅

また、オフライン対応も重要なポイントでした。デイサービスの現場ではWi-Fiが不安定なエリアがあります。お風呂場の近くや施設の端では電波が弱くなることも。

このアプリはPWA技術を採用しており、Wi-Fiが不安定でも問題なく入力できます。オフラインで入力したデータは、Wi-Fi接続時に自動で同期されます。「電波がないから記録できない」というストレスとは無縁です。

導入直後の反応:「すごく助かる」の声

正直なところ、導入初日は私たちも緊張していました。しかし、スタッフの方々にiPadを渡して操作説明をしたところ、予想以上にスムーズに進みました。

タップ中心の操作設計が功を奏し、スマホでLINEを使っているスタッフなら、基本操作に迷うことはほとんどありませんでした。

導入から数日後、スタッフの方々からこんな声が上がりました。

「これ、すごく助かる。今まで手書きで何回も同じこと書いてたのがバカらしくなった。」

「メモを取って、転記して、また書いて…っていう作業がなくなっただけで、気持ちがすごく楽になりました。」

特に好評だったのは、一度入力した情報が日報や月次報告書に自動で反映される仕組みです。「生の情報を一度入力すれば、あとはシステムが整理してくれる」——これこそ、現場が求めていた形でした。

予想外の変化:スタッフから「こうしてほしい」が出始めた

導入から2〜3週間が経った頃、予想していなかった変化が起きました。

最初は「言われたから使っている」という受け身の姿勢だったスタッフたちが、積極的に意見を出すようになったのです。

「この項目、選択肢にこれも追加してもらえると助かるんだけど。」

「入浴記録のところ、皮膚の状態をもう少し細かく記録できるようにならないかな。」

「食事の記録で、とろみの有無も一緒に入力できたら便利なんだけど。」

「ITが苦手」と言っていたスタッフたちが、自分たちの業務をもっと良くするために、ツールをどう改善すればいいかを考え始めたのです。これは、単に「便利なアプリを使っている」というレベルを超えた変化でした。

道具を「与えられたもの」ではなく、「自分たちのもの」として捉え始めた瞬間です。

要望を翌日に実装。現場の信頼が生まれた瞬間

スタッフから要望が出るようになったとき、私たちが最も意識したのは「スピード」でした。

「検討します」と言って何週間も放置すれば、せっかく芽生えた主体性は消えてしまいます。だからこそ、いただいた要望は1日〜2日で実装・改善して現場にお届けしました。

月曜日に「こうしてほしい」と言われたら、火曜日にはアップデートが反映されている。このスピード感が、現場に大きな驚きと信頼を生みました。

「こんなにすぐ直してもらえるの?大変助かっている。前に使ったシステムは要望を出しても半年後とかだったから、全然違う。」

施設長もこうおっしゃっていました。

「スタッフたちが『もっとこうしたい』と言い出したのが、一番嬉しかった。今まで記録業務は『やらされ仕事』だったのが、自分たちで良くしていこうという雰囲気に変わった。」

この「現場の声に即座に応える」という姿勢こそ、大手のパッケージソフトでは実現できない、オーダーメイド開発の最大の強みです。

結果:月100時間の削減と、スタッフの働き方の変化

導入から3ヶ月が経過した時点で、記録業務にかかる時間を計測したところ、月100時間の業務削減が実現していました。

具体的な変化は以下の通りです。

  • 手書きメモ → スプレッドシート転記の工程が完全に消滅
  • 日報作成がワンタップのPDF出力に
  • 月次報告書が自動集計で数分で完成
  • 家族への報告も記録データから簡単に作成
  • 残業時間が大幅に減少

しかし、最も大きな変化は「時間の削減」ではありませんでした。

スタッフの働き方と意識が変わったことです。

記録業務のストレスから解放されたスタッフたちは、利用者とのコミュニケーションに使う時間が増えました。レクリエーションの企画に力を入れるようになったスタッフもいます。「記録のために残業」がなくなったことで、仕事への満足度も向上しました。

まとめ:「IT苦手」は導入しない理由にはならない

この事例が示しているのは、「IT苦手」は介護記録のデジタル化を諦める理由にはならないということです。

大切なのは、以下の3つです。

  1. 現場に合ったUI設計 — 高齢スタッフでもタップだけで使える設計
  2. 現場の声に応えるスピード — 要望を1〜2日で実装する対応力
  3. 「使わされる」ではなく「使いたくなる」体験 — スタッフが主体的に改善提案を出せる環境

60代の施設長が、ITに詳しくないスタッフたちと一緒に、月100時間の業務削減を実現できた。この事実が、何よりの証明です。

「うちの施設でもできるだろうか」と思った方、まずはお気軽にご相談ください。現場の状況をお聞きした上で、最適な進め方をご提案いたします。

iPad導入で変わった5つのこと

iPad導入で変わった5つのこと チェックリスト図

この施設でiPadによる記録入力を導入して、具体的に何が変わったのか。現場で起きた5つの変化をお伝えします。

1. 手書きの転記作業が完全に不要になった

以前は手書きメモをスプレッドシートに転記し、そこから日報を作り、さらに月次報告書を作る——と同じ情報を何度もこねくり回していました。iPadで入力した瞬間にデータベースに保存されるので、転記作業はゼロです。

2. オフラインでも使える安心感

介護施設はWi-Fi環境が不安定な場所もあります。このシステムはオフラインでも動作するPWAとして設計しているため、ネットが切れても入力は止まりません。オンラインに戻った時点で自動同期されます。

3. 10種類の専用フォームで「何を入力すればいいか」が明確に

汎用記録・認知機能・食事・移動・入浴・プール・レクリエーション・処置記録など、10種類の専用フォームを用意しました。スタッフは該当するフォームを選んでタップするだけ。「何を書けばいいかわからない」という迷いがなくなりました。

4. PDF出力で印刷がワンクリック

日報も月次報告書もワンクリックでPDF出力。ケアマネージャーごとの五十音順で一括印刷する機能も、施設長の要望から翌日で実装しました。月末の印刷作業が一瞬で終わるようになっています。

5. スタッフが自発的に改善要望を出すようになった

導入前は「新しいシステムは面倒」という雰囲気がありました。しかし使い始めて楽さを実感すると、スタッフから「こういう機能がほしい」と積極的に声が出るようになりました。その要望に1〜2日で対応することで、現場の信頼が生まれました。

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