Anthropic『ant』CLIとは|機能と使い方を総解説
「Claude APIを使いたいけれど、毎回curlで長いJSONを書くのが面倒」「APIキーの管理やレスポンスの整形に手間がかかる」——AIを業務に組み込もうとすると、誰もがこの地味な壁にぶつかります。
結論から言うと、Anthropicが公式に出した「ant」CLI(Claude Platform CLI)を使えば、Claude APIのほぼ全機能をターミナルのコマンド一発で扱えるようになります。curlの手書きJSONも、自前のパース処理も不要です。
株式会社Fyveは中小企業向けにAI活用の伴走支援を行っており、私たち自身もClaude CodeやClaude APIを日常業務で運用しています。本記事では、antが何ができる機能なのか、どう使うのか、どんな活用が考えられるのかを、公式ドキュメントと一次情報をもとに総合的に解説します。
Anthropicの「ant」CLIとは何か
antは、Anthropicが公式に提供するClaude Platform CLI(コマンドラインツール)です。Claude APIの各エンドポイント(メッセージ生成、モデル一覧、ファイル操作、クラウド型エージェントなど)を、ターミナルからコマンドとして直接実行できます。
正式なリポジトリ名はanthropic-cliで、インストール後のコマンド名が「ant」です。Go言語製の単一バイナリで、MITライセンスのオープンソース。CLIツール自体は無料で、課金が発生するのはAPIの利用分だけです。2026年6月にAnthropicの開発者向け公式アカウントが本格的に告知し、注目を集めました。
ひとことで言えば、「Claude APIをターミナルの一級市民にするツール」です。これまでブラウザのコンソールやプログラム用のSDK(開発キット)でしか触れなかったAPIを、シェルのコマンドとして扱えるようにしたのが最大の特徴です。
なお、ここで言う「ant」はAnthropicのCLIであり、Javaのビルドツールである「Apache Ant」とは無関係です。検索の際は混同しないよう注意してください。

antで何ができるのか|主要な機能
antができることは、大きく分けて「APIの直接操作」と「クラウド型エージェントの運用」の2つです。具体的な機能を見ていきます。
1. すべてのAPIをサブコマンドとして実行
メッセージ生成(messages)、モデル一覧(models)、ファイルアップロード(files)など、Claude APIのリソースがそのままサブコマンドになっています。「ant messages create」のように打つだけでAPIを呼び出せます。
2. curlより楽な入力・出力
curlでAPIを叩くと、長いJSONを手で書き、ヘッダーを管理し、結果をjqなどで整形する必要があります。antはこの面倒を一気に省きます。
- 入力:型付きフラグ(オプション)で指定するか、YAML形式をパイプで渡すだけ。手書きJSONが不要
- ファイル埋め込み:「@ファイルパス」と書くだけで、PDFやテキストの中身を自動で本文に展開(バイナリは自動でbase64変換)
- 出力整形:「--transform」オプションで必要なフィールドだけを抽出。jqを別途使わなくてよい
- 自動ページネーション:一覧取得系のAPIはページ送りを自動処理
3. 簡単な認証(ant auth login)
「ant auth login」と打つと、ブラウザでのログイン(OAuth)が立ち上がります。APIキーを手でコピー&ペーストする必要がなく、取得した認証情報はワークスペース単位で安全に保存されます。しかもこの1つの認証情報を、antだけでなくSDKやClaude Codeも共有して使えます。
4. クラウド型エージェント(Managed Agents)の運用
antの最大の売りが、Anthropicのクラウド上で動くManaged Agents(マネージドエージェント)の操作です。安全なサンドボックス環境、状態を保持するセッション、すぐ使えるツール(bash・ファイル操作・Web検索など)を、追加のプログラムを書かずにコマンドで扱えます。後ほど詳しく解説します。
5. Claude Codeから自然言語で呼び出せる
AnthropicのAI開発ツール「Claude Code」は、組み込みの「/claude-api」スキルを通じてantの使い方を最初から理解しています。つまり「最近のエージェントセッションを一覧して、失敗したものを教えて」と日本語で頼むだけで、Claude Codeが裏でantを実行し、結果を読み取って答えてくれます。連携用のコードを書く必要はありません。
antのインストールと初期設定|使い方の第一歩
ここからは具体的な使い方です。まずはインストールから。macOS・Linux・Windows(WSL)に対応しています。
インストール方法
環境に応じて、次の3つから選びます。
- macOS(Homebrew):「brew install anthropics/tap/ant」
- Linux / WSL:GitHubのリリースバイナリをcurlでダウンロードして展開
- Go環境がある場合:「go install github.com/anthropics/anthropic-cli/cmd/ant@latest」
インストール後、「ant --version」でバージョンが表示されれば成功です。執筆時点の最新は v1.10.0(2026年5月28日リリース)で、最新モデルのclaude-opus-4-8に対応しています。
ログイン(認証)
続いて認証です。自分のパソコンで使う場合は、対話的なログインが手軽です。
- 「ant auth login」:ブラウザが開き、組織とワークスペースを選択するとトークンが保存される
- ブラウザのないリモート環境では「ant auth login --no-browser」でURLとコードを使ってログイン
- 「ant auth status」:今どの認証情報・ワークスペースが有効かを確認できる
なお、CI/CD(継続的インテグレーション)やサーバー上で動かす場合は、対話ログインではなくWorkload Identity Federation(WIF)という方式が公式に推奨されています。自動化の文脈では覚えておくとよいポイントです。
antの基本的な使い方|コマンドの形を覚える
antのコマンドは、すべて「ant リソース アクション オプション」というシンプルな形に従います。
たとえばモデル一覧なら「ant models list」、メッセージ生成なら「ant messages create」です。ベータ機能(エージェントやセッションなど)は頭に「beta:」が付き、必要なヘッダーは自動で付与されます。
最小のメッセージ生成
もっとも基本的な使い方が、Claudeにメッセージを送る例です。
- モデル(--model)、最大トークン数(--max-tokens)、メッセージ本文(--message)を指定するだけ
- レスポンスはAPIオブジェクト全体が返り、ターミナルでは読みやすく整形して表示される
レスポンスから必要な部分だけ取り出す
「--transform」で出力を絞り込めます。たとえば一覧から「ID・名前・モデル」だけを抜き出し、1行1件のJSON形式で出すといった整形が、jqを使わずに完結します。1つの値を取り出して「--raw-output」を付ければ、引用符なしでシェル変数に代入することも可能です。
PDFやファイルをそのまま渡す
「@./scan.pdf」のようにファイルパスを「@」付きで書くと、その中身を自動で読み込んでAPIに渡せます。スキャンしたPDFをClaudeに渡してテキスト抽出する、といった処理がワンコマンドで実現します。これは私たちのような受託の現場でも、書類のOCR的な処理を素早く検証するのに重宝しそうな機能です。
Claude Managed Agentsをantで運用する
antの真価が発揮されるのが、クラウド型エージェント「Managed Agents」の運用です。ここはantが他のツールと一線を画すポイントなので、少し丁寧に説明します。
4つの構成要素
- Agent(エージェント):使うモデル・指示文(システムプロンプト)・ツールをまとめた「設定」。バージョン管理される
- Environment(環境):エージェントが動くコンテナ環境のテンプレート。事前インストールやネットワーク規則を定義
- Session(セッション):エージェントと環境を結びつけた実行インスタンス
- Events(イベント):メッセージやツール呼び出しなど、やりとりの単位
YAMLで定義し、Gitで管理し、CIで反映する

注目すべきは、エージェントの設定をYAMLファイルとして書き、リポジトリにコミットして管理できる点です。これは「エージェントをインフラ as コード(IaC)として扱う」発想で、次のような流れになります。
- エージェントの設定をYAMLで定義する(モデル・指示文・ツールを記述)
- そのYAMLをGitにコミットし、チームでレビューする
- CI(GitHub Actionsなど)が「ant beta:agents update」を実行し、Claude Platformに反映する
更新時は現在のバージョン番号の指定が必要な「楽観ロック」方式なので、意図しない上書きを防ぎ、ロールバックも安全です。エージェントが「バージョン管理された、デプロイ可能な成果物」になる——これがantが開発者の間で高く評価されている理由です。
起動・実行・追跡もコマンドで完結
セッションを起動し(ant beta:sessions create)、ユーザーメッセージを送り(events send)、やりとりを読み出す(events list)、リアルタイムで流れを見る(events stream)——一連の操作がすべてターミナルで完結します。エージェントが「どこで詰まったか」「どのツールを呼んだか」といった実行の中身も同じCLIから取得でき、デバッグや改善に役立ちます。
料金は実行時間ベース
Managed Agentsのセッションは1セッション時間あたり0.08ドル(ミリ秒単位の課金)+通常のトークン課金です。アイドル時間(待機中)は課金されません。実行時間ベースで原価が読めるため、業務に組み込む際のコスト試算がしやすい設計になっています。
antの活用シナリオ|どんな使い道が考えられるか
ここまでの機能を踏まえて、実務で考えられる活用方法を整理します。
- APIの動作確認・検証:新しいモデルやプロンプトの挙動を、ワンライナーですぐ試せる
- エージェント設定のコード管理:エージェントの定義をGitで管理・レビューし、CIで自動反映する
- シェルスクリプトでの自動化:定期実行ジョブやバッチ処理にClaudeを組み込み、出力を他のコマンドにパイプで連携する
- エージェントの監視・デバッグ:セッションのイベントやツール呼び出しを取得し、失敗パターンの分析やトークン浪費の削減に使う
- Claude Codeとの連携:自然言語でClaude Codeに頼むと、裏でantが動いてAPI操作を代行する
特に5つ目の「Claude Code × ant」の組み合わせは象徴的です。AIに対して日本語で指示すると、そのAIがantを通じて別のAI(エージェント)を起動・制御する。「AIがAIを運用する」構図を公式ツールが実現したという点で、今後の業務自動化の方向性を示しています。
curl・SDKとの使い分け
antは万能ではなく、既存の手段と役割が分かれます。公式の整理がわかりやすいので紹介します。

- curl:インストール不要で、とにかく最速で1回だけ確認したいとき
- ant CLI:日常的にターミナルでAPIを操作するとき、CI/CDやシェルスクリプトに組み込むとき
- SDK(開発キット):本番アプリケーションに組み込むとき。型安全・非同期処理・複雑なツールのループ処理はSDKが適切
公式は「コントロールプレーン(設定・運用)はCLI、データプレーン(本番アプリの処理)はSDK」と整理しています。エージェントの定義やデバッグはant、アプリ本体への組み込みはSDK、という住み分けです。複数ターンにわたるツール呼び出しのループのような複雑なロジックは、CLI単体では扱いにくいため、その場合はSDKに移行するのが定石です。
中小企業の業務自動化にどう効くか
antは一見すると開発者向けのツールですが、私たちのように中小企業のAI活用を支援する立場から見ると、見逃せない意味を持っています。
私たちはこれまで、Claude Codeを使って自社の業務自動化を進めてきました。独自に命名した秘書役のAIエージェント(社内では「Argus」と呼んでいます)に案件管理を任せたり、定型業務をAIに引き継いだりする運用です。その経験から言うと、antの登場は「エージェントを思いつきで動かす」段階から、「エージェントをYAMLで定義し、Gitで管理し、再現性をもって運用する」段階への移行を、公式が用意したという意味で大きな前進です。
受託でAI業務改善を行う際にも、クライアントごとのエージェント設定をコードとして管理し、レビューを経て納品・運用できることは、品質と再現性の面で大きな利点になります。コストが実行時間ベースで読める点も、見積りや運用設計をしやすくします。
一方で注意も必要です。antはあくまでターミナルとClaude Code環境を前提とするツールで、「完全な非エンジニア向け」ではありません。中小企業がこの恩恵を受けるには、自社で扱える人材を育てるか、私たちのような支援を通じて仕組みとして導入する形が現実的です。AI活用の入口としては、まず自社のどの業務をエージェントに任せられるかを見極めることが先決です。
そもそもAIエージェントとは何か、チャットAIと何が違うのかを基礎から押さえたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
Claude Code側でエージェントを定期実行・遠隔運用する方法は、別記事で具体的に解説しています。
まとめ|antは「APIとエージェントの運用基盤」
Anthropicの「ant」CLIは、Claude APIをターミナルから直接操作できる公式ツールです。本記事の要点を整理します。
- antはClaude Platform CLI。Go製・MIT・無料で、APIの全エンドポイントをコマンド化する
- 手書きJSONやjqが不要で、「ant auth login」のブラウザ認証も手軽
- 最大の売りはManaged Agentsの運用。YAML×Git×CIでエージェントをコードとして管理できる
- Claude Codeが「/claude-api」スキルでantを理解し、自然言語で操作を委譲できる
- 役割分担は「設定・運用はCLI、本番アプリ組み込みはSDK」
AI活用が「チャットで質問する」段階から「エージェントを業務に組み込んで運用する」段階へ進む中で、antはその運用基盤を担うツールだと私たちは見ています。まずは小さくインストールして「ant messages create」を試すところから、その手触りを確かめてみてください。
「Claude Code を自分で使いこなしたい」「自社の業務に組み込みたい」
── そんな方は、まず初回無料相談でお話ししてみませんか。
御社の業務に合わせたClaude Code導入支援
「AIツールを導入したが、現場で使われない」を終わらせる。
業務課題のヒアリングから設計、ハンズオン実践、運用定着まで一貫して支援します。