Hermes Agent活用|自分の声でLinkedIn自動投稿
SNS投稿を自動化したいが、AIに任せると「自分らしさ」が消えて違和感のある投稿になる——これは多くの経営者や個人発信者が抱える共通の悩みです。株式会社Fyveは中小企業のAI業務効率化を支援していますが、この「自分の声」問題は単なる技術論ではなく、ブランド価値の根幹に関わるテーマだと捉えています。今回は2026年4月29日にXで公開された@Saboo_Shubham_氏のHermes Agent活用事例を取り上げ、永続記憶と文体分析を組み合わせて「自分の声」のままLinkedIn投稿を自動生成する仕組みを、私たちの視点で読み解きます。
事例の概要:自分の過去記事を読み込ませて「自分の声」を再現する
事例のポイントを先にまとめておきます。一次情報はXの投稿(2026-04-29)と、私たちが社内データベースに保存しているHermes Agent海外活用事例集(aliaihub/awesome-hermes-usecases)です。
項目 | 内容 |
|---|---|
発信者 | @Saboo_Shubham_(X) |
公開日 | 2026-04-29 |
ユースケース | LinkedIn 個人ボイス投稿の半自動化 |
使用ツール | Hermes Agent v0.11系 / Mac mini 常駐 / 永続記憶 |
主な処理 | 自分の過去LinkedIn記事から文体を分析、永続記憶に保存、テーマを与えるだけで「自分の声」の投稿草稿を生成 |
従来の課題 | AI生成のSNS投稿は語尾・話運び・専門用語の選び方が本人と乖離しがち |
ここで重要なのは、彼が「投稿を自動投稿する」ところまで踏み込んでいない点です。あくまで「自分の声を保ったまま草稿生成」のフェーズに留めており、最終チェックは人間が行う前提で運用しています。SNSにおけるブランド毀損リスクをコントロールしながら時短する、現実的な落としどころです。
仕組み解説:なぜ永続記憶×文体分析が効くのか
ここからは私たちが社内で検証した知見も交えて、なぜこの組み合わせが効果的なのかを掘り下げます。鍵は「文体は短期記憶では再現できない」という事実です。
従来のLLM単発呼び出しの限界
ChatGPTやClaudeに「私の文体で書いて」とプロンプトで指示するアプローチは広く行われていますが、私たちが社内で検証したところ、以下の限界が浮き彫りになります。
- 文体サンプルをプロンプトに毎回貼る運用は破綻する:5記事、10記事と増やすとコンテキストを圧迫し、本題の指示が薄まる
- セッションを跨ぐと忘れる:「先週指示した語尾の癖」が翌週には消えており、毎回ゼロから教え直すコストが発生する
- 文体の細部は明文化しづらい:「結論を先に置く」「逆接の接続詞を避ける」といった暗黙ルールは、本人ですら言語化できない
結果として、AIに頼んだ投稿は「優等生的で誰でも書ける文章」になり、フォロワーが反応しなくなる、というのが現場で起きる典型的な失敗パターンです。

Hermes Agentの3層メモリが解決した点
Hermes Agentは短期・中期・永続の3層メモリ構造を持ち、文体のような「常に参照すべき情報」を永続記憶に格納できます。技術的な構造の全体像は別記事で詳しく解説しているので、まずそちらに目を通すと本記事の理解が深まります。
@Saboo_Shubham_氏の運用を再現するには、最低限以下の情報を永続記憶に書き込む必要があります。
- 頻出語彙と忌避語彙のリスト:自分が使いがちな単語と、絶対に使わない単語の両方を記録する
- 定型の構造:「フック1行→具体例3行→主張1行→問いかけ1行」のような自分の型
- 過去投稿の中で反応が良かったもの/悪かったもの:エンゲージメント数と紐付けて保存し、学習素材にする
- 避けるべきトピック・スタンス:政治的見解、競合企業の批判など、ブランドリスクとなる領域を明示する
これらをエージェント側で保持できるため、毎回ゼロから「私の文体で書いて」と指示する必要がなくなります。指示は「今週のテーマ:チーム内のAI活用ルール」のような短い一行で済みます。
Mac mini常駐の意味
@Saboo_Shubham_氏がMac mini常駐構成を選んだ理由も合理的です。常駐型のローカル機は、深夜にバッチ処理を回す、複数アカウントの投稿候補を並列生成する、といった「24時間動き続ける運用」と相性が良い。クラウドVPSでも実現可能ですが、個人ボイス再現のように自分の過去発信データを大量に置く前提なら、プライバシー面でローカル運用に分があります。
Mac miniでHermes Agentを常駐させる際の実測コストや構成は、別途まとめた記事で詳しく扱っています。
私たちの解釈:SNS自動化は「投稿の自動化」ではなく「準備の自動化」
この事例から私たちが学べる最大の示唆は、「SNS自動化」という言葉の解像度を上げる必要があるということです。私たちは中小企業のAI導入支援を行うなかで「SNSをAIに任せたい」という相談を多く受けますが、ここには3段階の選択肢があります。
- レベル1:完全自動投稿──テーマだけ与えてAIが生成・予約投稿まで実行
- レベル2:草稿生成+人間レビュー──AIが「自分の声」で草稿を作り、最終公開は人間が判断(@Saboo_Shubham_氏の運用はここ)
- レベル3:素材抽出のみ──過去発信から「次に書くべきテーマ」「使い回せる切り口」を提案するだけ
個人ブランドや経営者の発信であれば、現時点ではレベル2が現実的なバランスです。レベル1まで踏み込むと、文脈を取り違えた炎上投稿や、競合と被るネタの重複投稿といったリスクが急増します。実際に、米国でAIによるSNS完全自動化に踏み切った企業が誤投稿でブランド毀損を経験した事例は2025年以降複数報告されており、Reuters Institute の Digital News Report 2024 でも生成AIコンテンツへの信頼度が他コンテンツより低いというデータが示されています(Reuters Institute Digital News Report 2024)。
「投稿の自動化」ではなく「準備の自動化」と捉え直すと、Hermes Agentが本当に効くのは以下の領域です。
- 過去投稿の自動アーカイブと文体分析
- テーマに紐付いた切り口の複数案提案
- 「自分が過去に同じことを書いていないか」の重複チェック
- 競合・業界キーワードの定常モニタリングと投稿ネタへの落とし込み
最後の公開ボタンだけ人間に残す。これがブランドを守りながら発信頻度を上げる正解だと、私たちは考えています。

実務落とし込み:同じ運用を再現するために必要な前提
@Saboo_Shubham_氏と同じ仕組みを社内で再現したい場合、最低限以下の前提を揃える必要があります。私たちが伴走支援で必ず確認している項目です。
1. 文体サンプルの量と質
永続記憶に投入する過去投稿は、最低でも30本以上が目安です。10本程度では「たまたま使った言い回し」を本人の癖と誤認するリスクがあります。LinkedInであれば、過去1年分の長文投稿をエクスポートして整形しておくのが現実的です。
2. 「自分の声」の境界線を言語化する
永続記憶は万能ではなく、「何を書くか」より「何を書かないか」の方が再現性に効きます。たとえば「政治的話題には触れない」「他社サービスの批判はしない」「自社事例は必ず匿名化する」など、ブランドガード用のルールを明文化して永続記憶に書き込みます。
3. 投稿レビューのフローを先に決める
「AIが生成 → 必ず本人が読む → 修正してから公開」のフローを最初に固めておく。レビュー工程を飛ばすと、レベル1の自動投稿に滑り落ち、結果としてブランド毀損につながります。私たちが顧問先で導入する際は、Slackに草稿が届く→絵文字で承認→自動公開、という最小工程のレビューフローを設計するケースが多いです。
4. エンゲージメントデータの定期的なフィードバック
永続記憶は一度書いて終わりではなく、月次でエンゲージメントの良かった投稿・悪かった投稿を追記し続けることで精度が上がります。これがHermes Agentが「育つAI」と呼ばれる所以であり、Claude Codeのような単発タスク特化型エージェントとの最大の違いです。
関連事例:同じ「準備の自動化」アプローチを取る他の運用
「準備の自動化」というレベル2運用は、@Saboo_Shubham_氏以外にも複数のユースケースで採用されています。社内で参考にできる関連記事を挙げておきます。
最後の記事はClaude Codeを使った別アプローチですが、「投稿そのものの自動化」と「準備の自動化」の違いを比較すると、各アプローチの向き不向きがより鮮明になります。

まとめ:個人ボイスSNS自動化を実装する前のチェックリスト
私たちの実務経験を踏まえ、@Saboo_Shubham_氏の事例から抽出した実装前チェックリストを置いて締めます。
- 「投稿の自動化」ではなく「準備の自動化」を目的に据える:完全自動はブランドリスクが高く、現時点では非推奨
- 過去投稿30本以上を文体サンプルとして永続記憶に投入する:少量だと癖を誤学習する
- 「書かないこと」のルールを永続記憶に明記する:書きたい話題より、書かない話題の方が再現性を上げる
- レビュー工程を必ず人間に残す:絵文字承認程度でよいので、公開ボタンは人間が押す設計にする
- 常駐型のローカルマシン(Mac mini等)を選ぶ:プライバシーを保ちつつ24時間運用と相性が良い
- エンゲージメント結果を毎月永続記憶に追記する:「育つAI」として運用し続けないと半年で劣化する
株式会社Fyveでは、こうしたAIエージェントによる業務自動化を月額の顧問契約として伴走支援しています。SNS発信に限らず、永続記憶を持つエージェントを社内業務に組み込む際の設計・運用ルール策定までを継続的に支援する形です。
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