Hermes AgentでSupabase CRMを24時間常駐|Derek Cheungの事例
「ChatGPT Plus(月額20ドル)より安いコストで、24時間365日働くCRMアシスタントが手に入る」— 海外の開発者 Derek Cheung が2026年4月8日に公開した事例は、Hermes Agent と Supabase を組み合わせた常駐型AI秘書として注目を集めました。本記事では、株式会社Fyveの法人視点で、この事例の中身・仕組み・中小企業のCRM運用への応用可能性を分解します。「人を雇うほどではないが、人がやると追いつかない事務」をどこまでAIに任せられるか、という問いに対する一つの答えがここにあります。
事例の概要 — Supabase CRM × 24時間常駐アシスタント
Derek Cheung は、自身が構築した Supabase ベースの CRM(顧客管理データベース)に対して、Hermes Agent を24時間365日張り付ける形で運用しています。営業時間外も含めて、リードの登録・更新・棚卸し・通知を AI が自律的に行う構成です。
誰 | Derek Cheung(海外の開発者・公開事例) |
いつ | 2026年4月8日 公開 |
ツール | Hermes Agent(Nous Research 製・オープンソース)+ Supabase(オープンソースのバックエンドサービス) |
稼働形態 | 24時間365日常駐 |
月額コスト | ChatGPT Plus(20ドル)未満 |
注目すべきは「常駐」という運用形態です。人間の営業担当者は当然眠りますし、SaaS型のCRMは「人間が画面を開いたとき」にしか作業が進みません。Derek Cheung の構成では、Hermes Agent がバックグラウンドで動き続け、メールやフォーム入力、外部APIから入ってくる情報を、人間がログインする前に整理し終えています。
もう一つの注目点はコスト構造です。ChatGPT Plus は月額20ドル(執筆時点の為替で約3,000円強)ですが、Derek Cheung はそれよりも安い金額でこの常駐運用を成立させています。これは「AI秘書を持つ」という発想に、価格的な現実味を与える数字です。
仕組みの解説 — Hermes Agent と Supabase の役割分担
この事例を理解するには、Hermes Agent と Supabase の役割分担を抑える必要があります。両者は独立したオープンソース製品ですが、組み合わせると「データベースを持つ自律エージェント」として機能します。
Supabase 側の役割 — 顧客データの正本
Supabase は PostgreSQL をベースにしたオープンソースのバックエンドサービスで、データベース・認証・ストレージ・リアルタイム通知を一式で提供します。Derek Cheung の構成では、Supabase が以下を担っています。
- 顧客テーブル: 名前・連絡先・取引履歴・ステータスを保持する正本データ
- イベントテーブル: メール送受信・電話・MTG・ステータス変更などの履歴
- API レイヤー: Hermes Agent から SQL で読み書きするための入口
- リアルタイム通知: テーブルが更新されたタイミングをエージェントに通知
Supabase の強みは「セルフホストも可能なクラウドDB」である点です。クラウドの無料枠から始められ、データ量が増えても月数千円〜数万円の範囲で運用できます。データを自分の手元(または信頼できるクラウド)に置けるため、機密性が問われる顧客情報にも適しています。
Hermes Agent 側の役割 — 24時間動く実行体
Hermes Agent は、Nous Research が2026年2月に公開したオープンソースの自律エージェントランタイムです。3層メモリ・スキル自己改善ループ・cron スケジューラ・サブエージェントといった機能を内蔵しており、「常駐する実行体」として動かす設計が前提になっています。
Derek Cheung の構成では、Hermes Agent が以下を担っています。
- 定期実行: 内蔵 cron で「平日朝9時にリード一覧を要約」「毎時、未対応の問い合わせを棚卸し」といった定型ジョブを回す
- イベント駆動の応答: Supabase のリアルタイム通知を受けて、新規リード追加時に自動で初期ステータスを設定・タグ付け
- 外部連携: メールやチャットツールと統合し、CRM の更新内容を関係者に通知
- 記憶の蓄積: 過去のやり取りや判断ルールを永続記憶に保存し、似たケースで同じ判断を再現
この役割分担を一言でまとめると、Supabase が「事実の保管庫」、Hermes Agent が「事実を動かす実行体」です。両者の境界が明確なので、CRMの中身を変えたいときは Supabase 側のスキーマだけを触り、AIの振る舞いを変えたいときは Hermes Agent 側のスキルだけを触る、という分業ができます。

私たちの解釈 — なぜ ChatGPT Plus 未満で成立するのか
株式会社Fyveとしてこの事例を見ると、最も価値があるのは「コスト構造を破壊している」点です。多くの中小企業は、AI活用の検討初期に「ChatGPT Plus を全社で配ればいい」という発想で止まります。一人あたり月3,000円の固定費で、全員に対話型AIを配るアプローチです。
しかし、対話型AIは「人間が開いて使ったときだけ」価値を出します。CRMのように常に動いていてほしい業務とは相性が悪いのです。人が画面を見ていない夜中に問い合わせが入っても、AIが拾い上げて整理しておくことはできません。
Derek Cheung の事例が示すのは、「常駐型AI」が ChatGPT Plus 1人分のコスト未満で組めるということです。試算してみると、Hermes Agent はオープンソースのため利用料はかからず、必要なのは推論APIの従量課金(OpenRouter や Nous Portal 等)と、Supabase のクラウド利用料、エージェントを動かす常駐マシン(VPS または Mac mini 等)です。これらを合算しても、軽量モデル中心の運用なら月3,000円を切るレンジに収まります。

もう一つの解釈は「OSSの組み合わせが選択肢として現実になった」ことです。Hermes Agent も Supabase も、登場時点では「開発者が個人で楽しむもの」と見られていました。しかし2026年に入り、両者ともプロダクションレディな品質に達しています。事業として依存する判断が、技術的・経済的に正当化できる水準になりました。Derek Cheung の常駐運用は、その合流点に立つ実例といえます。
実務に落とし込む — 中小企業のCRM運用への応用
では、この構成を中小企業のCRM運用に応用するとどうなるか。私たちがクライアントから相談を受けやすい「人手不足でCRMが回らない」業種を念頭に、応用シナリオを3つに分解します。
1. 訪問看護・介護事業所のリード管理
訪問看護や介護事業所では、ケアマネジャー・病院・家族からの問い合わせが平日昼間に集中し、現場スタッフが対応できないケースが頻発します。Supabase に問い合わせフォームを連動させ、Hermes Agent が「問い合わせ内容の要約」「優先度の判定」「翌朝の朝礼用サマリ作成」を夜のうちに回しておけば、朝の管理者の判断が確実に速くなります。
「人を増やす」「電話対応専任を雇う」より、まず夜間と早朝の事務を AI に肩代わりさせるのが現実的です。月3,000円のコストで、人件費換算で月10万円以上の効果が出る試算が成り立つケースが多いです。
2. 建設会社・地場工務店の問い合わせ追跡
建設業では、見積もり依頼から成約までのリードタイムが長く、途中で連絡が途切れることが珍しくありません。Supabase に案件状況を入れ、Hermes Agent が「30日連絡がない案件」「見積もり提示済みで返答待ちの案件」を毎週月曜にレポートする運用にすれば、機会損失を構造的に減らせます。
業界統計を見ても、中小企業庁の調査では建設業の人手不足感は他業種と比較して高い水準にあります。営業の追客作業を AI に任せ、人間は提案と現地対応に集中するという役割分担が、人手不足下でこそ意味を持ちます。
3. クリニック・歯科の予約とリコール管理
クリニックや歯科では、初診予約・キャンセル・定期検診のリコールが日々発生します。Supabase に予約と患者属性を持たせ、Hermes Agent が「リコール対象の患者リスト作成」「予約変更時の代替枠提案」「未来院患者へのフォロー文面ドラフト」を担当する構成が組めます。
従来は予約管理SaaSに月数万円を払って機能を借りていましたが、Supabase + Hermes Agent なら同等のことを大幅に安いコストで自社内に置けます。長期的にはデータが自社の資産として残るのも利点です。

導入ステップの目安
実際にこの構成を試す場合、私たちが推奨する手順は4ステップです。いきなりフル機能を組まず、小さく回して育てる発想が重要です。
- Step 1(1〜2週間): Supabase に顧客テーブルを1つ作り、既存のExcel/スプレッドシートからデータを移行。まずは「データを集約する」だけを実現
- Step 2(2〜4週間): Hermes Agent をVPSまたは社内Mac mini上に常駐起動。最初は「毎朝9時にデータをサマライズしてSlackに投げる」だけのスキルから始める
- Step 3(1〜2ヶ月): 業務ルールを永続記憶に書き出し、判定・タグ付け・優先度設定をAIに任せる範囲を広げる
- Step 4(3ヶ月〜): 外部メール・フォーム・チャットとのイベント駆動連携を追加。24時間動く秘書として完成形に近づける
関連事例 — 永続記憶を活かした他の常駐運用
Derek Cheung の事例は「CRM」が題材でしたが、Hermes Agent の常駐運用は他のドメインでも同じ価値を発揮します。同じ設計思想に立った海外事例を3つ紹介します。
Day 297 自動化マイルストーン(@NathanWilbanks_)
2026年4月25日に @NathanWilbanks_ が公開した記録では、Hermes Agent を297日間連続稼働させ、累計900,000秒以上の計算時間で10万ドル相当の業務自動化を達成しています。1台のエージェントが1年近く動き続け、複合的なクライアントワークを処理し続けた長期運用の到達点です。Derek Cheung の「24時間運用」の延長線上にある事例といえます。
Slack inbox 要約(Anthony Maio)
2026年3月30日に Anthony Maio が公開したケースでは、自然言語で「平日9amにinbox要約してSlackに投げて」と指示するだけで、Hermes Agent が cron 設定とSlack連携を自律的に組み立てています。CRMほど大規模ではないものの、「常駐型AIが定型業務を肩代わりする」という発想は完全に同じです。
iMessage 常駐秘書(@trevorgordon981)
@trevorgordon981 の事例では、Mac Studio に Hermes Agent を常駐させ、Apple Watch・iPhone・iPad を横断する iMessage 経由のアシスタントを構築しています。CRMの代わりに「個人の生活データ」がデータベース側に来ているだけで、構造は Derek Cheung と相似形です。
これら3つの事例に共通するのは、「人が画面を開いたとき」ではなく「データが動いたとき」「時間が来たとき」にAIが自律的に動く設計です。Hermes Agent の真価は、この常駐運用の中で見えてきます。
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まとめ
- Derek Cheung(2026年4月8日公開)の事例は、Supabase ベースのCRMを Hermes Agent で24時間常駐させ、ChatGPT Plus 未満のコストで運用している一次情報
- 役割分担は明確で、Supabase が「事実の保管庫」、Hermes Agent が「事実を動かす実行体」
- 常駐型AIは「画面を開いたときだけ動く対話型AI」とコスト構造が決定的に異なり、夜間・早朝・週末の事務まで肩代わりできる
- 中小企業への応用シナリオは、訪問看護のリード管理・建設業の追客・クリニックのリコール管理など、人手不足が深刻な業種ほど価値が出やすい
- 導入は4ステップで小さく始めるのが現実的。Supabase 移行 → Hermes Agent 常駐 → 業務ルール書き出し → イベント駆動連携の順
- 関連事例(@NathanWilbanks_ Day 297・Anthony Maio Slack inbox・@trevorgordon981 iMessage)も同じ構造で、ドメインを問わず常駐運用の価値が確認できる
出典:
- Derek Cheung 公開事例(2026-04-08)
- Hermes Agent — User Stories & Use Cases(Nous Research 公式)
- awesome-hermes-usecases(一次ソース付き事例集)
- Supabase 公式サイト
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