「ホームページの保守費用として毎月1万円払っているが、何をしてもらっているのか分からない」「そもそも保守って必要なのか」——制作会社から保守契約を提案されたとき、多くの経営者がこの疑問を抱えます。
結論から言うと、ホームページの保守費用は「含まれる業務の範囲」で決まります。相場は月額5,000円前後から50,000円超まで幅がありますが、金額だけを比べても意味がありません。その金額で何をどこまでやってくれるのかを見なければ、高いか安いかは判断できないからです。
株式会社Fyveは、中小企業向けのホームページ制作と、納品後の保守管理プラン(月額15,000円・税別)を提供しています。本記事では、保守プランと契約書を実際に設計している立場から、保守で何をするのか、費用の内訳、自社プランの中身、そして自分でできる範囲までを開示します。
ホームページの保守とは何をする仕事か
費用の話の前に、まず「保守」の中身をはっきりさせます。ここが曖昧なまま金額だけを比較すると、契約後に「思っていた内容と違う」というすれ違いがほぼ確実に起きます。
保守の中身は「守り」の業務
保守の本質は、サイトを「作ったときの状態で、安全に動かし続ける」ことです。私たちの保守契約書では、基本業務を次の7つに定義しています。
- 不具合・障害の修正対応:表示崩れ、フォームが届かない、エラーが出るといった問題の修正
- 脆弱性の監視と定期アップデート:CMSや依存パッケージの脆弱性を監視し、四半期に1回まとめて更新
- 緊急セキュリティパッチの即応:危険度の高い脆弱性(CVE)が公表されたときの即時アップデート
- ソースコードの管理・バックアップ:Gitで変更履歴を管理し、いつでも直前の状態に戻せるようにしておく
- SSL証明書・ドメインの更新管理:期限切れによる「保護されていない通信」表示や、サイト消失を防ぐ
- サイトダウン時の一次対応:通知から24時間以内に状況把握・復旧作業に着手
- 軽微な修正作業:文言修正・画像差し替えなど、月合計60分以内の作業
逆に言えば、この7つがどこまで契約に入っているかが、保守費用を比較するときの最初のチェックポイントになります。

「保守」と「運用」は別物
混同されやすいのですが、コンテンツの更新代行・アクセス解析レポート・SEO施策・Googleビジネスプロフィールの投稿代行は「保守」ではなく「運用」の仕事です。
保守は現状を守る仕事、運用は成果を伸ばす仕事。この2つを1つの月額にまとめて「保守費用」と呼ぶ会社もあれば、完全に分けている会社もあります。見積もり金額の差の多くは、実はこの線引きの違いから生まれています。
ホームページ保守費用の相場と内訳
月額5,000円から50,000円超まで幅がある理由
私がこれまで見てきた範囲では、保守費用の価格帯と中身はおおむね次のように対応していることが多いです。
- 月額5,000円前後:ドメイン・サーバー・SSL証明書の維持管理が中心。修正作業はほぼ含まれない
- 月額10,000〜20,000円:上記に加えて、不具合修正・バックアップ・軽微な修正枠まで含む。守りが一通り揃う価格帯
- 月額30,000〜50,000円:更新代行や月次レポートなど、運用系の業務が乗ってくる
- 月額50,000円超:SEO・広告運用・コンサルティングなど、集客支援まで含む
つまり「保守費用の相場はいくらか」という問いは、「どこまで任せたいか」を決めないと答えが出ません。守りだけでよければ1〜2万円台、運用や集客まで任せたいなら3万円以上、というのが大まかな目安です。
費用を決めている3つの変数
提供する側の目線で言うと、保守の月額は次の3つで決まります。
- 業務の範囲:守りだけか、運用まで含むか。含まれる項目が増えるほど高くなる
- 応答スピード:障害時に「24時間以内に着手」なのか「営業日ベースで対応」なのか。速さの保証はコストに直結する
- 毎月確実に人が動く量:月次レポートや定例ミーティングなど、何もなくても発生する作業が多いほど高くなる
見積もりを受け取ったら、この3つの観点で「月額の根拠」を質問してみてください。まともな会社なら明確に答えられるはずです。
なお、保守費用は制作費用とセットで考えるものです。制作時の費用相場はこちらの記事で解説しています。
実例公開:月額15,000円の保守プランの中身
相場の話だけでは抽象的なので、私たちが実際に提供している保守プランをそのまま開示します。ベースは月額15,000円(税別)です。
設計思想は「能動的に動かない」
このプランの設計思想はシンプルです。「こちらからは能動的に動かない。何かあったときは確実に直し、守るべきもの(セキュリティ・バックアップ)は黙って守る」。
毎月の定例レポートや定期ミーティングを基本料金に入れない分、月額を抑えています。一方で、事故が起きたときに致命傷になる部分——脆弱性対応・バックアップ・障害の一次対応——は、すべて基本料金に含めています。先ほど挙げた7つの基本業務が、そのままこのプランの中身です。
あえて含めていないもの
次の業務は、基本料金にあえて含めていません。
- 能動的な監視レポートの提供
- アクセス解析(GA4)の月次レポート
- コンテンツの執筆・更新代行(軽微修正枠を超えるもの)
- Googleビジネスプロフィールの投稿・口コミ対応
- SEO施策の企画・実施
- 営業時間外・休日の緊急対応
理由は、これらが「必要な会社と不要な会社がはっきり分かれる」業務だからです。全員の月額に乗せると、使わない会社が使う会社のコストを負担する構造になります。必要な会社だけがオプションで追加するほうが、全体として公平で安くなります。
オプションとスポット対応の料金
基本料金に含めていない業務は、次の料金で追加できるようにしています(いずれも税別)。
- GA4月次レポート:+5,000円/月
- Googleマップ(ビジネスプロフィール)運用:+10,000〜30,000円/月
- 営業時間外の緊急対応:+10,000円/月
- 修正対応枠の拡張:+5,000円/時間
- ページの新規追加:50,000円〜/ページ(スポット対応)
- 大幅な改修・リニューアル:都度見積もり

なお、月額制のホームページ制作サービスでは、こうした保守が最初から月額に組み込まれていることもあります。月額制の仕組みと注意点はこちらの記事にまとめています。
自分でできる保守・業者に任せるべき保守
保守費用を抑えたいなら、全部を外注するか自分でやるかの二択ではなく、「自分でできる部分」と「任せるべき部分」を切り分けるのが現実的です。
自分でできる範囲
- ドメイン・サーバー・SSLの契約管理:どこで契約していて、いつ期限が切れるかを把握し、自動更新と支払い方法を設定しておく
- コンテンツの更新:お知らせやブログの追加は、CMSが入っていれば自分で更新できる
- 月1回の動作チェック:主要ページの表示確認と、問い合わせフォームのテスト送信
なお、WixやJimdoのようなクラウド型サービスは、サーバーやシステム側の保守がサービス料金に含まれていることが多いです(仕様は変更されうるため、契約中のプランの公式情報で確認してください)。この場合、自分でやる保守はさらに少なくなります。
業者に任せるべき範囲
- 脆弱性対応・アップデート:更新の要否判断に専門知識が要るうえ、更新作業自体がサイトを壊すことがある
- バックアップと復旧:取っているだけでは不十分で、「確実に戻せること」までが仕事
- 障害の切り分けと復旧:サーバーなのかプログラムなのか外部サービスなのか、原因特定には経験が要る
判断基準は一つ、「壊れたときに自分で元に戻せるか」です。戻せない作業を自分で触るのは、費用の節約ではなくリスクの引き受けです。

保守契約を結ぶ前に確認すべき5つのポイント
保守契約書を設計している立場から、トラブルになりやすいポイントを5つ挙げます。契約前にここだけは確認してください。
- 軽微修正枠の単位:「月1件まで」の件数制は、1件の範囲をめぐって揉めやすい。「月合計60分まで」のような時間制のほうが明朗です
- 契約期間と解約通知:1年契約・自動更新で、解約は60日前までに通知、といった構成が一般的です。私たちの契約も同じ構成です。通知期限を過ぎると1年延長されるため、更新月は必ず控えておく
- 契約終了時の引き渡し:ソースコード・管理アカウント・保守ドキュメントを引き渡す条項があるか。明記がないと、解約したくてもサイトを持ち出せない状態になりえます
- 範囲外作業の料金:時間外対応やページ追加など、枠を超えたときの単価が明文化されているか
- 成果保証がないことの理解:アクセス数や売上の保証は、誠実な会社ほど契約書で明確に否定します。保守契約に集客の期待を乗せない
そもそも制作会社選びの段階で、保守の質はほぼ決まります。会社選びのチェックポイントはこちらの記事で解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 保守契約なしで放置するとどうなりますか?
A. すぐに壊れるわけではありません。ただし、脆弱性が放置され、SSL証明書やドメインの期限切れに誰も気づかず、障害が起きたときに頼る先がない状態になります。特にWordPressなどのCMSを使っているサイトは、アップデートの放置が不正アクセスの入口になりやすく、リスクは時間とともに大きくなります。
Q. 月額1万円台と5万円の保守は何が違うのですか?
A. 差の中心は、更新代行・レポート・SEOといった運用系業務の有無です。守り(セキュリティ・バックアップ・障害対応)だけであれば、1〜2万円台で一通り揃うことが多いです。5万円の見積もりを受けたら、内訳のどこまでが保守で、どこからが運用なのかを確認してください。
Q. 保守契約を結ばず、壊れたときだけスポットで頼めますか?
A. 対応している会社もあります。私たちも都度見積もりで対応しますが、契約外のサイトは構成の調査から始めるため、同じ作業でも割高になりやすい点は理解しておいてください。また、バックアップを取っていない状態で障害が起きると、そもそも復旧できないことがあります。
Q. 制作会社を変えるとき、保守はどうなりますか?
A. ソースコード・ドメイン・サーバーの管理アカウントが揃って引き渡されれば、別の会社で保守を引き継げます。逆にこれらが揃わないと、実質的に作り直しになることもあります。現在の契約の「契約終了時の措置」にあたる条項を確認するところから始めてください。
Q. 保守費用を安くする方法はありますか?
A. 範囲を削れば下がりますが、削る順番が重要です。減らすならレポートや更新代行などの運用系からで、セキュリティ・バックアップ・障害対応を削るのは本末転倒です。コンテンツ更新を自社で行える体制を作るのが、リスクを増やさずに費用を下げる一番現実的な方法です。
まとめ|保守費用は金額ではなく「範囲」で比べる
最後に、本記事の要点をチェックリストとして整理します。
- 保守の本体は「守り」の7業務(不具合修正・脆弱性対応・バックアップ・SSL/ドメイン管理・障害一次対応・軽微修正)
- 相場は月額5,000円〜50,000円超。金額差の正体は、運用系業務をどこまで含むかの違い
- 見積もりは「業務範囲・応答スピード・毎月人が動く量」の3変数で根拠を確認する
- コンテンツ更新や契約管理は自分でできる。脆弱性対応・バックアップ・障害復旧は任せる
- 契約前に、修正枠の単位・解約通知期間・契約終了時の引き渡し条項を必ず確認する
保守費用は「サイトが動き続けるための保険料」です。金額の安さではなく、いざというときに何をしてくれるのかで選んでください。

