Claude Codeを2人、3人と同時に走らせる
従業員を雇うと、採用費・教育期間・毎月の人件費がかかります。 ところがClaude Codeでは、「もう1人の作業者」を数秒で立ち上げることができます。 1人が記事を書いている間に、もう1人が別案件の資料を整理し、さらにもう1人が2人の成果物をチェックする。 そんな「小さなチーム」を、自分1人の会社の中に必要なときだけ編成できるのです。
これを実現するのが、この記事で解説する2つの機能です。
注意: Agent Teamsは実験的機能(デフォルト無効)、Agent Viewはリサーチプレビュー段階の機能です。 どちらもバージョンアップのたびに挙動が変わる可能性があります。 この記事は執筆時点の公式ドキュメントに基づいていますが、 導入時は最新のドキュメントもあわせて確認してください。
Claude Codeで作業を並列化する方法は、実は1つではありません。 すでに解説したSubagentsを含めて3つのアプローチがあり、 それぞれ得意な場面が異なります。
どれを選ぶかは、次の3つの問いで決まります。
1人経営者向けの目安: 「調べ物を裏でやらせたい」ならSubagents、 「別々の案件を同時に進めて、手が空いたら見に行きたい」ならAgent View、 「1つの大きな仕事を分担させて、議論もさせたい」ならAgent Teams。 迷ったらこの順に検討してください。後のものほど強力ですが、トークン消費と管理の手間も増えます。
Agent Teamsでは、あなたが操作しているメインのセッションがチームリーダーになり、 別のClaude Codeインスタンスをチームメイトとして立ち上げます。 チームは次の4つの要素で構成されます。
Subagentsとの最大の違いは、チームメイトが完全に独立したセッションであることです。 リーダーを介さずにあなたが特定のチームメイトへ直接話しかけることもできますし、 チームメイト同士が名前で呼び合ってメッセージを交わすこともできます。
Agent Teamsはデフォルトで無効です。settings.jsonまたは環境変数でCLAUDE_CODE_EXPERIMENTAL_AGENT_TEAMSを1に設定すると使えるようになります。
// settings.json
{
"env": {
"CLAUDE_CODE_EXPERIMENTAL_AGENT_TEAMS": "1"
}
}有効化したら、やりたい仕事と欲しいチームメイトを自然な言葉で伝えるだけです。 たとえばClaude Codeにこう頼んでください。
新サービスの料金ページの構成を検討したいです。
3人のチームメイトを立ち上げて、別々の角度から検討してください。
1人は顧客目線の分かりやすさ、1人は競合の価格設定の調査、
1人は反対役として「この料金では売れない理由」の指摘を担当してください。これだけで、Claudeが共有タスクリストに仕事を並べ、3人のチームメイトを立ち上げ、 それぞれに検討させたうえで、最後に結果を統合して報告してくれます。 3つの役割がお互いを待たずに独立して動けるため、チーム編成が効果を発揮する典型的なパターンです。
なお、チームを頼んだつもりでもClaudeがSubagentsで済ませてしまうことがあります。 画面下のエージェントパネルにはどちらも同じように表示されるため、 確実にチームを組ませたいときは「エージェントチームで」と明示的に指定し直してください。
チームメイトは画面下部のエージェントパネルに一覧表示されます。 操作はシンプルで、上下の矢印キーでチームメイトを選び、 Enterでそのチームメイトの会話画面を開いて直接メッセージを送れます。 Escapeで作業を中断させることもできます。
「方向性がずれてきたな」と思ったチームメイトにだけ個別に指示を出し、 他のメンバーはそのまま走らせておく。 従業員に声をかけて回る現場のマネジメントと同じことが、1つのターミナルの中でできます。
表示方法は2種類から選べます。デフォルトは全員が1つのターミナル内で動く「in-process」モードで、 特別な準備は不要です。tmuxまたはiTerm2を使っている場合は、 チームメイトごとに画面を分割して全員の作業を同時に眺められる「split panes」モードも選べます。 settings.jsonのteammateModeで切り替えます。
// settings.json — 分割表示を自動判定にする場合
{
"teammateMode": "auto"
}チームの仕事は共有タスクリストで管理されます。 各タスクは「未着手・作業中・完了」の3状態を持ち、タスク間に依存関係も設定できます。 前提となるタスクが終わるまで、後続タスクは誰も取れない仕組みです。 リーダーが明示的に割り振ることも、手の空いたチームメイトが次のタスクを自分で取ることもできます。
重要な作業では、チームメイトに計画を提出させ、リーダーの承認を得てから実行させることもできます。 Claude Codeにこう頼んでください。
顧客データの整理を担当するチームメイトを1人立ち上げてください。
実際にファイルを変更する前に必ず計画を提出させて、
リーダーが承認してから作業に移るようにしてください。
バックアップ手順が含まれていない計画は却下してください。承認までの間、チームメイトは読み取り専用の計画モードで動くため、勝手にファイルを変更できません。 却下された場合はフィードバックを受けて計画を修正し、再提出します。 最後の一文のように承認基準をリーダーに与えておくと、 リーダーの判断そのものをコントロールできます。
なお、チームメイトはリーダーの会話履歴を引き継ぎません(CLAUDE.mdやMCP、Skillsは通常どおり読み込みます)。 そのため立ち上げ時の指示には、対象ファイルの場所・前提条件・期待する成果物を具体的に含めてください。 従業員に仕事を頼むときの「指示書」と同じ感覚です。
公式ドキュメントが挙げる得意分野は「調査とレビュー」「独立した機能の分担」「仮説の競わせ」です。 これを1人で回す会社の業務に翻訳すると、次のような使い方になります。
コンテンツ発信を続けている会社なら、執筆と品質チェックを同時に走らせられます。 Claude Codeにこう頼んでください。
記事執筆チームを立ち上げてください。
ライターAは導入事例の記事、ライターBはよくある質問の記事を担当。
3人目は監査役として、2本の原稿が完成したら
事実関係の確認・トーンの統一・誤字脱字の観点でチェックし、
修正点を各ライターに直接伝えて反映させてください。ポイントは、監査役がライターに直接指摘を送り、修正まで完結するところです。 Subagentsでは「報告を受けて親が再指示する」という往復が必要でしたが、 チームならメンバー同士のやりとりで品質管理のループが自走します。 書き手と別のコンテキストを持つ監査役は、書き手自身の思い込みに引きずられないため、 セルフチェックより指摘の精度が上がります。
クライアントワークを抱えている場合、案件ごとにチームメイトを割り当てられます。
3人のチームメイトを立ち上げてください。
1人目はA社サイトの問い合わせフォーム改修、
2人目はB社向け提案資料のドラフト作成、
3人目はC社サイトの表示速度改善の調査を担当。
それぞれ担当以外のファイルには触れないでください。
全員の作業が終わったら、結果をまとめて報告してください。最後から2文目が重要です。Agent Teamsはチームメイトを自動でファイル分離しないため、誰がどのファイルを触るかを最初に区切っておくのが鉄則です。 2人が同じファイルを編集すると、後から書いた方が先の変更を上書きしてしまいます。
「問い合わせメールが届かないことがある」のような原因不明のトラブルは、 1人で調べると最初に見つけた「それらしい説明」に飛びついて調査を止めてしまいがちです。 公式ドキュメントが推奨するのは、チームメイトにあえて対立する役割を与える使い方です。
問い合わせフォームの通知メールが届かないことがある原因を調べたいです。
3人のチームメイトにそれぞれ別の仮説を立てさせて調査してください。
科学の議論のように、お互いの仮説の穴を指摘し合い、
反論に耐えて残った説を最有力の原因として報告してください。独立した調査役が互いの説を潰し合う構造にすると、 生き残った仮説が本当の原因である可能性が大きく上がります。 これはメンバー同士が直接議論できるAgent Teamsならではの使い方で、 報告が一方通行のSubagentsでは再現できません。
Agent Viewは、バックグラウンドで走っている複数のClaude Codeセッションを 1つの画面でまとめて管理する機能です。ターミナルで次のコマンドを実行すると開きます。
claude agents画面には、すべてのセッションが状態ごとにグループ分けされて並びます。 それぞれの行に「今なにをしているか」の1行サマリーが表示され、 作業中は15秒ごとを上限に自動更新されます。主な状態は次のとおりです。
日々の運用イメージは「朝、タスクを3つ放り込んで自分の仕事に戻る。 昼にAgent Viewを開いて、入力待ちの1件にだけ答える。夕方に成果物を回収する」。 部下に仕事を配って、報告と相談だけ受ける管理職の動き方そのものです。
新しいバックグラウンドセッションの開始方法は3つあります。
claude --bgにプロンプトを渡して起動します/bgを実行すると、 そのセッションごとバックグラウンドに送って別の作業に移れます# ターミナルから直接バックグラウンド起動する例
claude --bg "公開済みブログ記事の内部リンク切れを調査して、結果をreport.mdにまとめて"
# 名前を付けて起動すると、あとで見分けやすい
claude --bg --name "invoice-check" "今月の請求データと入金記録を突き合わせて"気になるセッションはスペースキーで「のぞき見」パネルを開けば、 質問の内容や作業結果をその場で確認して短い返事を返せます。 じっくり関わりたいときはEnterでそのセッションに完全に入り込み(アタッチ)、 通常の対話と同じように操作できます。 左矢印キーで離脱(デタッチ)しても、セッションは止まらずに走り続けます。
Agent Viewには、複数セッションの同時進行で起こりがちな事故を防ぐ仕組みが組み込まれています。
.claude/worktrees/配下のgit worktree)へ移動します。 複数のセッションが同じプロジェクトで作業しても、互いの変更がぶつかりませんAgent TeamsとAgent Viewの関係: 2つは競合する機能ではありません。 Agent Teamsは「チームを組ませる仕組み」、Agent Viewは「走っているセッションを見る画面」です。 互いに連携しない独立タスクの束はAgent Viewに放り込み、 連携が必要な大きな仕事はAgent Teamsで組む、という使い分けが基本です。
並列化は強力ですが、無料ではありません。導入前に知っておくべき現実的な制約をまとめます。
チームメイトもバックグラウンドセッションも、1人ひとりが独立したClaude Codeインスタンスです。 トークン消費は人数分に増え、10並列なら利用枠の消費速度は約10倍になります。 「調査・レビュー・新機能の分担」のような並列の価値が明確な仕事には見合いますが、 1本道の定型作業は1セッション(またはSubagents)の方が経済的です。
公式ドキュメントの推奨は、まず3〜5人のチームから始めることです。 人数を増やすほど調整の手間も増え、ある点を超えると人数に見合った速度向上は得られなくなります。 「集中した3人は、散漫な5人に勝る」——これは人間の組織と同じです。 タスクの粒度は「関数1つ・テストファイル1つ・レビュー1件」のような、 成果物が明確な自己完結の単位に切るのが適切です。
チームを長時間ノーチェックで走らせるほど、ずれた方向への作業が積み上がるリスクが増えます。 ときどき進捗を見て、うまくいっていないアプローチは早めに軌道修正してください。 また、リーダーが待ちきれずに自分で実装を始めてしまうことがあります。 その場合は「チームメイトの完了を待ってから進めてください」と一言伝えれば戻ります。
/resumeでセッションを再開しても、 in-processモードのチームメイトは復元されません。必要なら新しく立ち上げ直しますはじめの一歩: 最初のチームは「コードや記事を書かせる」のではなく、 「調べさせる・レビューさせる」仕事から始めてください。 成果物の衝突が起きない調査系タスクなら、並列化の価値だけを安全に体験できます。 慣れてきたら、担当ファイルを分けた実作業の分担へ進むのがおすすめです。
Agent TeamsとAgent Viewは、Claude Codeを「1人の優秀なアシスタント」から 「必要なときだけ編成できる小さなチーム」へ拡張する機能です。 報告だけ受け取ればよい脇道タスクはSubagents、 独立した案件の同時進行はAgent View、議論と分担が必要な大きな仕事はAgent Teams。 この住み分けを押さえたうえで、まずは調査・レビューの3人チームから試してみてください。 雇用も引き継ぎもなしに「チームで働く生産性」を手に入れられることが、 1人で会社を回す働き方の景色を変えていくはずです。