士業のClaude Code活用|税理士・行政書士の実務術
「記帳チェックと書類作成に時間を取られて、本来の相談対応に手が回らない」——税理士・行政書士の事務所では、誰もがこの悩みを抱えています。
結論から言うと、士業の業務でClaude Codeが活きるのは「定型的で量が多い書類・調査・記録の下ごしらえ」です。専門判断そのものを任せるのではなく、その手前の作業をまるごと肩代わりさせる使い方が現実的です。
株式会社Fyveは、AI業務効率化の受託開発を行う会社です。本記事では、税理士・行政書士の具体的な業務シーンに沿って、どこまでをClaude Codeに任せ、守秘義務と専門判断のどこに線を引くべきかを、私の実務目線で整理します。

そもそもClaude Codeとは|士業との相性
Claude Codeとは、自然言語の指示でファイルの読み書きやコマンド実行、複数の書類をまたいだ作業までこなす「自律型のAIエージェント」です。もともとはプログラマー向けのツールですが、やっていることは「指示に従ってパソコン内の資料を読み、加工し、書類を作る」こと。これは士業の事務作業そのものと重なります。
公式ドキュメントでも、端末・エディタ・デスクトップ・ブラウザ上で動き、自然言語でファイル操作や複数ファイル横断の作業ができると説明されています(出典: Claude Code公式ドキュメント)。
税理士・行政書士の業務は「定型 × 大量 × 書類」
士業の仕事は、専門判断という頭脳労働と、その周辺にある膨大な手作業に分かれます。記帳の仕分け、試算表の確認、申請書の作成、議事録の整形、通達の論点整理——これらは判断の前段にある「下ごしらえ」です。
この下ごしらえこそ、Claude Codeが最も得意とする領域です。逆に言えば、最終的な税務判断や申告の承認、許認可の可否といった「資格者でなければできない判断」は、人間が握り続けるべき部分です。この線引きが、士業のAI活用の核心になります。
税理士の現場でClaude Codeに任せられること
X上では、実際にClaude Codeを業務に組み込んでいる税理士の発信が増えています。具体的にどんな作業を任せているのかを見ていきます。
記帳チェックと勘定科目の分類
過去の取引データを渡し、「この明細を勘定科目ごとに分類して、判断に迷うものだけ別リストにまとめて」と頼む使い方です。明細の大半は過去パターンから機械的に分類できるため、人が確認すべきは「迷うものだけ」に絞られます。
ある税理士は、源泉所得税の半年分の集計を給与台帳のCSVファイルから5分で完了させたと発信しています(出典: 税理士のX投稿)。CSVとは表計算ソフトのデータを書き出した汎用ファイル形式のことで、会計ソフトから簡単に出力できます。
月次試算表のコメント作成と異常検知
月次試算表に添える顧問先向けのコメント作成も、Claude Codeに下書きさせる定番です。「前月比で大きく動いた科目を抜き出し、考えられる要因をコメント案にして」と頼めば、担当者はその案を確認・修正するだけで済みます。
前年同月や前月との差異が大きい数字を自動で拾わせれば、見落としがちな異常値の一次チェックにもなります。担当者は浮いた時間を、顧問先との対話という本来の価値提供に回せます。
freee連携で会計データを扱う(MCP)
Claude CodeはMCPという仕組みで外部のサービスとつながります。MCP(Model Context Protocol)とは、AIが外部のデータやツールに安全に接続するための共通規格のことです。
会計分野では、freee公式の連携ツール「freee-mcp」が公開されており、会計・人事労務・請求書などのデータにAPI経由でアクセスできます(出典: freee-mcp(GitHub・公式))。これを使えば「未登録の取引を一覧にして」「この期の試算表を取得して」といった指示が、会計ソフトと直接やり取りする形で実現します。
AIに定型作業を任せて「AI社員」のように使う考え方は、こちらの記事で体系的に解説しています。

行政書士の現場でClaude Codeに任せられること
行政書士の業務でも、書類作成と顧客説明の下ごしらえにClaude Codeが使えます。ただし税理士の事例に比べると、行政書士に特化した実例はまだ少ないのが正直なところです。ここは現時点では発信者の見解(噂・推測レベル)も含まれる前提で読んでください。
申請書類のドラフトと最新書式の反映
法人設立の届出書類を例に、会社名や代表者名を入れてPDFで出力させ、最新の書式も反映させたという発信があります。一方で同じ発信者は「税理士としての知識があるからチェックできる。知識がない人がそのまま出すのは超リスク」とも指摘しています(出典: 行政書士寄りのX投稿)。
つまりドラフト生成は時短になりますが、出力された書類を有資格者が必ず検証する前提が崩れると、かえって危険だということです。
手続きフローの図解・顧客説明資料
「建設業許可申請の流れを、依頼者に見せる説明用のフロー図にして」といった、手続きの流れを図解する使い方も相性が良い領域です。複雑な申請手順を依頼者にわかりやすく伝える資料は、行政書士の付加価値そのもの。その下書きをAIに作らせ、専門家が監修する流れが現実的です。
調査と顧客対応も「下ごしらえ」を任せる
書類作成だけでなく、調べ物と顧客とのやり取りにもClaude Codeは使えます。
通達・論点の整理
長い通達や複数の資料を読み込ませ、「論点を箇条書きで整理して」「この事案に関係しそうな箇所だけ抜き出して」と頼むと、調査の出発点を素早く作れます。最終的な解釈と適用判断は人間が行いますが、論点の洗い出しという最初の負荷が大きく下がります。
面談の文字起こしから提案書まで
顧問先との面談を録音し、文字起こしから議事録の整形、フォローメールの下書きまで一気通貫でつなぐ使い方も広がっています。音声の文字起こしは、端末の中だけで動く無料のツール(ローカル文字起こし)を組み合わせれば、音声データを外部に出さずに処理できます。
個人発信のメディアでは、面談の文字起こしと見積もりPDFから提案書のWord文書を自動生成した事例も紹介されています(出典: 会計事務所のClaude Code活用事例(個人メディア・未検証))。ただしこうした「スタッフ数人で数十社」といった効果は第三者検証のない個人発信であり、自分の環境で小さく試して確かめる姿勢が前提です。

守秘義務と確認の線引き|士業が守るべき「線」
ここが士業のAI活用で最も重要な部分です。顧客の機微情報を扱う以上、便利だからと無防備に使えば守秘義務違反のリスクに直結します。実務家が共通して守っている「線」を整理します。
1. 法人プランを選んでモデル学習を回避する
まず大前提として、ビジネス向けの法人プラン(Team/Enterprise)を選び、入力したデータがAIの学習に使われない設定で使うことが推奨されています。個人向けの無料プランとは扱いが異なるため、事務所として導入するなら契約形態の確認が出発点です。
2. 生のクライアントデータを送らない
顧客名や個人情報をそのままAIに渡すのではなく、匿名化・集計値・差異の抽出だけに限定するのが基本です。「A社」「担当者X」のように置き換える、固有名詞を外して数値だけを扱う、といった一次フィルタを手元でかけてから処理します。
前述の文字起こしのように、機微な情報は端末の中(ローカル)で一次処理し、必要な部分だけを外部のAIに渡す設計が安全です。
3. CLAUDE.mdで守秘ルールを固定する
Claude CodeにはCLAUDE.mdという、常に読み込まれる指示書のファイルがあります。ここに「クライアント名は出力しない」「個人情報は伏せ字にする」といった守秘ルールをあらかじめ書いておけば、毎回の指示に頼らず事務所のルールを固定できます。
属人的な注意ではなく、仕組みとして守秘の前提を埋め込めるのが、士業にとって大きな利点です。
MCPやCLAUDE.mdなど、外部連携と設定の基礎はこちらの記事で詳しく解説しています。
4. 専門判断は必ず人間が最終確認する
集計・ドラフト・調査の下ごしらえはAIに任せ、税務判断・申告承認・許認可の可否といった専門判断は人間が握る。この役割分担が崩れてはいけません。
弁護士・税理士として知られる岡野タケシ氏も、AI活用について「情報の扱いは事務所ごとに異なるので各自で注意を」と慎重な姿勢を示しています(出典: 岡野タケシ氏のX投稿)。便利さと責任は別物であり、最終確認の責任者が誰かを曖昧にしないことが、信頼を守る最後の砦になります。
導入は「判断のいらない定型大量業務」から小さく始める
いきなり全業務に広げるのではなく、判断を伴わない定型で量の多い作業から始めるのが失敗しないコツです。記帳の一次分類、試算表コメントの下書き、議事録整形——どれも「間違っても人が直せばよい」範囲から入ります。
そして1つの業務につき1つの仕組みを作る形で進めると、設定が肥大化せず管理しやすくなります。最初の1業務で時短を実感してから、隣の業務へ少しずつ広げていく。これがスモールステップでの導入の型です。非エンジニアの士業の方でも、定型作業から入れば無理なく始められます。
まとめ|任せる作業と握る判断を分ける
士業のClaude Code活用は、「専門判断をAIに置き換える」話ではありません。判断の手前にある膨大な下ごしらえ——記帳チェック、試算表コメント、申請書ドラフト、文字起こし、論点整理——をAIに任せ、空いた時間を顧客対応と判断に集中させる使い方です。
その前提として、法人プランでの学習回避、生データを送らない設計、CLAUDE.mdでの守秘ルール固定、そして専門判断は必ず人が最終確認する、という4つの線引きを守ること。この線さえ守れば、Claude Codeは士業の事務所にとって心強い「もう一人の手」になります。
まずは判断のいらない1業務から、小さく試してみてください。
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「AIツールを導入したが、現場で使われない」を終わらせる。
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